第八章
主人公の名前設定
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その場所は、もう街と呼べる姿をしていなかった。
パイは、レジスタンスの仲間たちと共に亡骸を埋葬していた。
(……守れなかった)
人造人間は、また短時間だけ暴れて去っていった。
停止装置を使う機会は、今回も訪れなかった。
トランクスがいれば違ったのだろうか?
そう考えてしまう自分を、パイは何度も振り払おうとした。
彼がいない世界に慣れてはいけない。
でも、彼がいない現実から目を逸らすことはもうできなかった。
***
拠点に戻り、手を洗って血と土を落としても、胸の重さは残ったままだった。
誰とも言葉を交わす気になれず、パイは壁にもたれて座り込む。
そこへ、チャンが静かに近づいてきた。
「……今日は、きつかったよな」
その一言で、胸の奥に溜め込んでいたものが堰を切った。
「……一人で行かせなきゃよかった」
ぽつり、と零れた声は、自分でも驚くほど弱々しかった。
「トランクスが…………」
言葉を続けようとして、喉が詰まる。
「私が一緒に行けばよかったのかも……。それか、過去に行くって言われた時、もっと引き止めればよかった。どうしたらいいのか……もう、わからない……」
気づけば涙がこぼれていた。
泣くつもりなんて、なかったのに。
チャンの前ではどういうわけか、いつだって取り繕わずに話せた。
視界の端で、チャンの手が伸びてくる気配を感じた。
……一瞬、抱きしめられるのかと思った……。
けれど、その手は途中で止まり、空中でぎゅっと握りしめられる。
「……大丈夫だ、なんて言えない」
低く、真剣な声だった。
「俺たちはずっと絶望の中で戦ってきた。希望はいつだって打ち砕かれてきたし、誰かの言葉ひとつで楽になるほど簡単な世界でもない」
チャンは、少し間を置いてから続けた。
「でもな。あいつがいない間、みんながまだ踏ん張れてるのはパイがいるからだ。みんな君の存在に励まされて助けられている…」
パイは、ゆっくり顔を上げた。
「……最初に会った頃も、こんな顔してたよな」
チャンは、優しく微笑んで続けた。
「強くなきゃって無理して突っ張って思い詰めて……でも心細そうで……。初めて笑ってくれた時は心底ほっとしたよ」
パイは、涙を拭いながら思わず小さく笑った。
「……ほんとだ。あの時と同じだ」
涙と一緒に、不安な気持ちが少しだけ流れ落ちていく。
(あの夜も…チャンの言葉に救われた)
「そうやって泣いた後に笑うのも、あの頃と同じだ」
チャンはやさしく微笑んだ。
「ほんとだね」
二人は、目を合わせて笑った。
もし今、彼に抱きしめられていたらどうなっただろう?
不安定な心は彼に寄りかかってしまいそうで、だからそうならなくてよかったのかもしれない。
トランクスが戻らない心細さは消えない。胸に空いた穴もそのままだ。
でも――覚悟ははっきりした。
信じて待つ。ずっとずっとトランクスを待っている。それは、これからも変わらない。
けれど、ただ待つだけはもうやめる。
この世界に救世主が必要なら、その重さを自分が背負う。
パイは、目の前に立っているチャンを見る。
(この人を絶対に失いたくない…)
チャンにローズマリー、レジスタンスの仲間たち──そして「あなたには生きていてほしい」と気丈に言い切ったブルマのことを思い浮かべる。
(…ごめんね、ブルマさん。私ひとりで過去の世界には行けない。気づけば…私はこんなにも周りの人たちのことを愛している……)
自分の中に湧き上がる熱い感情に気づき、胸の奥がじんわりと熱くなる。
気づけば、パイは立ち上がっていた。
「ねえ、チャン」
声にはもう迷いはなかった。
「レジスタンスのみんなに、協力をお願いしたいことがあるの。……あとで、みんなの前で話をさせて」
チャンは一瞬目を見開き、そして大きくうなずいた。
「……ああ。もちろんさ」
パイは、静かに拳を握る。
愛する人たちとこの世界で生きるために。
そして――帰ってくる彼を迎えるために。
パイは決意を胸に燃やしていた。
パイは、レジスタンスの仲間たちと共に亡骸を埋葬していた。
(……守れなかった)
人造人間は、また短時間だけ暴れて去っていった。
停止装置を使う機会は、今回も訪れなかった。
トランクスがいれば違ったのだろうか?
