第三章
主人公の名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ブルマさん……今日服、貸してもらってもいい?」
その日の朝、パイに小さな声でそう尋ねられた。目を伏せ、言い慣れないことを言うことに照れているような、どこか気恥ずかしげな表情で……。
「えっ、服? もちろんよ! 貸すんじゃなくてあげるわよ! 好きなのなんでも持っていきなさい!」
ブルマはぱっと顔を輝かせて、弾む声で即答した。長い付き合いの中でも、パイがこんなふうに「服を貸して」と言ったのは初めてだった。
「……今日はちょっと、かわいいのが着たくて……」
ポツリとこぼしたその言葉に、ブルマは胸の奥がじんわりとあたたかくなるのを感じた。
いつもは「衣裳部屋にある私の服、自由に持っていっていいわよ」と声をかけても、パイが選ぶのはシンプルで動きやすい、地味なものばかり。かわいい服に目を留めることなど一度もなかった。
「それなら任せて! 似合いそうなの、いっぱいあるから。選んであげるわ!」
衣裳部屋に案内すると、ずらりと並ぶ服をいくつか取り出してはパイの前にあて、似合いそうなものをどんどん並べていく。その中から、パイは少し迷って──白のノースリーブのブラウスと、淡いインディゴブルーのデニムのショートパンツを選んだ。
試着を終えて、鏡の前に立ったパイの姿を見て、ブルマは目を細める。
「かわいいじゃない!」
「……ほんとに?」
少し照れくさそうにパイが笑う。その表情があまりに新鮮で、ブルマは思わず顔がほころんだ。
「誰かと出かけるの?」
選ばなかった服をクローゼットに戻しつつ、気になっていたことをブルマはさりげなく問いかける。
「……レジスタンスの人と、ちょっと約束があって」
トランクスの名前は出てこなかった。どうやら、今日の“誰か”は、息子ではないらしい──そう気づいて、ブルマは少し肩透かしをくらったような気分になった。
(……もう、トランクスったら何やってるのよ!もたもたしてたらよその男にかっさらわれちゃうじゃない!)
口には出さず、心の中で息子を小さく小突く。
だけどすぐに思い直す。 パイが誰かと出かけようとしている。おしゃれをして、外の空気を吸いに行こうとしている。その事実が、ブルマにはとても嬉しかった。
「ちょっとこっち来て、せっかくだから髪もやってあげる」
椅子に座らされたパイの髪を丁寧に梳かしながら、ブルマはふと、いとおしさに胸を締めつけられた。失われた世界の中で、この子がどれだけ我慢してきたかを知っているから。小さな肩に、強さと孤独が刻まれていることを感じた。
だからこそ、今日は少しでもこの子に新しい風が吹いてほしかった。新しい景色を見て、笑って、ささやかでいいから今を楽しんでほしかった。
ブルマはパイの両サイドの髪を器用に編み込んでいくと、後ろでまとめてアップにした。すっきりと顔と首回りが見えて、かわいらしく上品な仕上がりに満足する。
「よし!できたわよ」
玄関先まで送り出すとき、ブルマは思った。
(着飾って出かける女の子って、どうしてこんなにきらきらして見えるのかしら)
どこかくすぐったそうに笑いながら手を振って外に出ていったパイの姿に、かつての自分の面影が重なった。
あの頃──何もかも不確かで、でも全力で生きていたあの頃の気持ちが、ふいに胸の奥から顔を覗かせて、彼女の心は、あの危うくて懐かしい日々へと還っていた。
その日の朝、パイに小さな声でそう尋ねられた。目を伏せ、言い慣れないことを言うことに照れているような、どこか気恥ずかしげな表情で……。
「えっ、服? もちろんよ! 貸すんじゃなくてあげるわよ! 好きなのなんでも持っていきなさい!」
ブルマはぱっと顔を輝かせて、弾む声で即答した。長い付き合いの中でも、パイがこんなふうに「服を貸して」と言ったのは初めてだった。
「……今日はちょっと、かわいいのが着たくて……」
ポツリとこぼしたその言葉に、ブルマは胸の奥がじんわりとあたたかくなるのを感じた。
いつもは「衣裳部屋にある私の服、自由に持っていっていいわよ」と声をかけても、パイが選ぶのはシンプルで動きやすい、地味なものばかり。かわいい服に目を留めることなど一度もなかった。
「それなら任せて! 似合いそうなの、いっぱいあるから。選んであげるわ!」
衣裳部屋に案内すると、ずらりと並ぶ服をいくつか取り出してはパイの前にあて、似合いそうなものをどんどん並べていく。その中から、パイは少し迷って──白のノースリーブのブラウスと、淡いインディゴブルーのデニムのショートパンツを選んだ。
試着を終えて、鏡の前に立ったパイの姿を見て、ブルマは目を細める。
「かわいいじゃない!」
「……ほんとに?」
少し照れくさそうにパイが笑う。その表情があまりに新鮮で、ブルマは思わず顔がほころんだ。
「誰かと出かけるの?」
選ばなかった服をクローゼットに戻しつつ、気になっていたことをブルマはさりげなく問いかける。
「……レジスタンスの人と、ちょっと約束があって」
トランクスの名前は出てこなかった。どうやら、今日の“誰か”は、息子ではないらしい──そう気づいて、ブルマは少し肩透かしをくらったような気分になった。
(……もう、トランクスったら何やってるのよ!もたもたしてたらよその男にかっさらわれちゃうじゃない!)
口には出さず、心の中で息子を小さく小突く。
だけどすぐに思い直す。 パイが誰かと出かけようとしている。おしゃれをして、外の空気を吸いに行こうとしている。その事実が、ブルマにはとても嬉しかった。
「ちょっとこっち来て、せっかくだから髪もやってあげる」
椅子に座らされたパイの髪を丁寧に梳かしながら、ブルマはふと、いとおしさに胸を締めつけられた。失われた世界の中で、この子がどれだけ我慢してきたかを知っているから。小さな肩に、強さと孤独が刻まれていることを感じた。
だからこそ、今日は少しでもこの子に新しい風が吹いてほしかった。新しい景色を見て、笑って、ささやかでいいから今を楽しんでほしかった。
ブルマはパイの両サイドの髪を器用に編み込んでいくと、後ろでまとめてアップにした。すっきりと顔と首回りが見えて、かわいらしく上品な仕上がりに満足する。
「よし!できたわよ」
玄関先まで送り出すとき、ブルマは思った。
(着飾って出かける女の子って、どうしてこんなにきらきらして見えるのかしら)
どこかくすぐったそうに笑いながら手を振って外に出ていったパイの姿に、かつての自分の面影が重なった。
あの頃──何もかも不確かで、でも全力で生きていたあの頃の気持ちが、ふいに胸の奥から顔を覗かせて、彼女の心は、あの危うくて懐かしい日々へと還っていた。