第二章
主人公の名前設定
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それから一週間後。カプセルコーポレーションの研究室で、パイとブルマは黙々と作業をしていた。
しばらくの間、トランクスはスーパーサイヤ人になっての修行に集中するため、ひとりで山に籠ることになっていた。
パイとトランクスは先日の意見の衝突から少しギクシャクしていたが、長年の息の合った信頼関係は変わっていない。彼が山籠もりをする間、ブルマを残していくのは気がかりだろうとパイはカプセルコーポレーションに滞在することを申し出ていた。寝泊まりしながら、今はブルマの作業の手伝いをしている。
「……静かね。もう!若い娘がどうしたのよ。こっちに来てからずっと元気ないみたいだけど」
黙々と工具をいじっていた手を止め、「……眠れなくて」とパイは小さな声で答えた。
先日の出来事――レジスタンスとの出会い、そしてトランクスとの意見の衝突から、夜ごと頭の中でいろんな思いが渦巻いて気持ちが落ち着かなかった。失ってばかりの人生の中で、自分を守るために築き上げた心の砦――それが、少しずつ揺らいでいる。
わかっていた…トランクスは今を生き、未来を見ている。だからこそ仲間が必要だと言ったのだ。でも自分はまだ過去に囚われている…わかってはいても踏み出せなかった。
「私も…眠れない日はあったわ……。こんな世界だものね。昔はベジータが人造人間との闘いでいなくなった日は、よく眠れなかったのよ。このまま帰ってこないんじゃないかと不安でたまらなくて……その通りになってしまったけどね」
その名を聞いて、パイは少しだけ顔を上げた。ブルマの目には、過去の痛みとそれを抱えたまま生きる強さが宿っていた。
「……あなたたちはほんと良くやっているわよ」
パイは静かにうなずき、ブルマに先日レジスタンスのメンバーと知り合ったこと、そして彼らとの関りを巡ってトランクスと意見が衝突したことをぽつり、ぽつりと話しだした。
「わかっているんです…私が間違っているって。でも…‥怖くて」
「私もね……これ以上失うのが怖くて、誰にも頼らないようにしようと思ったことがあるの。でもね、そんなの悔しいじゃない」
ブルマの声は穏やかだったが、どこかに深く刺さるものがあった。
「悔しい…?」
「人造人間のせいで、いろんなことをあきらめるなんて悔しいじゃない。それは自分を守る術かもしれない。でもね、それって……生きてる自分まで少しずつ削れていくのよ。たとえこんな世界でもね……パイちゃんには好きな場所へ行って、好きな服を着て、好きな人と会って、心は自由に生きてほしいわ」
物心ついたときから人造人間の恐怖に支配されたパイにとって、やりたいことを考えるのは難しいことだった。
それでも、いくつかささやかな願いはあった。伝え聞いた悟空とブルマたちの冒険の旅。パイもまた、世界中を冒険していろんな景色を見てみたかった。その夢はトランクスとよく焚火を囲んで語り合ったのを思い出していた。
服はいつでも戦えるようにTシャツとデニムのシンプルな格好で、時々母の形見の胴着を切るばかりだが、着飾ってみることへの年相応な憧れもあった。
それに、ボーイフレンドだって……心から愛し合える人がいたらそれは素敵なはずだとパイは思う。でもそんな人がいても、失うのは怖すぎた。もう立ち直れないだろうと思ってしまう。
うつむいて聞いているパイの様子を見て、ブルマはふっと表情を緩めておどけるように話す。
「私だって楽しく生きることをあきらめていないんだから。今は機械に全力投球しているけどね。また素敵な人と出会ったら恋だってするかもしれないわよ。私の“夫”はあの人だけだけどね……」
(ブルマさん‥‥…強い人。これから私が誰かを心から愛して、その人をまた失ったとしたら、私はブルマさんみたいに強くいられるんだろうか)
ブルマの言う通りに前向きに生きて人と関われるかは正直わからない。しかし、ブルマの言葉はパイを心配して心から励ましてくれているものだと痛いほど伝わってきて、パイの胸の奥がじんわり熱くなる。
ブルマは机の上にあったカプセルを手に取った。中には、応急処置用の小型医療キットが入っていた。
「これ、用意したんだけど、レジスタンスの人達にも必要なんじゃない。よかったらあなたが渡してくれる?」
「……なんで、私が」
「あなたはもっと人と会わなくちゃ」
