第六章
主人公の名前設定
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突然のトランクスの申し出に、
「私……」
とパイが続けようとした言葉は、途中で途切れた。
パイの喉が小さく動き、視線が揺れる。
トランクスの胸がきしんだ。
彼女がどれほどの痛みを越えて今を生きているかは、わかっていた。
母を失い、兄を失い、それでもようやく過去と折り合いをつけ、新しく仲間と関り、人を助けようと前を向くようになった。
何度も傷つきながら立ち上がって進んできた背中を見てきたからこそ、トランクスはずっと――彼女を過去へ引き戻すようなことは、言えずにいた。
「タイムマシンは2人乗りもできる。一緒に来てくれたら心強いんだ。……どうかな」
トランクスの声は静かだったが、彼の中の切実な願いがにじみ出ていた。
過去の世界に行き、父に会えた喜びに感動していたトランクスは、パイにも悟空に会ってほしいと強く思っていたのだ。それはきっと彼女にとっていいことのはずだ。そう強く信じて……。
パイは一瞬、トランクスと視線を重ねた。
けれど、すぐにうつむいて首を横に振った。
「でもさ……そうしたらさ、この世界には誰もサイヤ人がいなくなっちゃうでしょう。いざって時のために、私が残らないと」
トランクスは彼女がそう言うだろうことは、薄々わかっていた。
けれど、実際にその言葉を聞くと、胸の奥に重く沈むものがある。
パイは、この世界で新たに得た仲間たちのそばを離れたくなかった。頼れるチャンに、元気づけてくれるローズマリー、慕ってくれるライム……。父・悟空に会ってみたい気持ちはあったが、今の世界の仲間たちと共にありたかった。
それに、トランクスに付いて過去に行ったところで自分は戦力にならないことも痛いほどよくわかっていた。
(……私は…私のできることをしたい。それはただトランクスについていくことじゃない)
そして、パイが「うん」と言えない何よりの理由は、タイムマシンに対する不吉な予感――それが彼女の中にあったからだ。
その不安をトランクスに伝えたかったが、過去の世界や父との修行に希望を抱いて目を輝かすトランクスの思いに水を差すようで、パイはうまく説明できずにいた。タイムマシンには触れずに、パイは説得してみることにした。
(…ごめんね。私、ほんとはトランクスに過去に行ってほしくないんだ…)
「あのさ……まだ過去に行かないで…まずはこっちで停止装置の3つ目を試してみることはできない?それまで過去に行くのは保留にしない?」
パイの声は震えていた。
それでも、必死に想いを伝えようとした。
だが、心はすっかり過去の世界に行ってしまっているトランクスには響かない。トランクスの心はすでに決意で満たされていた。それはサイヤ人としての本能……強い父や悟空と修行をしてもっと強くなりたいという戦闘本能にも突き動かされているようにも見えた。
「……戻る時間を翌日にするから。こっちの世界はそんなに空けないで済むはずだ。それにあっちなら父さんや悟空さん、悟飯さんともと修行もできる。だから――」
「……私は、行かない」
パイは戸惑いながらも、トランクスを見つめると自分の意思をはっきりと伝えた。雨の匂いを含んだ冷たい風が、2人の間を抜けた。
トランクスは何かを言いかけて、やめた。
パイも俯いて、足元に広がる水たまりを見つめていた。
沈黙が、痛い。
どちらが悪いわけでもないのに、心の距離がわずかに開いていくのがわかる。
ポツリ。
小さな雨粒が頬に当たった。
空を見上げると、灰色の雲の切れ間からまた小雨が降り出していた。
二人は並んで、しばらく無言で歩いた。
言葉の代わりに、足音と雨音だけが響く。
胸の奥では、それぞれ別の鼓動が鳴っていた。
自分よりも相手のことを思って苦しくなる感情は、もう確かに、愛のかたちをしていた。
互いのことを想っているのに、
想いがすれ違っていく――そんな切なさを抱えたまま。
壊れた街に、雨の匂いが満ちていた。
その香りの中に、失われたはずの、かけがえのない日々の記憶が静かに息づいているような気がした。
