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brother.──プロローグ(1〜終)

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brother.6


少女から反撃がくるなど思いもしない少年は、呆けたまま前のめりになった。

名前は、その顔面に勢いよく拳を突き出した。対処する間もなく、鼻先を押しつぶさんばかりに拳は肌を撫ぜ、鈍い音が響く。


『……ワォ』


恭弥はその場を目の当たりにしていた。


少年は自分が何をされたか理解するよりも先に、鼻血を出しながら大声をあげて泣いていた。子の声を聞きつけた母親が、子の状況を見るなり名前に罵声を浴びせて喚いた。

他の大人たちは、名前がそれまでの経緯をぽつりぽつり話すと、元々少年が煽ったことが原因だということが分かり、それ以上名前が責められることはなかった。


 -

「あの時殴ったヤツが、はらいせに隙をみて君のカバンから奪って、池に腕輪を捨てた」


あの時気付けなかった真実に、息を呑んだ。
いや正確には、薄々気付いていたのかもしれない。


自分が殴った少年が、腕輪を奪ったのかもしれない、と。


しかし、実物の腕輪はない。奪ったところを目撃していなくて、証拠もない。そんな状態で、彼の親や周囲の親戚の誰が自分の話しを信じてくれるだろうか?そう思って、可能性自体無視していたんだ。


「やっぱり、そうだったんですね。……ぁ、っ…すいません、

…ッ………なんて、お礼をいえば、……いいのか。


母の形見を、……ありがとうございます」



名前は、涙をこぼしながら恭弥に頭を下げた。



「……さっきまでの失礼を、どうか許してください」

「…………顔、あげれば」


恭弥は少しバツが悪そうに、そっぽを向いた。
予想外に感謝されたためか、少し照れてるようにも見えた。気がした。


「……勘違いしないでほしいんだけど」

「はい」


「そもそも、僕は自分のやるべき事をやっただけ。

弱い同士群れて、それで自分が強いと思い込んでいるヤツらに限って卑怯な行為にはしって悦に入る。

そういうヤツを見ると、虫唾が走るから咬み殺す。それだけ」


「はぁ……」


今日で一番長く、恭弥の声を聞いた気がした。
言葉の最後の方がやや早口なのは……やはり照れ隠しだろうか。


(さっき、私を貶したのも……私を奮いたたせて、本音を聞きだすため?……本当は優しい人かも)


名前は恭弥のことが『映画でみるようなダークヒーロー』のようにも思えた。味方に憎まれ口を叩きつつも、裏では正義の行いをしている……本当はそんな人かも。と


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