第二章
主人公の名前設定
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パイとトランクスは、崩れた建物の影に身を潜めていた。数時間前に起こった人造人間の襲撃──正面衝突は避けつつ、街の被害をできるだけ抑えるために応戦し、ようやくやり過ごしたところだった。煙と焦げた金属の匂いがまだ鼻をつく。
「……しばらくは、動かない方がよさそうだな」
パイは黙って頷いた。こんな日常に、慣れてしまった自分が嫌だった。トランクスと父親について話したあの穏やかな午後が幻のように遠く感じる。
(結局、私たちの日常はこの崩れた街と瓦礫の中にあるのね……)
そのとき──足元に誰かが、倒れ込むように転がりこんできた。
「……っ!?」
トランクスがすぐに身構える。だが、それはまだ年若い…少年のようだっただった。
腹部から血を流し、意識がもうろうとしているようだ。服装は一般市民とは明らかに異なり、動きやすい繊維の服に膝当てなどの装備をしている。おそらくレジスタンスのメンバーだろう。人造人間の襲撃があるたび、人命救助を中心に動いているグループがいることはパイもトランクスも知っていた。
「大丈夫ですか!?」
パイが地面に膝をつき、急いで傷口の様子を確認する。出血はあるが、幸いにも臓器には達していないようだった。
「これを!」
トランクスが懐からバンダナを取り出し、パイに渡す。
パイは着ていたTシャツを脱いでタンクトップ一枚になると、トランクスのバンダナを傷口に強く当ててTシャツで巻いて固定する。動きに無駄がない。
白い肩にドキリとして思わず視線を逸らしたトランクスだが、そんな場合ではないと慌てて少年に向き直る。
「病院に──」
トランクスが抱き上げようとしたそのとき、声が飛んできた。
「おい、いるかーっ!!」
瓦礫の向こうから、若い男の声が響いた。
パイとトランクスが振り向くと、埃まみれのジャケット姿の男──年は二十代半ばほどだろうか──が瓦礫をかき分けて現れた。肩を負傷しているようで、右腕を抑えながら歩いてくる。
「……ライムか! 大丈夫か!?」
男はすぐに倒れている青年に駆け寄り、膝をついて様子を確認した。緊張していた顔が、少しだけ緩む。
「ありがとう。大切な仲間なんだ」
短く言い、目を上げて二人を見た。
「すぐに病院に運びましょう。手伝います」とトランクスは男の負傷した右腕を見ながら申し出る。男は筋肉のあるたくましい体つきをしていたが、この腕では運ぶのも一苦労だろう。
「助かるよ。近くにレジスタンスの拠点があるから、そこまで運ぶのを手伝ってもらえるか? 医者もいる」
「もちろんです」
トランクスは頷き、ライムと呼ばれた少年を慎重に担いだ。
***
レジスタンスの拠点は、かつて地下商業施設だった場所を再利用して作られていた。閉ざされたシャッター、剥がれかけた案内板。通路の照明は所々しか灯っていないが、医療器具や無線機材が揃えられた小さな部屋がいくつかあり、最低限のライフラインは確保されているようだった。
襲撃があるたびに街が破壊されるため、最低限の設備を備えた急ごしらえの拠点をいくつも用意して対応しているのだという。
ライムと呼ばれた少年は傷口を消毒して縫合され、清潔な包帯で巻かれてベッドの上に横たわっている。少年を心配そうに見つめていた男は、改めてトランクスとパイに向き直った。
「改めてお礼を言うよ。ありがとう。そういえばまだ名前も伝えていなかったね。俺はチャン。レジスタンスのメンバーだ」
パイとトランクスに向き直り、チャンはにこっと笑った。
「僕はトランクスです」
「私は……パイ」
礼儀正しく応じるトランクスと、ややそっけないパイ。
チャンは、袋入りの新品のTシャツをパイに差し出す。レジスタンスの備品の服のようだ。
