日常編(1〜)
名前変換
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6.梅雨の終わり.終
夕食の後、名前が鞄から出したのは、来週学校へ提出する“校外学習の同意書”。保護者である夫妻に書いてもらう必要があったが、名前はそれを言い渋っていた。
「こんなの、勝手に名前書いて提出すればいい」
「出来ないわ」
夫妻とは打ち解けているが、何処か心の奥で一線引いて遠慮している自分がいるのかもしれない。
「貸して」
「えっ」
名前から書類を取り上げ、その辺に置いていたボールペンでさらさらと記入する。名前へと突き返された書類には流麗な文字で──< 保護者: 雲雀 恭弥 >
「保護者……何か、恥ずかしい」
「早く言い出さない君が悪い」
「"印"のところに、ハンコ」
「僕の名前が書いてあるのに?必要ない。そのまま出せばいい」
「……わかった。ありがと」
確かに、教員の誰が「捺印が無いと、不備にあたる」なんて命知らずなことを雲雀恭弥に言えるだろう。
無茶苦茶だが、元はといえば自分の変な遠慮が招いた事だ。兄なりにこっちの心境を配慮して、自分の名前で書いたのだろう。そう思って素直に感謝した。
「でも…兄さんなら、校外学習なんか行くなって言うと思ってたわ」
「そもそも僕には必要ないし興味もない。名前は、出席に入るのなら好きにすれば?」
「…お言葉に甘えさせて頂きます」
-
話は終わり。そう思い、居間を去ろうとした。
「あ、兄さん」
名前が再び話を振ってくる。
「最近、忙しいの?」
「大した事ない」
返しがやや食い気味になる。図星なのだ。
「学校で最近、爆発とか変人がでたとか、色々面倒事増えてるんでしょ。何か、出来ることないかと思って」
「君に任せられる仕事はないよ」
「、そう…」
目に見えて、肩を落とす名前。
(…仕方ない)
「…………後で茶でも入れて、部屋に来れば」
「!…うんっ」
何をそんなに嬉しいものか。しかし彼女のほころぶ顔を見て安堵する自分が居る。
(全く、振り回しているのはどっちだ)
(ペースを乱されるのは性分じゃない、って昔から言ってるんだけど?…彼女が無自覚だというなら、部屋に来た時に、僕が仕事を終えるまで椅子にでもなってもらおう)
-
「…で、どうしてこんな…状況に?」
「変な遠慮をした罰。僕のペースを乱した罰」
優雅に茶を啜る恭弥。
「え、ペース?……、ぐぅ」
(変な心配、するんじゃなかった)
四つん這いで背中に尋常でない重力を感じながら、脚の感覚が失せて痺れるのを噛み締める……そんな、梅雨の終わりだ。
夕食の後、名前が鞄から出したのは、来週学校へ提出する“校外学習の同意書”。保護者である夫妻に書いてもらう必要があったが、名前はそれを言い渋っていた。
「こんなの、勝手に名前書いて提出すればいい」
「出来ないわ」
夫妻とは打ち解けているが、何処か心の奥で一線引いて遠慮している自分がいるのかもしれない。
「貸して」
「えっ」
名前から書類を取り上げ、その辺に置いていたボールペンでさらさらと記入する。名前へと突き返された書類には流麗な文字で──< 保護者: 雲雀 恭弥 >
「保護者……何か、恥ずかしい」
「早く言い出さない君が悪い」
「"印"のところに、ハンコ」
「僕の名前が書いてあるのに?必要ない。そのまま出せばいい」
「……わかった。ありがと」
確かに、教員の誰が「捺印が無いと、不備にあたる」なんて命知らずなことを雲雀恭弥に言えるだろう。
無茶苦茶だが、元はといえば自分の変な遠慮が招いた事だ。兄なりにこっちの心境を配慮して、自分の名前で書いたのだろう。そう思って素直に感謝した。
「でも…兄さんなら、校外学習なんか行くなって言うと思ってたわ」
「そもそも僕には必要ないし興味もない。名前は、出席に入るのなら好きにすれば?」
「…お言葉に甘えさせて頂きます」
-
話は終わり。そう思い、居間を去ろうとした。
「あ、兄さん」
名前が再び話を振ってくる。
「最近、忙しいの?」
「大した事ない」
返しがやや食い気味になる。図星なのだ。
「学校で最近、爆発とか変人がでたとか、色々面倒事増えてるんでしょ。何か、出来ることないかと思って」
「君に任せられる仕事はないよ」
「、そう…」
目に見えて、肩を落とす名前。
(…仕方ない)
「…………後で茶でも入れて、部屋に来れば」
「!…うんっ」
何をそんなに嬉しいものか。しかし彼女のほころぶ顔を見て安堵する自分が居る。
(全く、振り回しているのはどっちだ)
(ペースを乱されるのは性分じゃない、って昔から言ってるんだけど?…彼女が無自覚だというなら、部屋に来た時に、僕が仕事を終えるまで椅子にでもなってもらおう)
-
「…で、どうしてこんな…状況に?」
「変な遠慮をした罰。僕のペースを乱した罰」
優雅に茶を啜る恭弥。
「え、ペース?……、ぐぅ」
(変な心配、するんじゃなかった)
四つん這いで背中に尋常でない重力を感じながら、脚の感覚が失せて痺れるのを噛み締める……そんな、梅雨の終わりだ。