第八章
主人公の名前設定
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レジスタンス拠点の空気は、ここ数日少しだけ変わっていた。
誰もが明るくなったわけじゃない。
笑顔が増えたわけでも、未来に希望を持てるようになったわけでもない。
でも――どこかで、みんなの呼吸が揃ってきている気がした。
工具を手にしたまま無言で作業を続ける者。
無線機の調整を繰り返す者。
地図の前で、出現地点の記録を見直す者。
それぞれがそれぞれの持ち場で、できることをやり抜こうとしている──それは希望というより、「覚悟」に近い空気だった。
どうせなら最後まで抗ってやろう。
どうせなら一矢くらいは報いてやろう。
そんな思いが静かに共有されていた。
人造人間の停止装置に、誰も過剰な期待はしていなかった。
うまくいかないかもしれないし、失敗するかもしれない。
政府軍の緻密な戦略も、大富豪が開発した兵器も……人造人間の前ではまるで指先ひとつで片づけられるように、あっけなく終わらされてきた。
それでも、皆が奴らの思い通りにさせるものか、最期の最後まで抗ってやろう……と再び初心に帰って戦い抜く覚悟を決めていた。
その空気をつくったのは――きっと、あの日のパイの演説だった。
***
人前に立つのは苦手だ。
こういう役割はいつもトランクスが担ってきてくれてたし、パイはうまく話せる自信がなかった。
それでも、パイはみんなの前に立った。
「……みんなも心配していると思うけど……トランクスは過去の世界に行ったきり戻ってきていないの。何か不足の事態があったのかもしれないし、時間の誤差かもしれない…理由は何一つわからないし、手の打ちようもないの。……私は絶対帰ってきてくれると信じてる。トランクスのことは、ずっと待つつもり……でも……」
一度、息を吸う。
「……このまま人造人間の好きにさせるのは、嫌」
ポケットから、小さな装置を取り出して見せる。
「これが人造人間の停止装置。カプセルコーポレーションで開発された。できるだけ近づいて、ボタンを押せば……奴らの動きが止まるはず」
“はず”という言葉に、誰も突っ込まなかった。誰もが、今までどれだけの“はず”が裏切られてきたかを知っているから。
「……でも、近づくのが難しいの。最近の襲撃は短時間ですぐ離脱する。だから……」
パイは一人一人の瞳をゆっくり見つめると、言葉に力を込めた。
「みんなの力がいるの。出現したら、すぐ知らせてほしい。各地のレジスタンスとも連携して……できるだけ早く、私が行けるように」
最期はみんなに向かってしっかり頭を下げる。
「……助けてほしい」
それは命令でも作戦でもなく、まっすぐなお願いだった。
あたりに静寂が落ちた。
それからライムが一歩前に出た。
「もちろんだよ!…やっと頼ってくれた」
ローズマリーが続く。
「ずいぶんしっかり話せるようになったじゃないか。どうせ逃げ場なんてないんだし、最期まで付き合うよ」
他のメンバーも、次々とうなずいた。
「やらせてくれ」
「当たり前じゃないか!」
その光景に、胸の奥が熱くなった。
端の方で見守っていたチャンと目が合う。彼は優しく微笑むと、ゆっくりとうなずいてくれた。
(……この人たちを、守りたい)
その思いが、はっきりと形を持った瞬間だった。
***
それから数日経った今。
拠点には、不思議と落ち着いた空気が流れていた。
チャンが無線を整備しながら言う。
「各地との連絡網、だいぶ整ってきたぞ」
「ありがとう」
「いや、こっちこそ」
彼は少し照れたように笑う。
「……なんか、いいな。みんながまとまっている感じ」
パイも、小さく笑った。
「……うん」
この世界はどこまでも絶望に満ちていたけれど、今は「みんなと一緒に生きている」という感覚があった。確かな絆を感じていた。
その瞬間だった。
――爆音。
強い衝撃。
床が揺れ、天井が裂け、壁が吹き飛ぶ。
「伏せろ!!」
誰かの叫び。
次の瞬間、火と煙が拠点を覆った。
瓦礫が降り注ぎ、悲鳴が上がり、無線が床に転がる。
人造人間の襲撃だった。
パイは、はっと息を呑んだ。
(……違う)
これは偶然じゃない。気まぐれでも、ランダムでもない。
――見られていた。
襲撃して、レジスタンスが集まるのを見て、後をつけて、各地の拠点を探っていたんだ。
「……しまった……」
背筋が凍る思いがした。
「チャン!」
「わかってる!」
チャンはすぐに指示を飛ばす。
「動けるやつは負傷者を連れて、外へ避難! 無線は持てるだけ持っていけ!」
パイはチャンの腕を掴んだ。
「……みんなをお願い。誘導したらあなたもできるだけ遠くに逃げて!…絶対に生きのびて」
チャンは一瞬、パイを見る。
何かいろいろ言いたそうな顔をしていたけれど、ただ短く
「……必ず、戻れ」
とだけ言った。
パイは、うなずいた。
そして――走り出した。
煙の向こう、爆撃の発生地点へ。
人造人間のいる場所へ。
(……今度こそ)
(……今度こそ、止める)
それが、希望なのか、絶望なのかはわからない。
ただ、彼女は走った。
愛する人たちを守るために。
この世界をこれ以上好き勝手にさせないために。
