第五章
主人公の名前設定
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レジスタンス拠点の部屋の一室。
広げられた地図の上には、いくつもの赤い印がつけられていた。
「ここもダメ。ここも……連絡は途絶えたままだ」
チャンがそう呟いて、マーカーを引く。
「お目当ての精密機器を扱っている工場は、人造人間の襲撃で壊滅状態のところばかりだ。肝心のパーツは、すでに焼け落ちてるか、持ち去られてるだろうな……」
部屋の空気が重く沈むなか、誰かが口を開いた。
「……スラムの闇市に行けば、わずかに残ってる可能性があります」
メンバーたちが顔を上げる。
「正規流通じゃない、盗品や横流し品。スラムに潜むごろつき連中が、そういうブツを握って高額で売買してるって噂です。もちろん、リスクはあるけど……」
スラム──人造人間の攻撃を受けて破壊された街の廃墟を拠点に、掘っ立て小屋やバラックが立ち始め、そこに人が住みつき闇市が生まれる。この世界のいろんな場所にそうしたスラムがあった。その多くは無法地帯と化している。
「そうだな……いくつか心当たりはある。行って話をつけられれば、必要な部品が手に入る可能性はある」
沈黙のあと、パイが一歩前に出た。
「私が行く。任せて」
声はまっすぐだった。だが──。
「……待って」
チャンが低く言う。
「パイ。こういうやり取りは武力だけじゃない。むしろ交渉力が要なんだ。君は……口下手だし、顔に出る。だいぶ不安だよ」
「私だって、会話くらいできる」
むっとしたようにパイが眉を寄せると、チャンは困ったように笑った。
そんな空気を変えたのは、部屋の後ろから聞こえた一声だった。
「なら、私が一緒に行こうか?」
ゆったりと歩み出たのは、ローズマリーだった。
「交渉は得意よ。相手が悪人でも、ごろつきでも、商人でも、男でも女でも、ね」
「武力は?」
「ほとんどなし。でも、あなたがいれば大丈夫なんでしょう?」
ローズマリーはパイを見てにっこりとほほ笑んだ。その微笑みの艶っぽさに、パイは戸惑いながらも力強く頷いた。
「……もちろんよ」
こうして、ふたりの“異色コンビ”が結成されたのだった。
***
建物が崩れ落ちたまま放置された区画。陽の当たらぬ細道には、掘っ立て小屋が並び、スクラップ屋の荷車が行き交い、いろんなルートで運び込まれた商品──おそらくそのほとんどが盗品──が並ぶ闇市が形成されていた。
かつて人々が暮らしていたはずの場所。だが今は、盗品と情報、そして時には暴力が行き交う無法地帯となっていた。
その一角で、男たち相手にローズマリーが交渉している。
屈託ない笑みを浮かべる彼女の前には、筋骨隆々の男たちが数人。見るからに荒くれた風貌だったが、ローズマリーが言葉を紡ぐたび、次第に彼らの目から険しさが抜けていき、どこか会話を楽しむような様子になっていった。
「……姉ちゃん、ただ者じゃねぇな」
「そりゃどうも」
艶のある声と軽妙な間。冗談を交えながら、相手の懐に入るローズマリーのやり口は、まるで踊るようにしなやかで、まったく力みがなかった。
数歩後ろ。わずかな距離を置いて立っていたパイは、その様子をただ見つめていた。
(すごい……)
あっけにとられるとは、こういうことかもしれない。
目の前で交渉が成立していく光景に、パイはただ圧倒されていた。強く押すわけでもなく、媚びるわけでもなく、笑いを織り交ぜながら相手に寄り添い、いつの間にか「話してもいい」という空気を作ってしまう。
それは、パイがこれまで持ち合わせていなかった“力”だった。
「……じゃあ、また明日来るからよろしくね」
立ち去り際にローズマリーが笑顔で手を振ると、ごろつきたちはなぜか照れたように手を上げていた。
「なんだかんだで、あいつら可愛いとこあるのよ」
路地を向けたところで、ローズマリーがぼそりと呟く。
その横で、パイはようやく言葉を絞り出した。
「……さっきの、すごかった」
「ありがと。でも、あんたが後ろに立ってるから強気に出られたのよ」
「え……?」
「本当よ。ちゃんと守ってくれるって思ってたから、ああいう言い方ができたの。ね?」
と、パイに向かってウインクした。パイは、言葉を失ったまま、歩き出したローズマリーの横顔を見つめていた。
「精密機器、手に入れるには数日かかるかもって。とりあえずまた明日行く約束をしたけど、しばらくの間宿はどうする?」
「ブルマさんがポイポイカプセルを持たせてくれたから……。街はずれの方に設置したら問題ないと思う」
パイとローズマリーは精密機器が手に入るまでのしばらくの間、スラムのはずれに滞在することになった。
