brother.──プロローグ(1〜終)
名前変換
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brother.13
編んだ檻の壁が、木陰みたいになって、気持ちいい。
-
「……すぅ…」
(……)
獲物は、捕らえる前に捕らえられていた。
ご丁寧に、手製の檻の中に仔山羊のような細身を折り曲げて横たわり、『食べて下さい』と言わんばかりにその身を納めている。
「……はぁ」
薄衣の仔山羊は寝息をたてて、起きる気配がない。
主旨を大きく外れた少女を咬み殺すのは確定事項だがその前に、優しくモーニングコールをしてやることにした。
「起きろ」
檻に足をかけて蹴飛ばし、思い切り転がした。
「……ぁっ、ッッ!?へあ!!??ッあああぁぁぁお兄さ」
そのまま2回、3回と回転すると、やがてドスンっと音を立て木の幹にぶつかった。ウッと呻き、名前は目を回した。
「へ、へ……お兄さ、やっと来てくれた……最後、10分じゃ、ながくて」
「馬鹿」
「っふふ……楽しかった」
「この檻、僕をイノシシか何かだと思ってるの」
「えへ……檻を編んだはいいですけど。お兄さんの好きな食べ物……知らなくて。
仕掛けに使いたいから、恭弥お兄さんの好物教えてくれますかぁ…、なん…て」
「大馬鹿。……君の負けだよ。咬み殺してあげるから、早く出てきて」
「中から開けられないんです、」
「……」
仕方なく支え棒を外し、蓋をあけて腕を引っぱり出してやる。
すると名前は抵抗なくだらんと、恭弥に体を預けた。
「君?」
先程のような空気から一転した。
顎を上に向けて、浅い呼吸を繰り返す名前の目はどこか空を見ていた。
「名前」
触れた衣服はぐっしょりと水に濡れていたのだか、反対にもたれた身体の熱さに驚いた。嫌な予感がする。
「池に入った形跡があったけど、なんで君……そんなことしたの」
「……渇く、から」
「……暑いと、……体が、渇いて…しんじゃう、の」
「!」
「水にはいると……安心する…から」
そう言って目を閉じた名前の体は、赤みを帯びて熱を持っていた。
恭弥は、暑いよ。渇くよ。とうわ言のように繰り返す名前を抱き上げた。縁側まで運ぶと、木の床へその身体を横たえる。
自分は靴を脱いで廊下へ上がり、そのままキッチンへ向かう。そして漆の盆にグラス2つと氷水の入ったピッチャーを乗せて、戻ってきた。
「名前」
自分の膝に凭れさせるようにして名前の上半身を起こしてやり、口元へ冷水を注いだグラスを近づける。
「飲んで」
朦朧としているのか中々口を空けないので、下唇に親指をかけて口を開かせた。
編んだ檻の壁が、木陰みたいになって、気持ちいい。
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「……すぅ…」
(……)
獲物は、捕らえる前に捕らえられていた。
ご丁寧に、手製の檻の中に仔山羊のような細身を折り曲げて横たわり、『食べて下さい』と言わんばかりにその身を納めている。
「……はぁ」
薄衣の仔山羊は寝息をたてて、起きる気配がない。
主旨を大きく外れた少女を咬み殺すのは確定事項だがその前に、優しくモーニングコールをしてやることにした。
「起きろ」
檻に足をかけて蹴飛ばし、思い切り転がした。
「……ぁっ、ッッ!?へあ!!??ッあああぁぁぁお兄さ」
そのまま2回、3回と回転すると、やがてドスンっと音を立て木の幹にぶつかった。ウッと呻き、名前は目を回した。
「へ、へ……お兄さ、やっと来てくれた……最後、10分じゃ、ながくて」
「馬鹿」
「っふふ……楽しかった」
「この檻、僕をイノシシか何かだと思ってるの」
「えへ……檻を編んだはいいですけど。お兄さんの好きな食べ物……知らなくて。
仕掛けに使いたいから、恭弥お兄さんの好物教えてくれますかぁ…、なん…て」
「大馬鹿。……君の負けだよ。咬み殺してあげるから、早く出てきて」
「中から開けられないんです、」
「……」
仕方なく支え棒を外し、蓋をあけて腕を引っぱり出してやる。
すると名前は抵抗なくだらんと、恭弥に体を預けた。
「君?」
先程のような空気から一転した。
顎を上に向けて、浅い呼吸を繰り返す名前の目はどこか空を見ていた。
「名前」
触れた衣服はぐっしょりと水に濡れていたのだか、反対にもたれた身体の熱さに驚いた。嫌な予感がする。
「池に入った形跡があったけど、なんで君……そんなことしたの」
「……渇く、から」
「……暑いと、……体が、渇いて…しんじゃう、の」
「!」
「水にはいると……安心する…から」
そう言って目を閉じた名前の体は、赤みを帯びて熱を持っていた。
恭弥は、暑いよ。渇くよ。とうわ言のように繰り返す名前を抱き上げた。縁側まで運ぶと、木の床へその身体を横たえる。
自分は靴を脱いで廊下へ上がり、そのままキッチンへ向かう。そして漆の盆にグラス2つと氷水の入ったピッチャーを乗せて、戻ってきた。
「名前」
自分の膝に凭れさせるようにして名前の上半身を起こしてやり、口元へ冷水を注いだグラスを近づける。
「飲んで」
朦朧としているのか中々口を空けないので、下唇に親指をかけて口を開かせた。