第八章
主人公の名前設定
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白い。青空も太陽も月もなく…どこまでも白く、そして…果てしない。
「精神と時の部屋」は、世界から音が奪われたと思うほど静寂が支配している。
空気は薄く、体は鉛の塊みたいに重い。ただ真っ白な空間が無限に広がっているだけ…。
ここで1年を過ごすということが、どれほど神経をすり減らすものなのか…。
一度目に入った時、身に沁みて知ったはずだった。
(なのに、俺はまたここにいる…)
二度目の「精神と時の部屋」では過ごす時間もあとわずか。
気づけば、過去の世界に来てからもう2年近く経とうとしていた。
未来で別れたパイ。彼女との年の差は1歳半……俺の方があの別れた日の彼女よりも少しだけ年上になってしまった。
(……俺は、何をやっているんだろう)
この世界でも自分の無力さに打ちのめされ、胸の奥にやるせなさが募っていた。
***
父ベジータと修行する。それはずっと渇望していたことだった。
子どもの頃、母に問いかけたことがある。
「父さんってどんな人だったの?」
ブルマは機械をいじる手を止めると、少し考え込むようにして答えてくれた。
「そうねえ……戦闘民族サイヤ人の王子で、だれよりも強くて誇り高くてね。でも、感情はほとんど表に出さない人だったわ』
まだ幼いトランクスはそれがどういうことなのかよくわからず、腑に落ちない顔をしていた。眉を顰める自分に、ブルマは優しく微笑むと
「自分の弱さを誰にも見せない人なの。でも寂しそうに見えたわ」
と教えてくれた。
トランクスにはよくわからなかった。
ただ、破壊される街を見て怒り悔しさに震え、強くなりたいと泣いている自分とはまったく違う人間のように感じた。
そんなトランクスの様子を見て「大人の話をしすぎたか…」と思ったブルマはこうも言ってくれた。
「でもね…あなたはそんなあの人に似ているところがたくさんあるわ」
「……俺、父さんに似てるの?」
「ええ。似ているわ」
その言葉にぱっと胸が熱くなった。誇らしさでいっぱいになった。
***
あの頃は会ったことない父に思いを膨らませていた。
だが、現実はどうだ。
初めて父と会った時は感動した。まさに母の言ったとおり強く、プライドが高く、きびしく……そしてさびしそうな人だった。
しかし、父は…まるで俺に興味がなかった。
未来の俺はおろか、この世界の赤ん坊の俺さえ父にとって何者でもなかったという苦い現実を思い知らされる。
赤ん坊の俺が爆発に巻き込まれそうになっても、注意を向けようともしない。
一回目に「精神と時の部屋」に一緒に入った時も、ずっと無視されたままだった。
睡眠も休憩も全部別々に行い、結局はひとりで修行していたのと変わらなかった。
ただ、父の気が膨れ上がっていく気配だけを感じていた。
スーパーサイヤ人の壁を越えた時、「もしかしたら」と思ってしまった。
父よりも強くなれたら興味を持ってもらえるのか、それとも彼のプライドを傷つけるのか…悩んだ。
しかし、それもひとりで空回りをしていただけだ。壁を超えたスーパーサイヤ人は動きは重く、消耗は早い。
(……俺は結局、何者にもなれなかった)
あの人の背中は遠い。追いつけると思ったことが、思い上がりだった。
セルに「殺せ」といった瞬間を思い出す。
あの時は自分の無力さと未熟さに打ちのめされていた。
あんな風にあきらめるべきではなかった。
苦々しく脳裏に浮かぶのは未来のパイの寂しそうな瞳だった。
(……俺、「必ず帰って来る」なんて約束したのに)
なのに俺は…無様に負け、死を受け入れていた…。
(戻ったら、どんな顔をして会えばいいんだ)
不安げに揺れる彼女の瞳を振り切って過去の世界に来ておいて、このざまだ。戦闘民族サイヤ人としての本能に突き動かされたのだ。「もっと強くなりたい」 という誘惑。修行できる過去へ飛び込みたかったのが本音だ。
(……それが俺の弱さだ)
がつん、と足元で重力が変わった。
空気が揺らぎ、息が詰まる。
自分がどこにいるかすら時々わからなくなるこの白い孤独な世界が、未来のパイとのつながりを少しずつ削っていくようで……。
あの夜、手を握ってくれた時のぬくもり、彼女の揺れる瞳、そして自分の名前を呼んでくれ声が遠くに感じる。
もう一度あの声で自分の名前を呼んでもらいたかった。
(……パイ。待っててくれ。必ず……帰るから。絶対に……)
声にならない声が、白い世界に吸い込まれた。
