第二章
主人公の名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
レジスタンス拠点の薄暗い医務室───静まり返った空間に、心電図の電子音が規則正しく響いていた。ベッドに横たわるトランクスの顔は、まだどこか痛々しさを残しているものの、確かにその呼吸は安定していた。
「驚いたな……。彼の体はどうなっているんだ。確かに重症だったけど、もう回復してきているって。驚くほど頑丈なんだな」
チャンが感心したように呟く。
傍らに立っていたパイは、その言葉に少しだけ救われた思いだ。自分の愚かさのせいで、トランクスに大けがをさせたことを激しく後悔していた。そして、あんなそっけない態度を取ったチャンに助けてもらったことも……。
「あの……私……こないだはあんな態度を取ってごめんなさい。助けてくれて、ありがとう」
視線をトランクスからそらし、チャンに向き直ったパイの声はどこかかすれていた。チャンは驚いたように眉を上げたが、すぐに優しく笑った。
「そんなこと気にするなって。人間、生き残るだけでも大変な時代だ」
チャンの安心させるような笑顔に、いつも優しく微笑んで安心させてくれていた兄の顔が重なり、気が付けば思わず「……怖いの…」と自分の感情を吐露していた。
ぽつりと落ちた言葉は、まるで水面に落ちた小石のように、静かに感情の波紋を広げていく。
人造人間と戦えるのは自分たち2人だけだという使命感と、でもそれはとても身に余る重荷だという不安。どんどん強くなっていくトランクスを見て、でも戦いで死んでしまうのではないかという恐怖──いろんな感情がごちゃまぜになり、怖くて、心細くて、さみしくて、パイは心がちぎれてしまいそうだった。
「私の家族も、仲間も、みんな人造人間に奪われてしまった。トランクスは強いけど、強いから戦って人造人間に殺されちゃうかもしれない……。強い人からいつも先に死んじゃうから。こんな風になったのは二度目なの。せめて私がもっと強かったらもう少し助けになれるのに……」
心の内を話し出すと、自分でも驚くほど涙があふれて止まらなかった。まだ二回しか会ったことのないチャンの前でいきなり泣き出すなんて、情緒不安定な人だと思われることだろう。情けない、と思ったが、涙はあふれて止まらず、両手で顔を覆いしゃがみ込んで声を殺して泣いた。
どれくらいそうしていただろうか。
「君は思い詰めすぎてる……」
すぐそばから聞こえたチャンの声に、はっとして顔を上げる。チャンが膝を折り、パイと同じ高さまで腰を落としていた。目の前にある彼の瞳は、真剣で、でも優しさに満ちていた。
「何もかも自分で何とかしようと思い詰めすぎてる……。背負わなくていいんだ、そんなもの」
そう話した後、チャンはしばらく考え込むような顔をして続ける。
「って言っても、何とかしようとするよな……。そりゃ、こんな世の中だからな。俺が言いたかったのは、君は十分やっているし、頼りにならないかもしれないけど少しは手伝わせてほしいってこと」
ぽろぽろとまた涙がこぼれる。けれど、今は少しだけ、肩の力が抜けていた。チャンがふっと息をつき、小さく笑った。
「それにさ、あんまり深刻な顔続けていると君も周りも疲れるだろ。俺なんて、こないだは平気なフリしてたけど、君にそっけなくされてちょっとだけ寿命縮まってたんだから」
思わず、パイの喉から小さな笑い声が漏れた。自分でも驚いたように口元を押さえる。チャンはそれを見て、にっこり笑う。
「よかった。君の笑った顔、ちょっと見たかったんだよな。それにしても泣いたり、笑ったり、ずいぶん感情豊かじゃないか」
パイは涙の名残をぬぐい、しゃがんでいた膝を立て、トランクスのそばの椅子に座りなおした。トランクスの規則正しい寝息が、静かな部屋の中に響いていた。
「……泣くのなんて、久しぶりだった」
ぽつりとつぶやくパイの声は、どこか照れくさそうだけれど、軽やかだった。
「……ま、俺にできることなんて少ないけどさ。泣きたい時は、また泣いていいんだぞ。ここでなら、ちゃんと受け止めるから」
パイは言葉の代わりに、そっと目を伏せてうなずいた。
感情を思い切り吐き出したことで、気持ちが落ち着いてくるのを感じていた。
そして、「仲間が必要だ」と言ったトランクスの言葉が、静かに心に染み込んでいくのを感じていた。今はもう頭だけでなく、心で受け入れられる気がした。
「あの……これ、預かっていて。レジスタンスのみんなに役立ててほしいって」
パイは心を決めたように、ブルマから預かっていた応急処置用の小型医療キットが入ったカプセルをチャンに向かって差し出した。
希望は意外と自分のそばにあったのかもしれない。奪われるばかりの人生だと思っていたが、目の前に差し出されてきた無数の手を振り払って心を閉ざし続けてきたのは自分だ。
(今、一緒にいられる人たちを大事にしよう。私には助けてくれる人たちがいた。一人じゃない。今はそれでいいんだ。きっと……)
