brother.──プロローグ(1〜終)
名前変換
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brother.5
名前は、全て言ってしまってから、はっと気付く。
目の前に立ち、並々ならぬ空気を醸し出す恭弥に。
顔から血の気が引く。刺すような眼光に、胸が苦しくなる。でも全てが遅い。言ったことは、取り消せない。
恭弥が右手をあげるのが見えた。
平手か、殴られるか
顔を背けようとするが、予想に反して、恭弥はあげた手で名前の手首を強い力で掴むとぐいっと身体を引き寄せる。
額がヒリヒリするような距離まで顔を近づけ、"背くことの許されない絶対的な"視線で名前を射貫くと、頭蓋を揺さぶるテノールで言った。
「孤独を知らない?──どうでもいいよ
でも。君に何が欠けてるのか、僕が教えてあげる」
寂寥の涙がこぼれ、掴まれて熱をもった腕を冷たく濡らす。
「教、える?」
「うん」
恭弥は、どこからか取り出した"それ"をおもむろに、掴んだ手に通した。
「!……あ、……嘘」
「……うそ、……これ……ッ……」
──カチッ、と金具のはまる音。
恭弥が名前の腕にはめた"それ"は……あの日の、銀の腕輪だった。
「……ッ…お母さんの、腕輪!」
「そう。君の母親の」
「なんで、どうして……っ?恭弥さんがこれを」
自由になった手首。少し重くなった場所に触れると、ひやりとした硬質な金属が名前のなかで一層存在感を増す。
冷たいのに驚くほど腕に馴染むそれは、失くしていた腕輪が紛れもなく自分の身体の一部であることを主張していた。
母を想うあまりにあの日から欠けていた己の一部が補われたような気がして、また涙がこぼれる。
「……ッ……」
「あの日、君は親戚の群れてる悪ガキ共にからかわれていたよね」
「……は、い」
(池の側で、泣いてた時だ。恭弥さんが、行ってしまったあと、絡まれて……)
「その時に、君は自分の母親のことを悪く言われて、
悪ガキのうちの一人を殴ったでしょ」
「……見てたん、ですか」
-
『おい!オレのかーさんが、おまえのこと"お荷物だ"っていってたぞ』
『呪いがうつるから、うちにはくんな!』
自分のことを言われるなんて、なんてことなかった。
『お前の母親、水吐く病気だったんだろ』
『死ぬ時とか、ミイラみたいだったって聞いたぞ』
『──ッ!!』
母のことを言われた瞬間、目の前がカッと熱くなった。
『おい、なんとかいえよ』
『……』
名前は無言で、ゆらりと少年らの前へ立つと、突然中心核である少年の胸ぐらを掴んで引きよせた。
『、え?』
名前は、全て言ってしまってから、はっと気付く。
目の前に立ち、並々ならぬ空気を醸し出す恭弥に。
顔から血の気が引く。刺すような眼光に、胸が苦しくなる。でも全てが遅い。言ったことは、取り消せない。
恭弥が右手をあげるのが見えた。
平手か、殴られるか
顔を背けようとするが、予想に反して、恭弥はあげた手で名前の手首を強い力で掴むとぐいっと身体を引き寄せる。
額がヒリヒリするような距離まで顔を近づけ、"背くことの許されない絶対的な"視線で名前を射貫くと、頭蓋を揺さぶるテノールで言った。
「孤独を知らない?──どうでもいいよ
でも。君に何が欠けてるのか、僕が教えてあげる」
寂寥の涙がこぼれ、掴まれて熱をもった腕を冷たく濡らす。
「教、える?」
「うん」
恭弥は、どこからか取り出した"それ"をおもむろに、掴んだ手に通した。
「!……あ、……嘘」
「……うそ、……これ……ッ……」
──カチッ、と金具のはまる音。
恭弥が名前の腕にはめた"それ"は……あの日の、銀の腕輪だった。
「……ッ…お母さんの、腕輪!」
「そう。君の母親の」
「なんで、どうして……っ?恭弥さんがこれを」
自由になった手首。少し重くなった場所に触れると、ひやりとした硬質な金属が名前のなかで一層存在感を増す。
冷たいのに驚くほど腕に馴染むそれは、失くしていた腕輪が紛れもなく自分の身体の一部であることを主張していた。
母を想うあまりにあの日から欠けていた己の一部が補われたような気がして、また涙がこぼれる。
「……ッ……」
「あの日、君は親戚の群れてる悪ガキ共にからかわれていたよね」
「……は、い」
(池の側で、泣いてた時だ。恭弥さんが、行ってしまったあと、絡まれて……)
「その時に、君は自分の母親のことを悪く言われて、
悪ガキのうちの一人を殴ったでしょ」
「……見てたん、ですか」
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『おい!オレのかーさんが、おまえのこと"お荷物だ"っていってたぞ』
『呪いがうつるから、うちにはくんな!』
自分のことを言われるなんて、なんてことなかった。
『お前の母親、水吐く病気だったんだろ』
『死ぬ時とか、ミイラみたいだったって聞いたぞ』
『──ッ!!』
母のことを言われた瞬間、目の前がカッと熱くなった。
『おい、なんとかいえよ』
『……』
名前は無言で、ゆらりと少年らの前へ立つと、突然中心核である少年の胸ぐらを掴んで引きよせた。
『、え?』