パイは、少し年上の女性とのつかぬまの共同生活に、不安とも戸惑いともつかぬ思いを抱きながら、小さく息を吐いた。
広げられた地図の上には、いくつもの赤い印がつけられていた。
「ここもダメ。ここも……連絡は途絶えたままだ」
チャンがそう呟いて、マーカーを引く。
「お目当ての精密機器を扱っている工場は、人造人間の襲撃で壊滅状態のところばかりだ。肝心のパーツは、すでに焼け落ちてるか、持ち去られてるだろうな……」
部屋の空気が重く沈むなか、誰かが口を開いた。
「……スラムの闇市に行けば、わずかに残ってる可能性があります」
メンバーたちが顔を上げる。
「正規流通じゃない、盗品や横流し品。スラムに潜むごろつき連中が、そういうブツを握って高額で売買してるって噂です。もちろん、リスクはあるけど……」
スラム──人造人間の攻撃を受けて破壊された街の廃墟を拠点に、掘っ立て小屋やバラックが立ち始め、そこに人が住みつき闇市が生まれる。この世界のいろんな場所にそうしたスラムがあった。その多くは無法地帯と化している。
「そうだな……いくつか心当たりはある。行って話をつけられれば、必要な部品が手に入る可能性はある」
沈黙のあと、パイが一歩前に出た。
「私が行く。任せて」
声はまっすぐだった。だが──。
「……待って」
チャンが低く言う。
「パイ。こういうやり取りは武力だけじゃない。むしろ交渉力が要なんだ。君は……口下手だし、顔に出る。だいぶ不安だよ」
「私だって、会話くらいできる」
むっとしたようにパイが眉を寄せると、チャンは困ったように笑った。
そんな空気を変えたのは、部屋の後ろから聞こえた一声だった。
「なら、私が一緒に行こうか?」
ゆったりと歩み出たのは、ローズマリーだった。
「交渉は得意よ。相手が悪人でも、ごろつきでも、商人でも、男でも女でも、ね」
「武力は?」
「ほとんどなし。でも、あなたがいれば大丈夫なんでしょう?」
ローズマリーはパイを見てにっこりとほほ笑んだ。その微笑みの艶っぽさに、パイは戸惑いながらも力強く頷いた。
「……もちろんよ」
こうして、ふたりの“異色コンビ”が結成されたのだった。
***
建物が崩れ落ちたまま放置された区画。陽の当たらぬ細道には、掘っ立て小屋が並び、スクラップ屋の荷車が行き交い、いろんなルートで運び込まれた商品──おそらくそのほとんどが盗品──が並ぶ闇市が形成されていた。
かつて人々が暮らしていたはずの場所。だが今は、盗品と情報、そして時には暴力が行き交う無法地帯となっていた。
その一角で、男たち相手にローズマリーが交渉している。
屈託ない笑みを浮かべる彼女の前には、筋骨隆々の男たちが数人。見るからに荒くれた風貌だったが、ローズマリーが言葉を紡ぐたび、次第に彼らの目から険しさが抜けていき、どこか会話を楽しむような様子になっていった。
「……姉ちゃん、ただ者じゃねぇな」
「そりゃどうも」
艶のある声と軽妙な間。冗談を交えながら、相手の懐に入るローズマリーのやり口は、まるで踊るようにしなやかで、まったく力みがなかった。
数歩後ろ。わずかな距離を置いて立っていたパイは、その様子をただ見つめていた。
(すごい……)
あっけにとられるとは、こういうことかもしれない。
目の前で交渉が成立していく光景に、パイはただ圧倒されていた。強く押すわけでもなく、媚びるわけでもなく、笑いを織り交ぜながら相手に寄り添い、いつの間にか「話してもいい」という空気を作ってしまう。
それは、パイがこれまで持ち合わせていなかった“力”だった。
「……じゃあ、また明日来るからよろしくね」
立ち去り際にローズマリーが笑顔で手を振ると、ごろつきたちはなぜか照れたように手を上げていた。
「なんだかんだで、あいつら可愛いとこあるのよ」
路地を向けたところで、ローズマリーがぼそりと呟く。
その横で、パイはようやく言葉を絞り出した。
「……さっきの、すごかった」
「ありがと。でも、あんたが後ろに立ってるから強気に出られたのよ」
「え……?」
「本当よ。ちゃんと守ってくれるって思ってたから、ああいう言い方ができたの。ね?」
と、パイに向かってウインクした。パイは、言葉を失ったまま、歩き出したローズマリーの横顔を見つめていた。
「精密機器、手に入れるには数日かかるかもって。とりあえずまた明日行く約束をしたけど、しばらくの間宿はどうする?」
「ブルマさんがポイポイカプセルを持たせてくれたから……。街はずれの方に設置したら問題ないと思う」
パイとローズマリーは精密機器が手に入るまでのしばらくの間、スラムのはずれに滞在することになった。
パイは、少し年上の女性とのつかぬまの共同生活に、不安とも戸惑いともつかぬ思いを抱きながら、小さく息を吐いた。