brother.──プロローグ(1〜終)
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brother.11
その時、両親はとても驚いていたが、普段激しい人見知りである(両親はそう思っている。実際には群れるのが嫌いなのだが)以外にこれと言って苦労をかけず、欲しい物をねだることも無い親孝行な息子の頼みである。十分承諾に値した。
人一人増えても余りある敷地の広さや、元来優しい夫婦の性格も相まって、少女が施設行きに合意寸前というところで、かくして引取先が決まったのだ。
(あの子は、知らなくていいことだけれど)
何処からともなく取り出した"仕込みトンファー"を自由に旋回させながら、ゆうゆうと庭を闊歩する。
(退屈しない、何かを求めてた)
彼女がそれを満たしてくれるという、直感。
「……いた」
10分経って動き出すと、すぐに垣根に向かってつづく足跡を見つけた。風に揺れて岩間から白い袖が覗く。
(もっと学習する必要があるね)
岩の奥へと、音も漏らさずに一気に詰め寄り回り込む。
「見つけた。 ………!?」
少女が身を隠していると思われたそこは、もぬけの殻だった。
岩の近くの枝には、白い上着がくくりつけられ自立しているように見える。
今時ギャグ漫画でも使われないような子供騙しな罠であった。
(馬鹿?全く、恥ずかしくなのかな。もっと、スマートに逃げてみせてよ)
そう思いつつも恭弥は可笑しくなって、堪えられず笑みをこぼす。
(逃げるだけじゃ駄目って事に目をつけたのだけは、褒めてあげる)
……
-
昔から寒さには強い方だと思う……が、
(ちょっと、恥ずかしいかも……それに引っかかってくれるかも分からないし)
池に映る、薄手のスカートに肌着のキャミソール一枚になった自分の姿を見て溜息がでる。
(子ども騙し過ぎるよね。でも、なかなか思いつかなくて)
「…でも、逃げなきゃ。認められるために」
そう思ったところで名前は、靴を脱ぎ靴下だけになった。
足跡を残すのはよくないという判断だった。近くの木の下に、つま先だけちょっとはみ出すように置く。
(終わるまでに私、ハダカになってるんじゃないかな……はは)
流石にこれ以上脱げないので冗談だ。
自嘲はそのくらいにして、今度は夫婦の所有地圏内である竹林の入り口へと走った。
竹が奥深く群生する林の入り口と、庭との曖昧な境界線。その間に立つ。 竹林は『屋敷の敷地内』からは外れるはずなので、此処に逃げ込むのはルール違反だ。
(どうにか、ここに逃げ込んだって思い込ませられないかな)
その時、両親はとても驚いていたが、普段激しい人見知りである(両親はそう思っている。実際には群れるのが嫌いなのだが)以外にこれと言って苦労をかけず、欲しい物をねだることも無い親孝行な息子の頼みである。十分承諾に値した。
人一人増えても余りある敷地の広さや、元来優しい夫婦の性格も相まって、少女が施設行きに合意寸前というところで、かくして引取先が決まったのだ。
(あの子は、知らなくていいことだけれど)
何処からともなく取り出した"仕込みトンファー"を自由に旋回させながら、ゆうゆうと庭を闊歩する。
(退屈しない、何かを求めてた)
彼女がそれを満たしてくれるという、直感。
「……いた」
10分経って動き出すと、すぐに垣根に向かってつづく足跡を見つけた。風に揺れて岩間から白い袖が覗く。
(もっと学習する必要があるね)
岩の奥へと、音も漏らさずに一気に詰め寄り回り込む。
「見つけた。 ………!?」
少女が身を隠していると思われたそこは、もぬけの殻だった。
岩の近くの枝には、白い上着がくくりつけられ自立しているように見える。
今時ギャグ漫画でも使われないような子供騙しな罠であった。
(馬鹿?全く、恥ずかしくなのかな。もっと、スマートに逃げてみせてよ)
そう思いつつも恭弥は可笑しくなって、堪えられず笑みをこぼす。
(逃げるだけじゃ駄目って事に目をつけたのだけは、褒めてあげる)
……
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昔から寒さには強い方だと思う……が、
(ちょっと、恥ずかしいかも……それに引っかかってくれるかも分からないし)
池に映る、薄手のスカートに肌着のキャミソール一枚になった自分の姿を見て溜息がでる。
(子ども騙し過ぎるよね。でも、なかなか思いつかなくて)
「…でも、逃げなきゃ。認められるために」
そう思ったところで名前は、靴を脱ぎ靴下だけになった。
足跡を残すのはよくないという判断だった。近くの木の下に、つま先だけちょっとはみ出すように置く。
(終わるまでに私、ハダカになってるんじゃないかな……はは)
流石にこれ以上脱げないので冗談だ。
自嘲はそのくらいにして、今度は夫婦の所有地圏内である竹林の入り口へと走った。
竹が奥深く群生する林の入り口と、庭との曖昧な境界線。その間に立つ。 竹林は『屋敷の敷地内』からは外れるはずなので、此処に逃げ込むのはルール違反だ。
(どうにか、ここに逃げ込んだって思い込ませられないかな)