そう考えてしまう自分を、パイは何度も振り払おうとした。
彼がいない世界に慣れてはいけない。
でも、彼がいない現実から目を逸らすことはもうできなかった。
***
拠点に戻り、手を洗って血と土を落としても、胸の重さは残ったままだった。
誰とも言葉を交わす気になれず、パイは壁にもたれて座り込む。
そこへ、チャンが静かに近づいてきた。
「……今日は、きつかったよな」
その一言で、胸の奥に溜め込んでいたものが堰を切った。
「……一人で行かせなきゃよかった」
ぽつり、と零れた声は、自分でも驚くほど弱々しかった。
「トランクスが…………」
言葉を続けようとして、喉が詰まる。
「私が一緒に行けばよかったのかも……。それか、過去に行くって言われた時、もっと引き止めればよかった。どうしたらいいのか……もう、わからない……」
気づけば涙がこぼれていた。
泣くつもりなんて、なかったのに。
チャンの前ではどういうわけか、いつだって取り繕わずに話せた。
視界の端で、チャンの手が伸びてくる気配を感じた。
……一瞬、抱きしめられるのかと思った……。
けれど、その手は途中で止まり、空中でぎゅっと握りしめられる。
「……大丈夫だ、なんて言えない」
低く、真剣な声だった。
「俺たちはずっと絶望の中で戦ってきた。希望はいつだって打ち砕かれてきたし、誰かの言葉ひとつで楽になるほど簡単な世界でもない」
チャンは、少し間を置いてから続けた。
「でもな。あいつがいない間、みんながまだ踏ん張れてるのはパイがいるからだ。みんな君の存在に励まされて助けられている…」
パイは、ゆっくり顔を上げた。
「……最初に会った頃も、こんな顔してたよな」
チャンは、優しく微笑んで続けた。
「強くなきゃって無理して突っ張って思い詰めて……でも心細そうで……。初めて笑ってくれた時は心底ほっとしたよ」
パイは、涙を拭いながら思わず小さく笑った。
「……ほんとだ。あの時と同じだ」
涙と一緒に、不安な気持ちが少しだけ流れ落ちていく。
(あの夜も…チャンの言葉に救われた)
「そうやって泣いた後に笑うのも、あの頃と同じだ」
チャンはやさしく微笑んだ。
「ほんとだね」
二人は、目を合わせて笑った。
もし今、彼に抱きしめられていたらどうなっただろう?
不安定な心は彼に寄りかかってしまいそうで、だからそうならなくてよかったのかもしれない。
トランクスが戻らない心細さは消えない。胸に空いた穴もそのままだ。
でも――覚悟ははっきりした。
信じて待つ。ずっとずっとトランクスを待っている。それは、これからも変わらない。
けれど、ただ待つだけはもうやめる。
この世界に救世主が必要なら、その重さを自分が背負う。
パイは、目の前に立っているチャンを見る。
(この人を絶対に失いたくない…)
チャンにローズマリー、レジスタンスの仲間たち──そして「あなたには生きていてほしい」と気丈に言い切ったブルマのことを思い浮かべる。
(…ごめんね、ブルマさん。私ひとりで過去の世界には行けない。気づけば…私はこんなにも周りの人たちのことを愛している……)
自分の中に湧き上がる熱い感情に気づき、胸の奥がじんわりと熱くなる。
気づけば、パイは立ち上がっていた。
「ねえ、チャン」
声にはもう迷いはなかった。
「レジスタンスのみんなに、協力をお願いしたいことがあるの。……あとで、みんなの前で話をさせて」
チャンは一瞬目を見開き、そして大きくうなずいた。
「……ああ。もちろんさ」
パイは、静かに拳を握る。
愛する人たちとこの世界で生きるために。
そして――帰ってくる彼を迎えるために。
パイは決意を胸に燃やしていた。