日常編(1〜)
名前変換
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14.side-g
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いけ好かない女だ、と思った。
名前だけ聞き出せれば、それで要は済むというのにだ。この女の態度は終始棘棘として……一体何を渋ってるのか?俺の聞き方に何か不都合でもあるというのか。
(いや、待て。イラつくな怒るな……抑えろ俺。十代目の為だ。)
『その人、随分弱虫なのね』
その一言が、獄寺に火をつけた。
「……ッ果たすぞコラ」
儚い辛抱であった。
「やれるものなら、やってみなさいよ?」
この女、俺と闘りあえる気でいるのか?
頭に血が上り、うっかり馴染みのボムに手を伸ばしたところで、はっと冷静になる。
眼前で仁王立ちするこの女の、どこからそんな自信が湧くのかは知らないが、男なら容赦知らず……女なら加減がきかず殺っちまいかねない。
十代目はそんなことお望みじゃないだろう。勿論俺自身も。
思い出すだけでもムカつくが……自分が師と仰ぐ、アイツも。
「……〜〜ッあーー!!クソ…」
折れたのは、獄寺だ。
「!?」
己の頭をぐしゃぐしゃとかきむしり、女がぴくっと肩を揺らすのも構わず、声を張り上げた。
「……獄、寺、隼、人」
こめかみに青筋を立つのを堪えて、頬を引きつらせながら言い放つ。
「それが、さる御方 の名前?」
「俺の名前、だ!」
「……ッ…」
それを聞いた彼女は、それまで貫いていた冷徹な表情を崩し、弓張りの形のよい瞳をまんまるくして、少女のようにぽかんと口を開けて黙った。
「……、…っ…ふ」
彼女は顔を伏せて、堪えきれないとばかりに笑い出す。
「おい!笑うんじゃねぇ、俺はッ……!」
「だって……だって。貴方、可笑し……ふふ」
礼儀だと思い、こちらから名乗ってやったというのに。
急に自分の行いが恥ずかしくなり、顔に血が集中する。弁解しようとするが、後の祭りだ。
ひとしきり笑った彼女は、顔を上げる。
『…変な人』
「……!」
前髪からのぞく鮮烈な笑みが、なぜか印象的だった。
彼女を取り巻く空気はすっかり軟化して、それまでの刺々しさが嘘のようだ。
「さる御方 、によろしくね。……獄、寺、隼、人 」
彼女はくるりと、眩しい昼の光に充てられて鮮やかに照る髪を翻して、その場を立ち去ろうとする。
「あっ!おい、待ちやがれッ……!!」
獄寺の静止も聞かず、わざわざ腕を掴んで引き留めるのもはばかられて、小さな背中が消えるまでその場に立ち尽くした。
「いや、テメェの名前聞いてねーし……」
こぼした言葉は、みじかくなったタバコと共にポロリと地面に落ちた。
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いけ好かない女だ、と思った。
名前だけ聞き出せれば、それで要は済むというのにだ。この女の態度は終始棘棘として……一体何を渋ってるのか?俺の聞き方に何か不都合でもあるというのか。
(いや、待て。イラつくな怒るな……抑えろ俺。十代目の為だ。)
『その人、随分弱虫なのね』
その一言が、獄寺に火をつけた。
「……ッ果たすぞコラ」
儚い辛抱であった。
「やれるものなら、やってみなさいよ?」
この女、俺と闘りあえる気でいるのか?
頭に血が上り、うっかり馴染みのボムに手を伸ばしたところで、はっと冷静になる。
眼前で仁王立ちするこの女の、どこからそんな自信が湧くのかは知らないが、男なら容赦知らず……女なら加減がきかず殺っちまいかねない。
十代目はそんなことお望みじゃないだろう。勿論俺自身も。
思い出すだけでもムカつくが……自分が師と仰ぐ、アイツも。
「……〜〜ッあーー!!クソ…」
折れたのは、獄寺だ。
「!?」
己の頭をぐしゃぐしゃとかきむしり、女がぴくっと肩を揺らすのも構わず、声を張り上げた。
「……獄、寺、隼、人」
こめかみに青筋を立つのを堪えて、頬を引きつらせながら言い放つ。
「それが、
「俺の名前、だ!」
「……ッ…」
それを聞いた彼女は、それまで貫いていた冷徹な表情を崩し、弓張りの形のよい瞳をまんまるくして、少女のようにぽかんと口を開けて黙った。
「……、…っ…ふ」
彼女は顔を伏せて、堪えきれないとばかりに笑い出す。
「おい!笑うんじゃねぇ、俺はッ……!」
「だって……だって。貴方、可笑し……ふふ」
礼儀だと思い、こちらから名乗ってやったというのに。
急に自分の行いが恥ずかしくなり、顔に血が集中する。弁解しようとするが、後の祭りだ。
ひとしきり笑った彼女は、顔を上げる。
『…変な人』
「……!」
前髪からのぞく鮮烈な笑みが、なぜか印象的だった。
彼女を取り巻く空気はすっかり軟化して、それまでの刺々しさが嘘のようだ。
「
彼女はくるりと、眩しい昼の光に充てられて鮮やかに照る髪を翻して、その場を立ち去ろうとする。
「あっ!おい、待ちやがれッ……!!」
獄寺の静止も聞かず、わざわざ腕を掴んで引き留めるのもはばかられて、小さな背中が消えるまでその場に立ち尽くした。
「いや、テメェの名前聞いてねーし……」
こぼした言葉は、みじかくなったタバコと共にポロリと地面に落ちた。
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