静かな夜。闇の向こうにはまだ何も変わらない世界が広がっている。しかし、心の奥のどこかに、小さな明かりが灯った気がした。
「驚いたな……。彼の体はどうなっているんだ。確かに重症だったけど、もう回復してきているって。驚くほど頑丈なんだな」
チャンが感心したように呟く。
傍らに立っていたパイは、その言葉に少しだけ救われた思いだ。自分の愚かさのせいで、トランクスに大けがをさせたことを激しく後悔していた。そして、あんなそっけない態度を取ったチャンに助けてもらったことも……。
「あの……私……こないだはあんな態度を取ってごめんなさい。助けてくれて、ありがとう」
視線をトランクスからそらし、チャンに向き直ったパイの声はどこかかすれていた。チャンは驚いたように眉を上げたが、すぐに優しく笑った。
「そんなこと気にするなって。人間、生き残るだけでも大変な時代だ」
チャンの安心させるような笑顔に、いつも優しく微笑んで安心させてくれていた兄の顔が重なり、気が付けば思わず「……怖いの…」と自分の感情を吐露していた。
ぽつりと落ちた言葉は、まるで水面に落ちた小石のように、静かに感情の波紋を広げていく。
人造人間と戦えるのは自分たち2人だけだという使命感と、でもそれはとても身に余る重荷だという不安。どんどん強くなっていくトランクスを見て、でも戦いで死んでしまうのではないかという恐怖──いろんな感情がごちゃまぜになり、怖くて、心細くて、さみしくて、パイは心がちぎれてしまいそうだった。
「私の家族も、仲間も、みんな人造人間に奪われてしまった。トランクスは強いけど、強いから戦って人造人間に殺されちゃうかもしれない……。強い人からいつも先に死んじゃうから。こんな風になったのは二度目なの。せめて私がもっと強かったらもう少し助けになれるのに……」
心の内を話し出すと、自分でも驚くほど涙があふれて止まらなかった。まだ二回しか会ったことのないチャンの前でいきなり泣き出すなんて、情緒不安定な人だと思われることだろう。情けない、と思ったが、涙はあふれて止まらず、両手で顔を覆いしゃがみ込んで声を殺して泣いた。
どれくらいそうしていただろうか。
「君は思い詰めすぎてる……」
すぐそばから聞こえたチャンの声に、はっとして顔を上げる。チャンが膝を折り、パイと同じ高さまで腰を落としていた。目の前にある彼の瞳は、真剣で、でも優しさに満ちていた。
「何もかも自分で何とかしようと思い詰めすぎてる……。背負わなくていいんだ、そんなもの」
そう話した後、チャンはしばらく考え込むような顔をして続ける。
「って言っても、何とかしようとするよな……。そりゃ、こんな世の中だからな。俺が言いたかったのは、君は十分やっているし、頼りにならないかもしれないけど少しは手伝わせてほしいってこと」
ぽろぽろとまた涙がこぼれる。けれど、今は少しだけ、肩の力が抜けていた。チャンがふっと息をつき、小さく笑った。
「それにさ、あんまり深刻な顔続けていると君も周りも疲れるだろ。俺なんて、こないだは平気なフリしてたけど、君にそっけなくされてちょっとだけ寿命縮まってたんだから」
思わず、パイの喉から小さな笑い声が漏れた。自分でも驚いたように口元を押さえる。チャンはそれを見て、にっこり笑う。
「よかった。君の笑った顔、ちょっと見たかったんだよな。それにしても泣いたり、笑ったり、ずいぶん感情豊かじゃないか」
パイは涙の名残をぬぐい、しゃがんでいた膝を立て、トランクスのそばの椅子に座りなおした。トランクスの規則正しい寝息が、静かな部屋の中に響いていた。
「……泣くのなんて、久しぶりだった」
ぽつりとつぶやくパイの声は、どこか照れくさそうだけれど、軽やかだった。
「……ま、俺にできることなんて少ないけどさ。泣きたい時は、また泣いていいんだぞ。ここでなら、ちゃんと受け止めるから」
パイは言葉の代わりに、そっと目を伏せてうなずいた。
感情を思い切り吐き出したことで、気持ちが落ち着いてくるのを感じていた。
そして、「仲間が必要だ」と言ったトランクスの言葉が、静かに心に染み込んでいくのを感じていた。今はもう頭だけでなく、心で受け入れられる気がした。
「あの……これ、預かっていて。レジスタンスのみんなに役立ててほしいって」
パイは心を決めたように、ブルマから預かっていた応急処置用の小型医療キットが入ったカプセルをチャンに向かって差し出した。
希望は意外と自分のそばにあったのかもしれない。奪われるばかりの人生だと思っていたが、目の前に差し出されてきた無数の手を振り払って心を閉ざし続けてきたのは自分だ。
(今、一緒にいられる人たちを大事にしよう。私には助けてくれる人たちがいた。一人じゃない。今はそれでいいんだ。きっと……)
静かな夜。闇の向こうにはまだ何も変わらない世界が広がっている。しかし、心の奥のどこかに、小さな明かりが灯った気がした。