日常編(1〜)
名前変換
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3.梅雨の終わり
「ま。とりあえずいつもの、な」
茶番もそこそこにして、シャマルはやっと真面目に検診を行う気になったのか持ち歩いているアタッシュケースを漁り、器具を幾つかと金属製のケースを取り出す。
慣れた手つきで名前の首筋から顎にかけてを手で撫でて腫れがあるか見たり、口を開けさせて喉の奥を確認する。続いて、服の前からだと名前が嫌がるので、背中から聴診器をあてて心音を聞くなどした。一通り済んでから、名前がたずねる。
「前から思っていたのですけど…これって、普通の病院の検診と変わらないですよね?この検診に何の意味が?」
「…あー、そうだな…」
「私の症状は一般の"それ"とは違うのですから、必要ないのでは?」
「よし、正直に白状しよう。俺が名前ちゃんとお医者さんごっこしたいだけンッ!!?名前ちゃん待てッタイムタイム!聴診器は人の首を締めるのに使うものじゃねぇよ!?」
「医師免許はセクハラする為に使うものなの?……真面目になさい」
「わかったわかった。ったく、名前ちゃんが可愛いんだもんよ」
からかうのは男のさが…などと呟きながらも観念した様子で、置いてあった金属製のケースを開くと、中から"小さなカプセル"を一つ取り出して椎南に見せた。
「胸元を開けてくれ」
「胸である必要性が?」
「……左腕でいい」
「……」
名前は白衣の袖をまくり、素直に腕を差し出す。
シャマルが右手で弾いたカプセルがポンと音を立てて開き、中から目視するのがやっとな小さい羽虫が姿を現す。羽虫は旋回し、やがて目の前の白い腕に留まると口針を突き立てて血を吸った。
名前はその様子を見つめる。何度見ても、不思議な光景だ。
「…変わっちまったよなぁ」
「何の話」
「4,5年前は俺のこと、シャマルせんせぇ、シャマルせんせぇーって素直~な子でよ。今じゃすっかり反抗期でおじさん悲し…」
「!…ちゃんと感謝は、していますよ。……母の代から」
「あー…そ、ね」
何故か少し言葉を濁すシャマル。そのタイミングで、吸血を終えた蚊が腕から飛び去る。
「はいよ、終わりだぜ。これで暫くは、脱水や発熱に苦しむこともないだろ。"いつもの薬"は、この封筒に一ヶ月分入ってる」
「…ありがとうございます」
去り際に、シャマルが振り向いて言った。
「あの時は、悪かったな」
珍しく神妙な顔で謝罪を口にしたシャマルに、戸惑う。
「…何の事ですか」
「救えなかった」
「!」
間違いなく母のことだ。
「ま。とりあえずいつもの、な」
茶番もそこそこにして、シャマルはやっと真面目に検診を行う気になったのか持ち歩いているアタッシュケースを漁り、器具を幾つかと金属製のケースを取り出す。
慣れた手つきで名前の首筋から顎にかけてを手で撫でて腫れがあるか見たり、口を開けさせて喉の奥を確認する。続いて、服の前からだと名前が嫌がるので、背中から聴診器をあてて心音を聞くなどした。一通り済んでから、名前がたずねる。
「前から思っていたのですけど…これって、普通の病院の検診と変わらないですよね?この検診に何の意味が?」
「…あー、そうだな…」
「私の症状は一般の"それ"とは違うのですから、必要ないのでは?」
「よし、正直に白状しよう。俺が名前ちゃんとお医者さんごっこしたいだけンッ!!?名前ちゃん待てッタイムタイム!聴診器は人の首を締めるのに使うものじゃねぇよ!?」
「医師免許はセクハラする為に使うものなの?……真面目になさい」
「わかったわかった。ったく、名前ちゃんが可愛いんだもんよ」
からかうのは男のさが…などと呟きながらも観念した様子で、置いてあった金属製のケースを開くと、中から"小さなカプセル"を一つ取り出して椎南に見せた。
「胸元を開けてくれ」
「胸である必要性が?」
「……左腕でいい」
「……」
名前は白衣の袖をまくり、素直に腕を差し出す。
シャマルが右手で弾いたカプセルがポンと音を立てて開き、中から目視するのがやっとな小さい羽虫が姿を現す。羽虫は旋回し、やがて目の前の白い腕に留まると口針を突き立てて血を吸った。
名前はその様子を見つめる。何度見ても、不思議な光景だ。
「…変わっちまったよなぁ」
「何の話」
「4,5年前は俺のこと、シャマルせんせぇ、シャマルせんせぇーって素直~な子でよ。今じゃすっかり反抗期でおじさん悲し…」
「!…ちゃんと感謝は、していますよ。……母の代から」
「あー…そ、ね」
何故か少し言葉を濁すシャマル。そのタイミングで、吸血を終えた蚊が腕から飛び去る。
「はいよ、終わりだぜ。これで暫くは、脱水や発熱に苦しむこともないだろ。"いつもの薬"は、この封筒に一ヶ月分入ってる」
「…ありがとうございます」
去り際に、シャマルが振り向いて言った。
「あの時は、悪かったな」
珍しく神妙な顔で謝罪を口にしたシャマルに、戸惑う。
「…何の事ですか」
「救えなかった」
「!」
間違いなく母のことだ。