第七章
主人公の名前設定
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それからの二日間は嘘みたいに穏やかだった。
曇り空が続いたが、世界はどこか柔らかく見えた。
人造人間の襲撃はなく、爆音も悲鳴もなかった。
パイが胸の奥で密かに願ってしまった「今、襲撃があれば…三つ目の装置を使えるかもしれない、トランクスが過去に行かなくて済むかもしれない」という思いは、叶うことなく過ぎていった。
それが救いなのか、不運なのかは判然としないまま……。
ブルマはほとんど眠らず、目の下にうっすら隈を作りながらタイムマシンの最終点検に没頭していた。
その間、パイとトランクスは過去へ行く準備を進めた。
持っていく荷物を一緒に選んで、一緒に料理をして、ごくたまに目が合うと互いに照れくさそうに微笑みあった。
最後の夜はまた餃子づくりをした。
不器用ながらも野菜を刻み続けるトランクスの後ろ姿を見て、パイはかつての母の調理中の後ろ姿を思い出し、胸の奥にじんわり温かい思いが込み上げてきた。
餃子を一緒に包む時間はやはり楽しかった。
「ほら、やっぱり形ゆがんでる」
「仕方ないだろ、必死なんだよ。そっちだって対して変わらないだろ」
お互いの餃子に厳しい評価を下しあいながらも、恋人同士がじゃれているような穏やかで優しい時間が流れていた。
(……こんな時間が、ずっと続けばいいのに……)
パイの胸に、甘い夢が忍び寄る。
戦いが終わり平和になって、トランクスと一緒に暮らして、台所で並んで料理をして、笑い合って過ごす…。その未来を信じたくなる。
夢は夢でしかないと知っている。それでも、夢を見ずにはいられなかった。
***
そして出発の朝になった。
トランクスはカプセルコーポレーションのジャケットを着てタイムマシンの前に立つ。ブルマが目を赤くしながらも笑顔を作り「気をつけてね」と励ます。
パイもブルマの隣でトランクスを見つめると、しっかり頷いて微笑んだ。
(笑えた。…ちゃんと笑って見送れた…)
けれど、胸の奥では何かがざわざわと激しく揺れていた。ハッチが開き、トランクスが操縦席に乗り込むと振り返る。
その目はまっすぐパイを見ていて――
伝えられなかった言葉が、まだ胸の奥底にあった。それが湧きだしてきた。
(…行かないで)
しかし、喉まで出かかって、その言葉は結局声にならなかった。言ってしまえば、彼の決意を奪ってしまう気がして。
代わりに
「いってらっしゃい」
と伝えた。強く、優しく、彼を励ますように。
その瞬間、心の中が凍り付くようなぞくりとする感覚が押し寄せた。
まるでもう永遠に会えない人を見送っているような……そんな、血の気が引く感覚。
トランクスは力強く頷き、ハッチが閉まる。
低い駆動音が響き、光がまわりの空気を震わせる。
やがて、機体は静かに消えた。
タイムマシンがあった場所にはただ風だけが残された。
パイは拳を握りしめる。怖さをごまかすように、指先に力を込めた。
(大丈夫。明日になったらトランクスは帰って来る。そしたら約束通りその時に伝えればいいんだ。私も好きって。一緒に生きたいって)
今生の別れになるはずはない。だから帰ってきたら気持ちを伝えようと、まるでおまじないみたいに胸の中で自分に言い聞かせ続けた。けれど、悪い予感という名の影が、じわりと広がっていく。
知っていたはずだ。
甘やかな夢の後には、いつも苦くて厳しい現実が待っていることを……。
希望はいつだって無残に打ち砕かれる……。
それを知っていたはずなのに。
……そして
約束の明日になっても――トランクスは帰ってこなかった。
その翌日も。さらにその翌日も……。
世界は静かで破壊されたままで。