ただ静寂だけが広がり、孤独だけが積もっていく。
それでもトランクスは再び拳を握りしめた。
「精神と時の部屋」は、世界から音が奪われたと思うほど静寂が支配している。
空気は薄く、体は鉛の塊みたいに重い。ただ真っ白な空間が無限に広がっているだけ…。
ここで1年を過ごすということが、どれほど神経をすり減らすものなのか…。
一度目に入った時、身に沁みて知ったはずだった。
(なのに、俺はまたここにいる…)
二度目の「精神と時の部屋」では過ごす時間もあとわずか。
気づけば、過去の世界に来てからもう2年近く経とうとしていた。
未来で別れたパイ。彼女との年の差は1歳半……俺の方があの別れた日の彼女よりも少しだけ年上になってしまった。
(……俺は、何をやっているんだろう)
この世界でも自分の無力さに打ちのめされ、胸の奥にやるせなさが募っていた。
***
父ベジータと修行する。それはずっと渇望していたことだった。
子どもの頃、母に問いかけたことがある。
「父さんってどんな人だったの?」
ブルマは機械をいじる手を止めると、少し考え込むようにして答えてくれた。
「そうねえ……戦闘民族サイヤ人の王子で、だれよりも強くて誇り高くてね。でも、感情はほとんど表に出さない人だったわ』
まだ幼いトランクスはそれがどういうことなのかよくわからず、腑に落ちない顔をしていた。眉を顰める自分に、ブルマは優しく微笑むと
「自分の弱さを誰にも見せない人なの。でも寂しそうに見えたわ」
と教えてくれた。
トランクスにはよくわからなかった。
ただ、破壊される街を見て怒り悔しさに震え、強くなりたいと泣いている自分とはまったく違う人間のように感じた。
そんなトランクスの様子を見て「大人の話をしすぎたか…」と思ったブルマはこうも言ってくれた。
「でもね…あなたはそんなあの人に似ているところがたくさんあるわ」
「……俺、父さんに似てるの?」
「ええ。似ているわ」
その言葉にぱっと胸が熱くなった。誇らしさでいっぱいになった。
***
あの頃は会ったことない父に思いを膨らませていた。
だが、現実はどうだ。
初めて父と会った時は感動した。まさに母の言ったとおり強く、プライドが高く、きびしく……そしてさびしそうな人だった。
しかし、父は…まるで俺に興味がなかった。
未来の俺はおろか、この世界の赤ん坊の俺さえ父にとって何者でもなかったという苦い現実を思い知らされる。
赤ん坊の俺が爆発に巻き込まれそうになっても、注意を向けようともしない。
一回目に「精神と時の部屋」に一緒に入った時も、ずっと無視されたままだった。
睡眠も休憩も全部別々に行い、結局はひとりで修行していたのと変わらなかった。
ただ、父の気が膨れ上がっていく気配だけを感じていた。
スーパーサイヤ人の壁を越えた時、「もしかしたら」と思ってしまった。
父よりも強くなれたら興味を持ってもらえるのか、それとも彼のプライドを傷つけるのか…悩んだ。
しかし、それもひとりで空回りをしていただけだ。壁を超えたスーパーサイヤ人は動きは重く、消耗は早い。
(……俺は結局、何者にもなれなかった)
あの人の背中は遠い。追いつけると思ったことが、思い上がりだった。
セルに「殺せ」といった瞬間を思い出す。
あの時は自分の無力さと未熟さに打ちのめされていた。
あんな風にあきらめるべきではなかった。
苦々しく脳裏に浮かぶのは未来のパイの寂しそうな瞳だった。
(……俺、「必ず帰って来る」なんて約束したのに)
なのに俺は…無様に負け、死を受け入れていた…。
(戻ったら、どんな顔をして会えばいいんだ)
不安げに揺れる彼女の瞳を振り切って過去の世界に来ておいて、このざまだ。戦闘民族サイヤ人としての本能に突き動かされたのだ。「もっと強くなりたい」 という誘惑。修行できる過去へ飛び込みたかったのが本音だ。
(……それが俺の弱さだ)
がつん、と足元で重力が変わった。
空気が揺らぎ、息が詰まる。
自分がどこにいるかすら時々わからなくなるこの白い孤独な世界が、未来のパイとのつながりを少しずつ削っていくようで……。
あの夜、手を握ってくれた時のぬくもり、彼女の揺れる瞳、そして自分の名前を呼んでくれ声が遠くに感じる。
もう一度あの声で自分の名前を呼んでもらいたかった。
(……パイ。待っててくれ。必ず……帰るから。絶対に……)
声にならない声が、白い世界に吸い込まれた。
ただ静寂だけが広がり、孤独だけが積もっていく。
それでもトランクスは再び拳を握りしめた。