第三章
主人公の名前設定
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(……何か怒らせるようなこと、したっけ……?)
パイが「モテてよかったね」と吐き捨てるように去ったあと、トランクスはひとり、レジスタンス拠点倉庫の隅にある資材置き場にいた。片付けをしながら、頭の中はあれこれと思いを巡らしていた。
(……それにしてもあの不機嫌な顔、なんだか懐かしかったな)
昔の記憶がよみがえる。
10歳になり、悟飯さんの元で修業をすることになったとき、引き合わせてくれたのが12歳のパイだった。
大きな黒い瞳が印象的で、第一印象は正直「かわいいな」だった。すぐに仲良くなりたいと思った。でも、現実はまるで違った。
「ちょっと、うるさい」
「……邪魔しないでくれる?」
当時のトランクスは、どうにか彼女の気を引こうと、やたらとまとわりついてあれこれ話しかけたり、いいところを見せようとムキになった。けれど結果はすべて空回りで、ことあるごとに怒られ、そっけなくされていた。
(俺もガキだったな……。でも今思えば……悟飯さんを取られたみたいで、面白くなかったんだろうな)
あれこれ言い合いながらも、修行を通して少しずつ打ち解けていった。
(不意に見せる笑顔が、うれしかったんだよな)
ようやく彼女が笑いかけてくれるようになった時は、まるでシャーシャーと威嚇してなつかない子猫が、ふと膝に乗ってきたような──くすぐったくて、胸があたたかくなるようなうれしさに胸がときめいた。
そっけなくされた日々も、今ではどこか甘酸っぱい思い出になっている。
(……それにしても、今度は何に怒ってたんだ?)
そんなことを考えていると、背後から陽気な声が響いた。
「トランクスさーん」
振り返ると、レジスタンスの若い女性三人組──ミント、ローズマリー、セージがにこやかに近づいてきた。
元気な声で呼びかけてきたのは、短い金髪に健康的な肌が映える──ミント。たしか20歳だったか。明るく調子のいい性格で、いつも会話の中心にいるムードメイカー。
「お茶しよ! ちょっと休憩しようと思ってたところなんだけど、トランクスさんもどう?」
そう話すミントの隣には、長い髪をかき上げながらにっこり微笑む、色っぽい女性──ローズマリーがいた。セクシーで姉御肌な雰囲気だが、見た目に反しておおらかで、人懐っこい。
そして、少し離れて控えめに立っていたのが、20代半ばのセージ。長めの髪を後ろでまとめた落ち着いた雰囲気の女性で、誰に対しても穏やかに接する。数年前、夫を人造人間の襲撃で亡くしたと聞いたことがある。
「え、でも……僕なんかがご一緒していいんですか?」
「なにその他人行儀な感じ、ウケる!」とミントが笑い飛ばす。
「休憩ぐらい気楽に付き合ってよ。私たち、あんたとおしゃべりしてみたかったの」とローズマリーも続ける。
場所を移して、給湯設備のある休憩室に入ると、セージが湯気の立つ紅茶を人数分淹れてくれた。陽が傾き始めた外からは、茜色の日差しが差し込んでいた。
紅茶を飲もうとすると、不意にミントが身を乗り出してきた。
「ねえ、トランクスさんって彼女いるの?」
紅茶を飲みかけていた手が止まり、むせかける。
「……えっ? い、いえ。いませんよ」
「かっこいいし、強いし、優しいし。絶対モテるでしょ?……じゃあさ、好きな人がいるの?」
さらりと投げかけられた言葉に、トランクスは、みるみる顔が赤くなった。
「え……あ、えっと……それは……」
うつむいてしどろもどろになるその様子に、ミントが噴き出した。
「あー! やっぱりそうかぁ〜! 誰がタイプか選んでもらおうと思ってたのにさ~」とミントがからかうように言うと、セージが横で苦笑した。
「ちょっと、茶化しすぎよ」
けれどトランクスは、真っ赤な顔のまま、真面目に首を振った。
「そんな……女性を選ぶなんて……俺には、そんな失礼なこと……できません……」
