まだ恋ではない夜
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冷蔵庫から缶チューハイを持ち出すのは、これで3本目だった。
プシュっとプルタブを引くと、パイはベランダの柵にもたれかかって夜空を眺める。夏の夜の空気は生ぬるかったが、時折吹き抜ける風だけは心地よかった。酒で火照った頬を撫で、長い髪をさらさらと揺らす。
眼下には、西の都の夜景が広がっていた。
大通りを走る車のライト。無数の窓から漏れる明かり。近くに見えるのは、パイが勤めるカプセルコーポレーションの丸い建物。その寮でパイは今暮らしている。
いつもと変わらない夏の夜だ。自分の人生から3年間をともにした人がいなくなったところで、世界は何ひとつ変わらない。そのことが、今夜はひどく腹立たしく感じられた。
「……何よ」
誰にともなく吐き捨て、パイは缶をぐいっとあおった。
甘いアルコールが喉を流れ落ちていく。おいしいとも思わないが、飲んでいる間だけは胸の奥に感じる痛みをごまかせる気がした。
『今度、両親が田舎から来るんだけど、紹介したいんだ』
いつもと変わらない静かな声で、でもどこか思い詰めたような、緊張したような雰囲気で彼はそういった。
付き合って3年。そろそろ結婚という言葉が2人の間に出てきてもおかしくない頃だった。パイも、なんとなくそんな気配を感じていた。
だから嬉しかった。
もちろん、と即座に答えた。何を着ていこう。手土産は何がいいだろう。彼の両親はどんな人だろう……前日までさんざん悩み抜いて、当日は緊張と高揚を感じながら待ち合わせに向かっていた。
──途中で銀行強盗に出くわすまでは。
プシュっとプルタブを引くと、パイはベランダの柵にもたれかかって夜空を眺める。夏の夜の空気は生ぬるかったが、時折吹き抜ける風だけは心地よかった。酒で火照った頬を撫で、長い髪をさらさらと揺らす。
眼下には、西の都の夜景が広がっていた。
大通りを走る車のライト。無数の窓から漏れる明かり。近くに見えるのは、パイが勤めるカプセルコーポレーションの丸い建物。その寮でパイは今暮らしている。
いつもと変わらない夏の夜だ。自分の人生から3年間をともにした人がいなくなったところで、世界は何ひとつ変わらない。そのことが、今夜はひどく腹立たしく感じられた。
「……何よ」
誰にともなく吐き捨て、パイは缶をぐいっとあおった。
甘いアルコールが喉を流れ落ちていく。おいしいとも思わないが、飲んでいる間だけは胸の奥に感じる痛みをごまかせる気がした。
『今度、両親が田舎から来るんだけど、紹介したいんだ』
いつもと変わらない静かな声で、でもどこか思い詰めたような、緊張したような雰囲気で彼はそういった。
付き合って3年。そろそろ結婚という言葉が2人の間に出てきてもおかしくない頃だった。パイも、なんとなくそんな気配を感じていた。
だから嬉しかった。
もちろん、と即座に答えた。何を着ていこう。手土産は何がいいだろう。彼の両親はどんな人だろう……前日までさんざん悩み抜いて、当日は緊張と高揚を感じながら待ち合わせに向かっていた。
──途中で銀行強盗に出くわすまでは。
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