「Tシャツ、ごめんな。良かったらこれを」
「いいえ……大丈夫。無事ならそれで」
パイは視線を落とし、受け取らずに言った。
「それにしても……噂の“戦士たち”ってのは君らのことか。もっと屈強なオッサンたちかと思ってたよ」
驚き交じりに言うチャン。
人造人間と戦う存在がいることは、人々の間でひそかな話題になっていた。しかしそれは絶望に覆われたこの世界で、希望を見出したい人たちが語る都市伝説に近かった。だが、それが現実に目の前にいる、しかも年若い男女だったことに驚きを隠せないようだ。
「俺より年下に見えるな。てことは……10代?」
「俺は17歳で、パイは19歳です」トランクスが礼儀正しく答える。
「君たちは何歳の時から戦っていたんだ……? 俺たちレジスタンスにも協力させてくれ。人造人間に立ち向かう力になりたいんだ」
チャンの声は真剣だった。
だがパイは、すぐに首を横に振る。
「……私たちは宇宙人の血を引いてるの。多少のことじゃ死なない。でもあなたたちは違う。危険すぎるわ」
その声は淡々としていて、冷酷にさえ聞こえた。パイは身近なところで命が消えるのを、もう二度と見たくはなかった。
「君たちから見たら頼りなく見えるかもしれない。でも、俺たちは俺たちにできるやり方で、人造人間に対抗するつもりだ。研究もしてるし、街の人を守るために備えてきた。力になれることがあるはずだ」
パイの突き放すような態度に臆することなく、静かに、だが力強くチャンは言う。
パイは俯いたまま、「申し出はありがたいけど……もうかまわないで。必要ないわ」ときっぱり告げた。そして、無言でその場を立ち去ろうとした。
「ちょっと、パイ、待てよ」
トランクスが慌てて後を追い、扉の前で一礼して振り返る。
「すみません。ありがとうございました。でも、俺も行きます」
「……そうか」
チャンはそれ以上何も言わず、ただ明るく微笑み、手を振った。
「気が変わったら、また来てくれ。西の都の地下拠点には、まだ多くの仲間がいるから」
(……頼もしい人だな。悟飯さんが生きていたら、あのくらいの年齢だろうか)
トランクスはふと、そんなことを思った。
「……しばらくは、動かない方がよさそうだな」
パイは黙って頷いた。こんな日常に、慣れてしまった自分が嫌だった。トランクスと父親について話したあの穏やかな午後が幻のように遠く感じる。
(結局、私たちの日常はこの崩れた街と瓦礫の中にあるのね……)
そのとき──足元に誰かが、倒れ込むように転がりこんできた。
「……っ!?」
トランクスがすぐに身構える。だが、それはまだ年若い…少年のようだっただった。
腹部から血を流し、意識がもうろうとしているようだ。服装は一般市民とは明らかに異なり、動きやすい繊維の服に膝当てなどの装備をしている。おそらくレジスタンスのメンバーだろう。人造人間の襲撃があるたび、人命救助を中心に動いているグループがいることはパイもトランクスも知っていた。
「大丈夫ですか!?」
パイが地面に膝をつき、急いで傷口の様子を確認する。出血はあるが、幸いにも臓器には達していないようだった。
「これを!」
トランクスが懐からバンダナを取り出し、パイに渡す。
パイは着ていたTシャツを脱いでタンクトップ一枚になると、トランクスのバンダナを傷口に強く当ててTシャツで巻いて固定する。動きに無駄がない。
白い肩にドキリとして思わず視線を逸らしたトランクスだが、そんな場合ではないと慌てて少年に向き直る。
「病院に──」
トランクスが抱き上げようとしたそのとき、声が飛んできた。
「おい、いるかーっ!!」
瓦礫の向こうから、若い男の声が響いた。
パイとトランクスが振り向くと、埃まみれのジャケット姿の男──年は二十代半ばほどだろうか──が瓦礫をかき分けて現れた。肩を負傷しているようで、右腕を抑えながら歩いてくる。
「……ライムか! 大丈夫か!?」