その律儀な答えに、ローズマリーが笑いながら肩をすくめる。
「ほんっと、あんたみたいな色男がピュアで真面目って、なかなかいないよ? いいねぇ、そういうの。……パイさんにフラれたら、私が慰めてあげるから」
「……っ!」
思わず顔を上げて彼女を見るトランクス。なぜパイの名前が出てくる? ローズマリーが、そんな彼の内心を見透かすように言った。
「気づかれないと思ってたの? むしろ気づかない方がおかしいよ」
ミントも笑って頷いた。
「ほんとそれ! めちゃくちゃわかりやすいんだもん。あの子を見てるときだけ、視線がまっすぐすぎるんだよ〜」
トランクスは絶句した。そんなに……隠せていなかったのか。
自分では平静を装っているつもりだった。それでも感情というのは、無意識のうちに滲み出てしまうものらしい。
「でもさ、長年一緒にいる幼馴染なんでしょう?なのに、どうして時々よそよそしかったりするの?」
ふいに、セージが静かな口調で問いかけてきた。
トランクスはしばらく迷ったあと、ぽつりと答えた。
「……彼女の兄が、僕の武道の師匠だったんです。悟飯さんっていう方で。……3人でずっと一緒でした。でも……4年前に彼が亡くなって2人になってから……気持ちが、すれ違うこともあって」
その言葉に、3人の表情が変わった。茶目っ気のあった目元がふっとやわらぎ、静かに、優しく、哀しみを知る者の柔らかいまなざしに変わっていた。
この拠点に集う仲間たちも、みんな誰かを失っている。痛みを知っている。そこから立ち上がることがどれほど難しいかも──。
「そうだったんだね」と、夫を亡くしたセージは穏やかに言った。
ただ同意するだけの一言に、胸の奥がじんと熱くなるのをトランクスは感じた。
悲しみを知る者たちだからこそ、傷口には触れず、そっと寄り添ってくれる。それがどれほどありがたいことか。
その後の会話は自然と、少しずつ明るい話題へと流れていった。
「私ね、昔好きだった人にふられたとき、3日間ラーメンしか食べられなかったんだよね!」と笑うミントに、
「その程度で済んだならマシでしょ。あたしなんか、フラれた腹いせに元彼のバイクにスプレーで『マヌケ』って書いたからね!」と豪快に笑うローズマリー。
セージも「私の夫、最初は最悪の第一印象だったんだよ」と懐かしそうに語った。
トランクスは黙って3人の話に耳を傾けていた。
笑い声がぽつぽつと弾けるなか、トランクスはほんの少しだけ力を抜いて、息をついていた。
パイが「モテてよかったね」と吐き捨てるように去ったあと、トランクスはひとり、レジスタンス拠点倉庫の隅にある資材置き場にいた。片付けをしながら、頭の中はあれこれと思いを巡らしていた。
(……それにしてもあの不機嫌な顔、なんだか懐かしかったな)
昔の記憶がよみがえる。
10歳になり、悟飯さんの元で修業をすることになったとき、引き合わせてくれたのが12歳のパイだった。
大きな黒い瞳が印象的で、第一印象は正直「かわいいな」だった。すぐに仲良くなりたいと思った。でも、現実はまるで違った。
「ちょっと、うるさい」
「……邪魔しないでくれる?」
当時のトランクスは、どうにか彼女の気を引こうと、やたらとまとわりついてあれこれ話しかけたり、いいところを見せようとムキになった。けれど結果はすべて空回りで、ことあるごとに怒られ、そっけなくされていた。
(俺もガキだったな……。でも今思えば……悟飯さんを取られたみたいで、面白くなかったんだろうな)
あれこれ言い合いながらも、修行を通して少しずつ打ち解けていった。
(不意に見せる笑顔が、うれしかったんだよな)
ようやく彼女が笑いかけてくれるようになった時は、まるでシャーシャーと威嚇してなつかない子猫が、ふと膝に乗ってきたような──くすぐったくて、胸があたたかくなるようなうれしさに胸がときめいた。
そっけなくされた日々も、今ではどこか甘酸っぱい思い出になっている。
(……それにしても、今度は何に怒ってたんだ?)