手を伸ばせば届きそうなのに――
届かない。
「私……」
とパイが続けようとした言葉は、途中で途切れた。
パイの喉が小さく動き、視線が揺れる。
トランクスの胸がきしんだ。
彼女がどれほどの痛みを越えて今を生きているかは、わかっていた。
母を失い、兄を失い、それでもようやく過去と折り合いをつけ、新しく仲間と関り、人を助けようと前を向くようになった。
何度も傷つきながら立ち上がって進んできた背中を見てきたからこそ、トランクスはずっと――彼女を過去へ引き戻すようなことは、言えずにいた。
「タイムマシンは2人乗りもできる。一緒に来てくれたら心強いんだ。……どうかな」
トランクスの声は静かだったが、彼の中の切実な願いがにじみ出ていた。
過去の世界に行き、父に会えた喜びに感動していたトランクスは、パイにも悟空に会ってほしいと強く思っていたのだ。それはきっと彼女にとっていいことのはずだ。そう強く信じて……。
パイは一瞬、トランクスと視線を重ねた。
けれど、すぐにうつむいて首を横に振った。
「でもさ……そうしたらさ、この世界には誰もサイヤ人がいなくなっちゃうでしょう。いざって時のために、私が残らないと」
トランクスは彼女がそう言うだろうことは、薄々わかっていた。
けれど、実際にその言葉を聞くと、胸の奥に重く沈むものがある。
パイは、この世界で新たに得た仲間たちのそばを離れたくなかった。頼れるチャンに、元気づけてくれるローズマリー、慕ってくれるライム……。父・悟空に会ってみたい気持ちはあったが、今の世界の仲間たちと共にありたかった。
それに、トランクスに付いて過去に行ったところで自分は戦力にならないことも痛いほどよくわかっていた。
(……私は…私のできることをしたい。それはただトランクスについていくことじゃない)
そして、パイが「うん」と言えない何よりの理由は、タイムマシンに対する不吉な予感――それが彼女の中にあったからだ。
その不安をトランクスに伝えたかったが、過去の世界や父との修行に希望を抱いて目を輝かすトランクスの思いに水を差すようで、パイはうまく説明できずにいた。タイムマシンには触れずに、パイは説得してみることにした。
(…ごめんね。私、ほんとはトランクスに過去に行ってほしくないんだ…)
「あのさ……まだ過去に行かないで…まずはこっちで停止装置の3つ目を試してみることはできない?それまで過去に行くのは保留にしない?」
パイの声は震えていた。
それでも、必死に想いを伝えようとした。
だが、心はすっかり過去の世界に行ってしまっているトランクスには響かない。トランクスの心はすでに決意で満たされていた。それはサイヤ人としての本能……強い父や悟空と修行をしてもっと強くなりたいという戦闘本能にも突き動かされているようにも見えた。
「……戻る時間を翌日にするから。こっちの世界はそんなに空けないで済むはずだ。それにあっちなら父さんや悟空さん、悟飯さんともと修行もできる。だから――」
「……私は、行かない」
パイは戸惑いながらも、トランクスを見つめると自分の意思をはっきりと伝えた。雨の匂いを含んだ冷たい風が、2人の間を抜けた。
トランクスは何かを言いかけて、やめた。
パイも俯いて、足元に広がる水たまりを見つめていた。
沈黙が、痛い。
どちらが悪いわけでもないのに、心の距離がわずかに開いていくのがわかる。
ポツリ。
小さな雨粒が頬に当たった。
空を見上げると、灰色の雲の切れ間からまた小雨が降り出していた。
二人は並んで、しばらく無言で歩いた。
言葉の代わりに、足音と雨音だけが響く。
胸の奥では、それぞれ別の鼓動が鳴っていた。
自分よりも相手のことを思って苦しくなる感情は、もう確かに、愛のかたちをしていた。
互いのことを想っているのに、
想いがすれ違っていく――そんな切なさを抱えたまま。
壊れた街に、雨の匂いが満ちていた。
その香りの中に、失われたはずの、かけがえのない日々の記憶が静かに息づいているような気がした。
手を伸ばせば届きそうなのに――
届かない。