そう言って、ブルマは笑った。優しく、でも見透かすように。
パイは視線を落として、そっとそのカプセルを受け取った。
しばらくの間、トランクスはスーパーサイヤ人になっての修行に集中するため、ひとりで山に籠ることになっていた。
パイとトランクスは先日の意見の衝突から少しギクシャクしていたが、長年の息の合った信頼関係は変わっていない。彼が山籠もりをする間、ブルマを残していくのは気がかりだろうとパイはカプセルコーポレーションに滞在することを申し出ていた。寝泊まりしながら、今はブルマの作業の手伝いをしている。
「……静かね。もう!若い娘がどうしたのよ。こっちに来てからずっと元気ないみたいだけど」
黙々と工具をいじっていた手を止め、「……眠れなくて」とパイは小さな声で答えた。
先日の出来事――レジスタンスとの出会い、そしてトランクスとの意見の衝突から、夜ごと頭の中でいろんな思いが渦巻いて気持ちが落ち着かなかった。失ってばかりの人生の中で、自分を守るために築き上げた心の砦――それが、少しずつ揺らいでいる。
わかっていた…トランクスは今を生き、未来を見ている。だからこそ仲間が必要だと言ったのだ。でも自分はまだ過去に囚われている…わかってはいても踏み出せなかった。
「私も…眠れない日はあったわ……。こんな世界だものね。昔はベジータが人造人間との闘いでいなくなった日は、よく眠れなかったのよ。このまま帰ってこないんじゃないかと不安でたまらなくて……その通りになってしまったけどね」
その名を聞いて、パイは少しだけ顔を上げた。ブルマの目には、過去の痛みとそれを抱えたまま生きる強さが宿っていた。
「……あなたたちはほんと良くやっているわよ」
パイは静かにうなずき、ブルマに先日レジスタンスのメンバーと知り合ったこと、そして彼らとの関りを巡ってトランクスと意見が衝突したことをぽつり、ぽつりと話しだした。
「わかっているんです…私が間違っているって。でも…‥怖くて」
「私もね……これ以上失うのが怖くて、誰にも頼らないようにしようと思ったことがあるの。でもね、そんなの悔しいじゃない」
ブルマの声は穏やかだったが、どこかに深く刺さるものがあった。
「悔しい…?」
「人造人間のせいで、いろんなことをあきらめるなんて悔しいじゃない。それは自分を守る術かもしれない。でもね、それって……生きてる自分まで少しずつ削れていくのよ。たとえこんな世界でもね……パイちゃんには好きな場所へ行って、好きな服を着て、好きな人と会って、心は自由に生きてほしいわ」
物心ついたときから人造人間の恐怖に支配されたパイにとって、やりたいことを考えるのは難しいことだった。
それでも、いくつかささやかな願いはあった。伝え聞いた悟空とブルマたちの冒険の旅。パイもまた、世界中を冒険していろんな景色を見てみたかった。その夢はトランクスとよく焚火を囲んで語り合ったのを思い出していた。
服はいつでも戦えるようにTシャツとデニムのシンプルな格好で、時々母の形見の胴着を切るばかりだが、着飾ってみることへの年相応な憧れもあった。
それに、ボーイフレンドだって……心から愛し合える人がいたらそれは素敵なはずだとパイは思う。でもそんな人がいても、失うのは怖すぎた。もう立ち直れないだろうと思ってしまう。
うつむいて聞いているパイの様子を見て、ブルマはふっと表情を緩めておどけるように話す。
「私だって楽しく生きることをあきらめていないんだから。今は機械に全力投球しているけどね。また素敵な人と出会ったら恋だってするかもしれないわよ。私の“夫”はあの人だけだけどね……」
(ブルマさん‥‥…強い人。これから私が誰かを心から愛して、その人をまた失ったとしたら、私はブルマさんみたいに強くいられるんだろうか)
ブルマの言う通りに前向きに生きて人と関われるかは正直わからない。しかし、ブルマの言葉はパイを心配して心から励ましてくれているものだと痛いほど伝わってきて、パイの胸の奥がじんわり熱くなる。
ブルマは机の上にあったカプセルを手に取った。中には、応急処置用の小型医療キットが入っていた。
「これ、用意したんだけど、レジスタンスの人達にも必要なんじゃない。よかったらあなたが渡してくれる?」
「……なんで、私が」
「あなたはもっと人と会わなくちゃ」
そう言って、ブルマは笑った。優しく、でも見透かすように。
パイは視線を落として、そっとそのカプセルを受け取った。