そんなことを考えていると、背後から陽気な声が響いた。
「トランクスさーん」
振り返ると、レジスタンスの若い女性三人組──ミント、ローズマリー、セージがにこやかに近づいてきた。
元気な声で呼びかけてきたのは、短い金髪に健康的な肌が映える──ミント。たしか20歳だったか。明るく調子のいい性格で、いつも会話の中心にいるムードメイカー。
「お茶しよ! ちょっと休憩しようと思ってたところなんだけど、トランクスさんもどう?」
そう話すミントの隣には、長い髪をかき上げながらにっこり微笑む、色っぽい女性──ローズマリーがいた。セクシーで姉御肌な雰囲気だが、見た目に反しておおらかで、人懐っこい。
そして、少し離れて控えめに立っていたのが、20代半ばのセージ。長めの髪を後ろでまとめた落ち着いた雰囲気の女性で、誰に対しても穏やかに接する。数年前、夫を人造人間の襲撃で亡くしたと聞いたことがある。
「え、でも……僕なんかがご一緒していいんですか?」
「なにその他人行儀な感じ、ウケる!」とミントが笑い飛ばす。
「休憩ぐらい気楽に付き合ってよ。私たち、あんたとおしゃべりしてみたかったの」とローズマリーも続ける。
場所を移して、給湯設備のある休憩室に入ると、セージが湯気の立つ紅茶を人数分淹れてくれた。陽が傾き始めた外からは、茜色の日差しが差し込んでいた。
紅茶を飲もうとすると、不意にミントが身を乗り出してきた。
「ねえ、トランクスさんって彼女いるの?」
紅茶を飲みかけていた手が止まり、むせかける。
「……えっ? い、いえ。いませんよ」
「かっこいいし、強いし、優しいし。絶対モテるでしょ?……じゃあさ、好きな人がいるの?」
さらりと投げかけられた言葉に、トランクスは、みるみる顔が赤くなった。
「え……あ、えっと……それは……」
うつむいてしどろもどろになるその様子に、ミントが噴き出した。
「あー! やっぱりそうかぁ〜! 誰がタイプか選んでもらおうと思ってたのにさ~」とミントがからかうように言うと、セージが横で苦笑した。
「ちょっと、茶化しすぎよ」
けれどトランクスは、真っ赤な顔のまま、真面目に首を振った。
「そんな……女性を選ぶなんて……俺には、そんな失礼なこと……できません……」
その律儀な答えに、ローズマリーが笑いながら肩をすくめる。
「ほんっと、あんたみたいな色男がピュアで真面目って、なかなかいないよ? いいねぇ、そういうの。……パイさんにフラれたら、私が慰めてあげるから」
「……っ!」
思わず顔を上げて彼女を見るトランクス。なぜパイの名前が出てくる? ローズマリーが、そんな彼の内心を見透かすように言った。
「気づかれないと思ってたの? むしろ気づかない方がおかしいよ」
ミントも笑って頷いた。
「ほんとそれ! めちゃくちゃわかりやすいんだもん。あの子を見てるときだけ、視線がまっすぐすぎるんだよ〜」
トランクスは絶句した。そんなに……隠せていなかったのか。
自分では平静を装っているつもりだった。それでも感情というのは、無意識のうちに滲み出てしまうものらしい。
「でもさ、長年一緒にいる幼馴染なんでしょう?なのに、どうして時々よそよそしかったりするの?」
ふいに、セージが静かな口調で問いかけてきた。
トランクスはしばらく迷ったあと、ぽつりと答えた。
「……彼女の兄が、僕の武道の師匠だったんです。悟飯さんっていう方で。……3人でずっと一緒でした。でも……4年前に彼が亡くなって2人になってから……気持ちが、すれ違うこともあって」
その言葉に、3人の表情が変わった。茶目っ気のあった目元がふっとやわらぎ、静かに、優しく、哀しみを知る者の柔らかいまなざしに変わっていた。
この拠点に集う仲間たちも、みんな誰かを失っている。痛みを知っている。そこから立ち上がることがどれほど難しいかも──。
「そうだったんだね」と、夫を亡くしたセージは穏やかに言った。
ただ同意するだけの一言に、胸の奥がじんと熱くなるのをトランクスは感じた。
悲しみを知る者たちだからこそ、傷口には触れず、そっと寄り添ってくれる。それがどれほどありがたいことか。
その後の会話は自然と、少しずつ明るい話題へと流れていった。
「私ね、昔好きだった人にふられたとき、3日間ラーメンしか食べられなかったんだよね!」と笑うミントに、
「その程度で済んだならマシでしょ。あたしなんか、フラれた腹いせに元彼のバイクにスプレーで『マヌケ』って書いたからね!」と豪快に笑うローズマリー。
セージも「私の夫、最初は最悪の第一印象だったんだよ」と懐かしそうに語った。
トランクスは黙って3人の話に耳を傾けていた。
笑い声がぽつぽつと弾けるなか、トランクスはほんの少しだけ力を抜いて、息をついていた。