日常編(1〜)
名前変換
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4.梅雨の終わり
「……先生は元々、うちのかかりつけ医だった訳ではなく、母の"仕事関係"で"たまたま"縁があっただけだと聞いています。普段はイタリアで、お仕事をされていることも」
だから謝られる義理はない。そう言いたかった。
「それでもだ。あの時、既にこの薬は完成していた。もう少し日本に来るのが早けりゃ」
「それでもです!貴方が謝る必要はないと言っています……!」
「名前」
「母は、若い頃から酷い脱水や目眩の症状に苦しんでいたと聞いています。私がそうならずに済んでいるのは…母が先生に繋いでくれたから。先生が私を診てくれるから。でなきゃ今の私は居ない……そうでしょ?」
人を安心させるような笑みを浮かべる彼女。
普段は棘ましましな彼女に、こうも赤裸々な感謝を述べられては……男シャマルは引き下がる他無い。
「かなわねえなぁ」
そう言って頭を掻き、まぁ何かあったら連絡してくれよ。と言い残して去っていく背中を、名前は見つめていた。
-
──彼女は、母親の本当の職業を知らない。
国際空港へ向かう帰りの新幹線の中で、シャマルは母を亡くした少女を想う。
彼女は母親が、奇病の治療法を研究する偉大な研究者だと思っている。
確かに表向きは、それで合ってる。
……彼女が真実を知ってしまう日が、いつかくるだろうか?その日が永遠に来ないと良いが。そう願うも、先程の治療で彼女の左腕を見た時に、その願いは叶わないと確信してしまった。
袖の下に隠すように嵌められていた、銀の腕輪。その腕輪に刻まれたアラベスク調の紋様が現すのは……うねる水流と、貝。その紋様こそが、これから彼女が巻き込まれる、避けて通れない運命を暗示しているように思えてならない。
それが、シャマルが名前を放っておけない理由の一つだ。
「…たく。不意打ちでああいう笑顔を向けんのは、好きな男だけにしとけよ?」
素直じゃないとこも含め、放っておけない少女だ。
「素直になれないヤツなら、もう一人知ってるがな」
(名前も心配だが……"アイツ"も。余り俺に世話やかせんなよ)
自分の弟分である男は、もう日本に来ているみたいだ。わざわざ顔を見にいってやる必要もないだろう。
<次は──国際空港…次は…>新幹線のアナウンスが告げる。
──さて。空港へついたら、イタリアへ残してきたカワイ子ちゃん達への土産漁りにでもいくか。ボンゴレの十代目関係で、近いうちにまた会うだろうが…
ま。お前らもそれまで元気にやれよ。
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「……先生は元々、うちのかかりつけ医だった訳ではなく、母の"仕事関係"で"たまたま"縁があっただけだと聞いています。普段はイタリアで、お仕事をされていることも」
だから謝られる義理はない。そう言いたかった。
「それでもだ。あの時、既にこの薬は完成していた。もう少し日本に来るのが早けりゃ」
「それでもです!貴方が謝る必要はないと言っています……!」
「名前」
「母は、若い頃から酷い脱水や目眩の症状に苦しんでいたと聞いています。私がそうならずに済んでいるのは…母が先生に繋いでくれたから。先生が私を診てくれるから。でなきゃ今の私は居ない……そうでしょ?」
人を安心させるような笑みを浮かべる彼女。
普段は棘ましましな彼女に、こうも赤裸々な感謝を述べられては……男シャマルは引き下がる他無い。
「かなわねえなぁ」
そう言って頭を掻き、まぁ何かあったら連絡してくれよ。と言い残して去っていく背中を、名前は見つめていた。
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──彼女は、母親の本当の職業を知らない。
国際空港へ向かう帰りの新幹線の中で、シャマルは母を亡くした少女を想う。
彼女は母親が、奇病の治療法を研究する偉大な研究者だと思っている。
確かに表向きは、それで合ってる。
……彼女が真実を知ってしまう日が、いつかくるだろうか?その日が永遠に来ないと良いが。そう願うも、先程の治療で彼女の左腕を見た時に、その願いは叶わないと確信してしまった。
袖の下に隠すように嵌められていた、銀の腕輪。その腕輪に刻まれたアラベスク調の紋様が現すのは……うねる水流と、貝。その紋様こそが、これから彼女が巻き込まれる、避けて通れない運命を暗示しているように思えてならない。
それが、シャマルが名前を放っておけない理由の一つだ。
「…たく。不意打ちでああいう笑顔を向けんのは、好きな男だけにしとけよ?」
素直じゃないとこも含め、放っておけない少女だ。
「素直になれないヤツなら、もう一人知ってるがな」
(名前も心配だが……"アイツ"も。余り俺に世話やかせんなよ)
自分の弟分である男は、もう日本に来ているみたいだ。わざわざ顔を見にいってやる必要もないだろう。
<次は──国際空港…次は…>新幹線のアナウンスが告げる。
──さて。空港へついたら、イタリアへ残してきたカワイ子ちゃん達への土産漁りにでもいくか。ボンゴレの十代目関係で、近いうちにまた会うだろうが…
ま。お前らもそれまで元気にやれよ。
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