何度カプセルコーポレーションの庭に出てもタイムマシンは現れなかった。パイはその事実の前に、ただ立ち尽くすしかなかった。
―――――――8章へ続く
曇り空が続いたが、世界はどこか柔らかく見えた。
人造人間の襲撃はなく、爆音も悲鳴もなかった。
パイが胸の奥で密かに願ってしまった「今、襲撃があれば…三つ目の装置を使えるかもしれない、トランクスが過去に行かなくて済むかもしれない」という思いは、叶うことなく過ぎていった。
それが救いなのか、不運なのかは判然としないまま……。
ブルマはほとんど眠らず、目の下にうっすら隈を作りながらタイムマシンの最終点検に没頭していた。
その間、パイとトランクスは過去へ行く準備を進めた。
持っていく荷物を一緒に選んで、一緒に料理をして、ごくたまに目が合うと互いに照れくさそうに微笑みあった。
最後の夜はまた餃子づくりをした。
不器用ながらも野菜を刻み続けるトランクスの後ろ姿を見て、パイはかつての母の調理中の後ろ姿を思い出し、胸の奥にじんわり温かい思いが込み上げてきた。
餃子を一緒に包む時間はやはり楽しかった。
「ほら、やっぱり形ゆがんでる」
「仕方ないだろ、必死なんだよ。そっちだって対して変わらないだろ」
お互いの餃子に厳しい評価を下しあいながらも、恋人同士がじゃれているような穏やかで優しい時間が流れていた。
(……こんな時間が、ずっと続けばいいのに……)
パイの胸に、甘い夢が忍び寄る。
戦いが終わり平和になって、トランクスと一緒に暮らして、台所で並んで料理をして、笑い合って過ごす…。その未来を信じたくなる。
夢は夢でしかないと知っている。それでも、夢を見ずにはいられなかった。
***
そして出発の朝になった。
トランクスはカプセルコーポレーションのジャケットを着てタイムマシンの前に立つ。ブルマが目を赤くしながらも笑顔を作り「気をつけてね」と励ます。
パイもブルマの隣でトランクスを見つめると、しっかり頷いて微笑んだ。
(笑えた。…ちゃんと笑って見送れた…)
けれど、胸の奥では何かがざわざわと激しく揺れていた。ハッチが開き、トランクスが操縦席に乗り込むと振り返る。
その目はまっすぐパイを見ていて――
伝えられなかった言葉が、まだ胸の奥底にあった。それが湧きだしてきた。
(…行かないで)
しかし、喉まで出かかって、その言葉は結局声にならなかった。言ってしまえば、彼の決意を奪ってしまう気がして。
代わりに
「いってらっしゃい」
と伝えた。強く、優しく、彼を励ますように。
その瞬間、心の中が凍り付くようなぞくりとする感覚が押し寄せた。
まるでもう永遠に会えない人を見送っているような……そんな、血の気が引く感覚。
トランクスは力強く頷き、ハッチが閉まる。
低い駆動音が響き、光がまわりの空気を震わせる。
やがて、機体は静かに消えた。
タイムマシンがあった場所にはただ風だけが残された。
パイは拳を握りしめる。怖さをごまかすように、指先に力を込めた。
(大丈夫。明日になったらトランクスは帰って来る。そしたら約束通りその時に伝えればいいんだ。私も好きって。一緒に生きたいって)
今生の別れになるはずはない。だから帰ってきたら気持ちを伝えようと、まるでおまじないみたいに胸の中で自分に言い聞かせ続けた。けれど、悪い予感という名の影が、じわりと広がっていく。
知っていたはずだ。
甘やかな夢の後には、いつも苦くて厳しい現実が待っていることを……。
希望はいつだって無残に打ち砕かれる……。
それを知っていたはずなのに。
……そして
約束の明日になっても――トランクスは帰ってこなかった。
その翌日も。さらにその翌日も……。
世界は静かで破壊されたままで。
何度カプセルコーポレーションの庭に出てもタイムマシンは現れなかった。パイはその事実の前に、ただ立ち尽くすしかなかった。
―――――――8章へ続く