第八章
主人公の名前設定
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トランクスが旅立ってから、一週間が過ぎた。
朝が来るたび、パイはカプセルコーポレーションの庭に出て空を見上げた。
灰色の雲が流れるだけで、何の兆しもない。
ブルマは通信装置の前から離れず、夜通しで何度も波長を合わせていた。
けれど、応答は一度もなかった。
「装置が安定していなかったから……時間差はあると思う。今は信じて待ちましょう」
寝不足で真っ赤になった目のブルマ。そう言いながらも、その声の端がわずかに震えていた。
パイは何も言えず黙ってうつむいた。
ただ、手のひらに残るトランクスの温もりを思い出していた。
あの夜、彼の手を握ったときの感触が、まだ消えていない。
(あの時、言えばよかったんだ……)
「私も好き」って。大切なことはいつだって伝えておかないといけなかったのに……。私たちの世界に「また今度」なんてあるかわからないのに……。なんで「帰ってきたら答える」なんて約束してしまったんだろう。
***
その夜。
凍てつく寒さの中、パイはまた庭にいた。一日の間に何度も庭へ出てしまう。彼の影を求めて。
――戻る。トランクスは必ず。
何度自分に言い聞かせても、夜が訪れるとその確信は薄れて不安に飲み込まれていく。
星のない冷たい夜空の下で、パイの胸の奥にあいた空洞がじわじわ広がっていくように感じた。
冷たい風が吹き抜け、頬をかすめた。
その冷たさが、涙の代わりに彼女の心を締めつけた。
パイは想像してしまった。
──時空のはざまに放り出されて、たった一人きりでさまようトランクスの姿を……。
(…なんで一人で行かせたんだろう)
自分に何ができたとも思えない。でも一人きりで行かせなければよかった。過去に行く禁忌さえも、一人に背負わせるべきではなかった。パイは思いを伝えなかったことも、一人で行かせてしまったことも、激しく後悔していた。
遠くに灯るわずかな灯が、星のようにまたたいていた。
(ねえ、トランクス……)
心の中で彼に呼び掛ける。
(私、ちゃんと伝えるよ。だからお願い――早く帰ってきて)
***
しかし10日経っても、2週間経ってもトランクスは戻ってこなかった……。
代わりに、あの悪夢が戻ってきた──人造人間の襲撃。
短い時間だけ暴れ、すぐに姿を消す。不規則で、しかし執拗な襲撃が再開していた。
駆け付けても襲撃の後で、停止装置を押すタイミングはなかなか訪れない。
生存者がいないか探して救助することしかできなかった。
西の都周辺の襲撃が多く、レジスタンスも総出で救助を手伝った。
しかし、パイは感じていた。彼らの間にトランクスが戻ってこないことに対する動揺と不安が広がっていることを……。
けれどパイは何も言えなかった。戻ってこないとも、絶対戻って来るとも……。
その様子を、チャンが黙って見つめていた。
聞きたいことはたくさんあるはずなのに、パイに何も問い詰めてこない。
チャンはただ、何も聞かず、無理に励ますこともせず、そっと気遣うように見守っていた。
ある日、西の都のレジスタンス拠点近くでの襲撃。
目の前に広がるのは崩れ落ちた建物に、燃え上がる炎。
息を吸うたび、焼け焦げた煙が肺に染み込む。
「あと少しの辛抱だから! 今瓦礫を持ち上げるから!」
パイは叫び、瓦礫の下から子どもを引きずり出した。
救助を終え、静寂が訪れたとき、パイは瓦礫の中で膝をついた。
目の前には、守れなかったもの。
手の中には、何も残っていない自分。
胸の奥で呼びかける。
(……トランクス……)
返事はない。
ただ、焼け焦げた風だけが吹き抜けていった。
朝が来るたび、パイはカプセルコーポレーションの庭に出て空を見上げた。
灰色の雲が流れるだけで、何の兆しもない。
ブルマは通信装置の前から離れず、夜通しで何度も波長を合わせていた。
けれど、応答は一度もなかった。
「装置が安定していなかったから……時間差はあると思う。今は信じて待ちましょう」
寝不足で真っ赤になった目のブルマ。そう言いながらも、その声の端がわずかに震えていた。
パイは何も言えず黙ってうつむいた。
ただ、手のひらに残るトランクスの温もりを思い出していた。
あの夜、彼の手を握ったときの感触が、まだ消えていない。
(あの時、言えばよかったんだ……)
「私も好き」って。大切なことはいつだって伝えておかないといけなかったのに……。私たちの世界に「また今度」なんてあるかわからないのに……。なんで「帰ってきたら答える」なんて約束してしまったんだろう。
***
その夜。
凍てつく寒さの中、パイはまた庭にいた。一日の間に何度も庭へ出てしまう。彼の影を求めて。
――戻る。トランクスは必ず。
何度自分に言い聞かせても、夜が訪れるとその確信は薄れて不安に飲み込まれていく。
星のない冷たい夜空の下で、パイの胸の奥にあいた空洞がじわじわ広がっていくように感じた。
冷たい風が吹き抜け、頬をかすめた。
その冷たさが、涙の代わりに彼女の心を締めつけた。
パイは想像してしまった。
──時空のはざまに放り出されて、たった一人きりでさまようトランクスの姿を……。
(…なんで一人で行かせたんだろう)
自分に何ができたとも思えない。でも一人きりで行かせなければよかった。過去に行く禁忌さえも、一人に背負わせるべきではなかった。パイは思いを伝えなかったことも、一人で行かせてしまったことも、激しく後悔していた。
遠くに灯るわずかな灯が、星のようにまたたいていた。
(ねえ、トランクス……)
心の中で彼に呼び掛ける。
(私、ちゃんと伝えるよ。だからお願い――早く帰ってきて)
***
しかし10日経っても、2週間経ってもトランクスは戻ってこなかった……。
代わりに、あの悪夢が戻ってきた──人造人間の襲撃。
短い時間だけ暴れ、すぐに姿を消す。不規則で、しかし執拗な襲撃が再開していた。
駆け付けても襲撃の後で、停止装置を押すタイミングはなかなか訪れない。
生存者がいないか探して救助することしかできなかった。
西の都周辺の襲撃が多く、レジスタンスも総出で救助を手伝った。
しかし、パイは感じていた。彼らの間にトランクスが戻ってこないことに対する動揺と不安が広がっていることを……。
けれどパイは何も言えなかった。戻ってこないとも、絶対戻って来るとも……。
その様子を、チャンが黙って見つめていた。
聞きたいことはたくさんあるはずなのに、パイに何も問い詰めてこない。
チャンはただ、何も聞かず、無理に励ますこともせず、そっと気遣うように見守っていた。
ある日、西の都のレジスタンス拠点近くでの襲撃。
目の前に広がるのは崩れ落ちた建物に、燃え上がる炎。
息を吸うたび、焼け焦げた煙が肺に染み込む。
「あと少しの辛抱だから! 今瓦礫を持ち上げるから!」
パイは叫び、瓦礫の下から子どもを引きずり出した。
救助を終え、静寂が訪れたとき、パイは瓦礫の中で膝をついた。
目の前には、守れなかったもの。
手の中には、何も残っていない自分。
胸の奥で呼びかける。
(……トランクス……)
返事はない。
ただ、焼け焦げた風だけが吹き抜けていった。