brother.──プロローグ(1〜終)
名前変換
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brother.12
名前は少し考えて、庭と竹林の境界に罠を作ることにした。入り口に罠を作ってさも『この奥にいますよ!』といった空気を出して、恭弥を撹乱させるのは可能だろうか……
甘い目論みだとは分かりつつも名前は、罠を仕掛けること自体を楽しみ始めていた。
(怖かったのに……何だろ、少しわくわくする。
自分から何か行動して、対抗するって……楽しいの?)
受け身でなされるがままだった自分では、感じることのできなかった充実感が湧いてくる。
(恭弥お兄さんはもう、動いてるよね。……よし、次ね)
細く短い竹を足元までしならせて括りつけた罠を確認してから、そこから休みなく駆け出した。
陽は大分、傾き始めている。
-
恭弥は何度目かの溜息を漏らした。
(呆れて、物も言えないんだけど)
偽の足跡、靴。ルール違反と見せかけた誘導。その他にも撒き菱や何故か池に飛び込んだ形跡等、子ども騙しなetc…
「猶予与えすぎたかな」
まさか10分のプレゼントタイムをこんな事をするのに使うとは……逃げるより、罠作りを中心に楽しんでいるのではないか。恭弥が呆れるのも当然と言えた。
しかし仕掛けられた罠から伝わってくるのは、出会った当初の彼女からは想像も出来ないような"能動的"な感情と、意志。徐々に増してきた恭弥への"遠慮の無さ"
その変化は悪くない、と思った。
「でもいい加減、かたを付けてあげる」
これは別に、現在薄着あろう彼女を心配しての発言では…無い。
-
「できた……!」
名前は最後に竹藪の周辺で集めた細竹やツタを使って、円筒状の簡易な仕掛け檻を編み上げていた。中の葉に置かれた食べ物に獲物が触れると、バネが外れ入り口の蓋が閉じる仕掛けだった。
もはや恭弥が引っかかるかどうかなど、お構いなしの代物である。
「疲れたし…、…喉…乾いたなあ」
(う、ん……ノリノリで罠工作しまくって。も、へとへと……)
かれこれ1時間半は走って罠を仕掛けて逃げているのだから、当然といえば当然。
寒さには強いが、暑さが苦手で水分不足を何よりの天敵とする椎南は、この極限(エクストリーム)鬼ごっこでかなり体力の限界まで追い詰められていた。
(こっそり屋敷にもどって……台所でお茶、とか?……ア、駄目。暑くて頭ぽーっとしちゃう)
(動けない……捕まっちゃうよ)
「えへ…でも、何か満足しちゃったんだよね……
こんなに楽しいの、久しぶりなの」
(だからお兄さん……早く、つかまえに来て)
名前は少し考えて、庭と竹林の境界に罠を作ることにした。入り口に罠を作ってさも『この奥にいますよ!』といった空気を出して、恭弥を撹乱させるのは可能だろうか……
甘い目論みだとは分かりつつも名前は、罠を仕掛けること自体を楽しみ始めていた。
(怖かったのに……何だろ、少しわくわくする。
自分から何か行動して、対抗するって……楽しいの?)
受け身でなされるがままだった自分では、感じることのできなかった充実感が湧いてくる。
(恭弥お兄さんはもう、動いてるよね。……よし、次ね)
細く短い竹を足元までしならせて括りつけた罠を確認してから、そこから休みなく駆け出した。
陽は大分、傾き始めている。
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恭弥は何度目かの溜息を漏らした。
(呆れて、物も言えないんだけど)
偽の足跡、靴。ルール違反と見せかけた誘導。その他にも撒き菱や何故か池に飛び込んだ形跡等、子ども騙しなetc…
「猶予与えすぎたかな」
まさか10分のプレゼントタイムをこんな事をするのに使うとは……逃げるより、罠作りを中心に楽しんでいるのではないか。恭弥が呆れるのも当然と言えた。
しかし仕掛けられた罠から伝わってくるのは、出会った当初の彼女からは想像も出来ないような"能動的"な感情と、意志。徐々に増してきた恭弥への"遠慮の無さ"
その変化は悪くない、と思った。
「でもいい加減、かたを付けてあげる」
これは別に、現在薄着あろう彼女を心配しての発言では…無い。
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「できた……!」
名前は最後に竹藪の周辺で集めた細竹やツタを使って、円筒状の簡易な仕掛け檻を編み上げていた。中の葉に置かれた食べ物に獲物が触れると、バネが外れ入り口の蓋が閉じる仕掛けだった。
もはや恭弥が引っかかるかどうかなど、お構いなしの代物である。
「疲れたし…、…喉…乾いたなあ」
(う、ん……ノリノリで罠工作しまくって。も、へとへと……)
かれこれ1時間半は走って罠を仕掛けて逃げているのだから、当然といえば当然。
寒さには強いが、暑さが苦手で水分不足を何よりの天敵とする椎南は、この極限(エクストリーム)鬼ごっこでかなり体力の限界まで追い詰められていた。
(こっそり屋敷にもどって……台所でお茶、とか?……ア、駄目。暑くて頭ぽーっとしちゃう)
(動けない……捕まっちゃうよ)
「えへ…でも、何か満足しちゃったんだよね……
こんなに楽しいの、久しぶりなの」
(だからお兄さん……早く、つかまえに来て)