brother.──プロローグ(1〜終)
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brother.10
息を整えてから、改めて周囲に目をやれば、手入れの行き届いた美しい庭が広がっていた。踏み荒らしてしまうのは気が引ける程の。
「……きれい」
切り整えられた風情ある松や、秋には鮮やかに色づくだろう紅葉の植わった苔庭。さざれ石がなだらかな流線で水の波紋を描く枯山水。
此処まで辿りつくのに、必死に植木や花や砂れきの敷かれた道を荒らさぬよう避けて逃げるのに大分神経をつかった。
(……いやいや、やっぱりおかしいよね!こんな綺麗な庭で鬼ごっこなんて。
恭弥お兄さん……いつもこんな感じで、お友達と遊んでいるのかな)
確か、恭弥は中学生だったはず……彼の友人の姿を想像してみるが、友というよりは学校の自分より屈強な後輩とかをずらっと従えてそうなイメージだと名前は思った。
後に、そのイメージは間違っていないのだと証明されるが。
(って、余裕かましてる場合じゃない)
(このまま逃げるだけじゃ駄目。体力切れで捕まるのも時間の問題)
(何か策を)
このままでは勝てない。と、気付き始めていた。
-
恭弥は、名前を追いかけながら、今の自分が思ったよりも機嫌が良く、はしゃいでしまっていることに気付いていた。
周囲から見れば、表情から読み取ることは全く困難なほどの、微細な変化であったが。
(あの、通夜の日…)
──泣いてるの? ……母親が死んだから。
──!……っほっといて、ください。
あの時は、自分なりの最大限の気遣いで声をかけたのだが、はねのけられてしまった。別に悪い気はしなかったが。
──君、どうするの。 これから独りだけど。
そう尋ねた真意に相手は気付かなかったが、大体腹は決まっていた。
──ッ!!
彼女が母親のことを悪く言った少年を殴った時、目論みが決定事項へと変わる。
『本家の"娘さん"……どうなるのかしらね』
『何処も口では心配しているけれど……このままでは施設行きが妥当だろうね』
『貴方……うちは?』
『……"あの子"が何というか』
『いいよ。うちで引き取っても』
『っ!!……恭弥、聞いていたのか』
『僕がいいなら、構わないんだよね』
『!?………だが、良いのか?…恭弥』
恭弥は、親と顔をつき合せて会話するのは久しぶりだった。
息を整えてから、改めて周囲に目をやれば、手入れの行き届いた美しい庭が広がっていた。踏み荒らしてしまうのは気が引ける程の。
「……きれい」
切り整えられた風情ある松や、秋には鮮やかに色づくだろう紅葉の植わった苔庭。さざれ石がなだらかな流線で水の波紋を描く枯山水。
此処まで辿りつくのに、必死に植木や花や砂れきの敷かれた道を荒らさぬよう避けて逃げるのに大分神経をつかった。
(……いやいや、やっぱりおかしいよね!こんな綺麗な庭で鬼ごっこなんて。
恭弥お兄さん……いつもこんな感じで、お友達と遊んでいるのかな)
確か、恭弥は中学生だったはず……彼の友人の姿を想像してみるが、友というよりは学校の自分より屈強な後輩とかをずらっと従えてそうなイメージだと名前は思った。
後に、そのイメージは間違っていないのだと証明されるが。
(って、余裕かましてる場合じゃない)
(このまま逃げるだけじゃ駄目。体力切れで捕まるのも時間の問題)
(何か策を)
このままでは勝てない。と、気付き始めていた。
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恭弥は、名前を追いかけながら、今の自分が思ったよりも機嫌が良く、はしゃいでしまっていることに気付いていた。
周囲から見れば、表情から読み取ることは全く困難なほどの、微細な変化であったが。
(あの、通夜の日…)
──泣いてるの? ……母親が死んだから。
──!……っほっといて、ください。
あの時は、自分なりの最大限の気遣いで声をかけたのだが、はねのけられてしまった。別に悪い気はしなかったが。
──君、どうするの。 これから独りだけど。
そう尋ねた真意に相手は気付かなかったが、大体腹は決まっていた。
──ッ!!
彼女が母親のことを悪く言った少年を殴った時、目論みが決定事項へと変わる。
『本家の"娘さん"……どうなるのかしらね』
『何処も口では心配しているけれど……このままでは施設行きが妥当だろうね』
『貴方……うちは?』
『……"あの子"が何というか』
『いいよ。うちで引き取っても』
『っ!!……恭弥、聞いていたのか』
『僕がいいなら、構わないんだよね』
『!?………だが、良いのか?…恭弥』
恭弥は、親と顔をつき合せて会話するのは久しぶりだった。