そして――帰ってくると信じている、彼を迎えるために。
―――――――最終章へ続く
誰もが明るくなったわけじゃない。
笑顔が増えたわけでも、未来に希望を持てるようになったわけでもない。
でも――どこかで、みんなの呼吸が揃ってきている気がした。
工具を手にしたまま無言で作業を続ける者。
無線機の調整を繰り返す者。
地図の前で、出現地点の記録を見直す者。
それぞれがそれぞれの持ち場で、できることをやり抜こうとしている──それは希望というより、「覚悟」に近い空気だった。
どうせなら最後まで抗ってやろう。
どうせなら一矢くらいは報いてやろう。
そんな思いが静かに共有されていた。
人造人間の停止装置に、誰も過剰な期待はしていなかった。
うまくいかないかもしれないし、失敗するかもしれない。
政府軍の緻密な戦略も、大富豪が開発した兵器も……人造人間の前ではまるで指先ひとつで片づけられるように、あっけなく終わらされてきた。
それでも、皆が奴らの思い通りにさせるものか、最期の最後まで抗ってやろう……と再び初心に帰って戦い抜く覚悟を決めていた。
その空気をつくったのは――きっと、あの日のパイの演説だった。
***
人前に立つのは苦手だ。
こういう役割はいつもトランクスが担ってきてくれてたし、パイはうまく話せる自信がなかった。
それでも、パイはみんなの前に立った。
「……みんなも心配していると思うけど……トランクスは過去の世界に行ったきり戻ってきていないの。何か不足の事態があったのかもしれないし、時間の誤差かもしれない…理由は何一つわからないし、手の打ちようもないの。……私は絶対帰ってきてくれると信じてる。トランクスのことは、ずっと待つつもり……でも……」
一度、息を吸う。
「……このまま人造人間の好きにさせるのは、嫌」
ポケットから、小さな装置を取り出して見せる。
「これが人造人間の停止装置。カプセルコーポレーションで開発された。できるだけ近づいて、ボタンを押せば……奴らの動きが止まるはず」
“はず”という言葉に、誰も突っ込まなかった。誰もが、今までどれだけの“はず”が裏切られてきたかを知っているから。
「……でも、近づくのが難しいの。最近の襲撃は短時間ですぐ離脱する。だから……」
パイは一人一人の瞳をゆっくり見つめると、言葉に力を込めた。
「みんなの力がいるの。出現したら、すぐ知らせてほしい。各地のレジスタンスとも連携して……できるだけ早く、私が行けるように」
最期はみんなに向かってしっかり頭を下げる。
「……助けてほしい」
それは命令でも作戦でもなく、まっすぐなお願いだった。
あたりに静寂が落ちた。
それからライムが一歩前に出た。
「もちろんだよ!…やっと頼ってくれた」
ローズマリーが続く。
「ずいぶんしっかり話せるようになったじゃないか。どうせ逃げ場なんてないんだし、最期まで付き合うよ」
他のメンバーも、次々とうなずいた。
「やらせてくれ」
「当たり前じゃないか!」
その光景に、胸の奥が熱くなった。
端の方で見守っていたチャンと目が合う。彼は優しく微笑むと、ゆっくりとうなずいてくれた。
(……この人たちを、守りたい)
その思いが、はっきりと形を持った瞬間だった。
***
それから数日経った今。
拠点には、不思議と落ち着いた空気が流れていた。
チャンが無線を整備しながら言う。
「各地との連絡網、だいぶ整ってきたぞ」
「ありがとう」
「いや、こっちこそ」
彼は少し照れたように笑う。
「……なんか、いいな。みんながまとまっている感じ」
パイも、小さく笑った。
「……うん」
この世界はどこまでも絶望に満ちていたけれど、今は「みんなと一緒に生きている」という感覚があった。確かな絆を感じていた。
その瞬間だった。
――爆音。
強い衝撃。
床が揺れ、天井が裂け、壁が吹き飛ぶ。
「伏せろ!!」
誰かの叫び。
次の瞬間、火と煙が拠点を覆った。
瓦礫が降り注ぎ、悲鳴が上がり、無線が床に転がる。
人造人間の襲撃だった。
パイは、はっと息を呑んだ。
(……違う)
これは偶然じゃない。気まぐれでも、ランダムでもない。
――見られていた。
襲撃して、レジスタンスが集まるのを見て、後をつけて、各地の拠点を探っていたんだ。
「……しまった……」
背筋が凍る思いがした。
「チャン!」
「わかってる!」
チャンはすぐに指示を飛ばす。
「動けるやつは負傷者を連れて、外へ避難! 無線は持てるだけ持っていけ!」
パイはチャンの腕を掴んだ。
「……みんなをお願い。誘導したらあなたもできるだけ遠くに逃げて!…絶対に生きのびて」
チャンは一瞬、パイを見る。
何かいろいろ言いたそうな顔をしていたけれど、ただ短く
「……必ず、戻れ」
とだけ言った。
パイは、うなずいた。
そして――走り出した。
煙の向こう、爆撃の発生地点へ。
人造人間のいる場所へ。
(……今度こそ)
(……今度こそ、止める)
それが、希望なのか、絶望なのかはわからない。
ただ、彼女は走った。
愛する人たちを守るために。
この世界をこれ以上好き勝手にさせないために。
そして――帰ってくると信じている、彼を迎えるために。
―――――――最終章へ続く