男はすぐに倒れている青年に駆け寄り、膝をついて様子を確認した。緊張していた顔が、少しだけ緩む。
「ありがとう。大切な仲間なんだ」
短く言い、目を上げて二人を見た。
「すぐに病院に運びましょう。手伝います」とトランクスは男の負傷した右腕を見ながら申し出る。男は筋肉のあるたくましい体つきをしていたが、この腕では運ぶのも一苦労だろう。
「助かるよ。近くにレジスタンスの拠点があるから、そこまで運ぶのを手伝ってもらえるか? 医者もいる」
「もちろんです」
トランクスは頷き、ライムと呼ばれた少年を慎重に担いだ。
***
レジスタンスの拠点は、かつて地下商業施設だった場所を再利用して作られていた。閉ざされたシャッター、剥がれかけた案内板。通路の照明は所々しか灯っていないが、医療器具や無線機材が揃えられた小さな部屋がいくつかあり、最低限のライフラインは確保されているようだった。
襲撃があるたびに街が破壊されるため、最低限の設備を備えた急ごしらえの拠点をいくつも用意して対応しているのだという。
ライムと呼ばれた少年は傷口を消毒して縫合され、清潔な包帯で巻かれてベッドの上に横たわっている。少年を心配そうに見つめていた男は、改めてトランクスとパイに向き直った。
「改めてお礼を言うよ。ありがとう。そういえばまだ名前も伝えていなかったね。俺はチャン。レジスタンスのメンバーだ」
パイとトランクスに向き直り、チャンはにこっと笑った。
「僕はトランクスです」
「私は……パイ」
礼儀正しく応じるトランクスと、ややそっけないパイ。
チャンは、袋入りの新品のTシャツをパイに差し出す。レジスタンスの備品の服のようだ。
「Tシャツ、ごめんな。良かったらこれを」
「いいえ……大丈夫。無事ならそれで」
パイは視線を落とし、受け取らずに言った。
「それにしても……噂の“戦士たち”ってのは君らのことか。もっと屈強なオッサンたちかと思ってたよ」
驚き交じりに言うチャン。
人造人間と戦う存在がいることは、人々の間でひそかな話題になっていた。しかしそれは絶望に覆われたこの世界で、希望を見出したい人たちが語る都市伝説に近かった。だが、それが現実に目の前にいる、しかも年若い男女だったことに驚きを隠せないようだ。
「俺より年下に見えるな。てことは……10代?」
「俺は17歳で、パイは19歳です」トランクスが礼儀正しく答える。
「君たちは何歳の時から戦っていたんだ……? 俺たちレジスタンスにも協力させてくれ。人造人間に立ち向かう力になりたいんだ」
チャンの声は真剣だった。
だがパイは、すぐに首を横に振る。
「……私たちは宇宙人の血を引いてるの。多少のことじゃ死なない。でもあなたたちは違う。危険すぎるわ」
その声は淡々としていて、冷酷にさえ聞こえた。パイは身近なところで命が消えるのを、もう二度と見たくはなかった。
「君たちから見たら頼りなく見えるかもしれない。でも、俺たちは俺たちにできるやり方で、人造人間に対抗するつもりだ。研究もしてるし、街の人を守るために備えてきた。力になれることがあるはずだ」
パイの突き放すような態度に臆することなく、静かに、だが力強くチャンは言う。
パイは俯いたまま、「申し出はありがたいけど……もうかまわないで。必要ないわ」ときっぱり告げた。そして、無言でその場を立ち去ろうとした。
「ちょっと、パイ、待てよ」
トランクスが慌てて後を追い、扉の前で一礼して振り返る。
「すみません。ありがとうございました。でも、俺も行きます」
「……そうか」
チャンはそれ以上何も言わず、ただ明るく微笑み、手を振った。
「気が変わったら、また来てくれ。西の都の地下拠点には、まだ多くの仲間がいるから」
(……頼もしい人だな。悟飯さんが生きていたら、あのくらいの年齢だろうか)
トランクスはふと、そんなことを思った。