brother.──プロローグ(1〜終)
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brother.1
少女は10歳の時に、母親を病で失ってしまった。
少女の母親は「口から水を吐いて死んでしまう」という、現代の医学でも説明のつかない奇病にかかっていた。
付ききりで手を握る娘のかたわらで、どんなに医者が手を尽くしても日々、母の体は衰弱していった。
血液とも体液ともわからぬ『ただの水』を吐く症状は治まることはなく、生命の維持に必要な体内の水分を補うことがかなわずに、やがてやせ細って、弱りきった母は死んでしまった。
親戚の大人たちは、母の病を「水の呪い」と噂した。
少女にもいつか同じ症状がでるだろうと囁いた。
死の間際に、母は「これは報いだ」と言った。震える手で、自分がそれまで肌身離さず着けていた銀の腕輪をはずして少女に託した。
「お願い……これを、離さず着けていて
……そうすれば、必ず
あなたを見つけてくれる……──ボンゴレ、が 」
-
生まれた時から母親しかおらず、行く宛のない少女を引き取ったのは、親戚といってもかなり遠縁のはずの“ある”資産家の夫婦であった。
親戚同士の間で引き取り手が見つからず、施設に預けようかという案がでた頃に、うちで養子として面倒を見ると名乗りあげてくれたのが夫妻だった。
二人は、周囲の親戚が口ではださずとも本家のお荷物のような存在であった少女を、自身らの屋敷へ快く迎え入れた。
その夫婦が所有する大層立派な作りの、日本庭園を有した屋敷には夫婦の他に一人息子が住んでいた。
──それが『兄さん』だった。
少女が正式に二人の養子として引き取られた日に、和風の応接間で、夫妻は少女に一人息子を紹介した。
「息子の恭弥だよ。君のお兄さんになる子だから、頼りなさい」
「……」
両親に肩を押されて、前に出てきた“恭弥”は、少女よりも背が高く、少女よりも二つ三つ、歳上に見える。母親似の形のよい頭と黒髪に白い肌、父親似の人を射貫くような鋭い眼が印象的な、端的に、綺麗な顔をした少年だった。
親戚の会合では滅多に顔を見せない少年の顔に、少女は見覚えがあった。
(一度だけ……お話したことがある)
(名前を聞いてもわからなかったけど、顔を見てすぐ思い出した……
記憶に薄かったのは、……あの日が、それどころじゃなかったからだ)
少女は10歳の時に、母親を病で失ってしまった。
少女の母親は「口から水を吐いて死んでしまう」という、現代の医学でも説明のつかない奇病にかかっていた。
付ききりで手を握る娘のかたわらで、どんなに医者が手を尽くしても日々、母の体は衰弱していった。
血液とも体液ともわからぬ『ただの水』を吐く症状は治まることはなく、生命の維持に必要な体内の水分を補うことがかなわずに、やがてやせ細って、弱りきった母は死んでしまった。
親戚の大人たちは、母の病を「水の呪い」と噂した。
少女にもいつか同じ症状がでるだろうと囁いた。
死の間際に、母は「これは報いだ」と言った。震える手で、自分がそれまで肌身離さず着けていた銀の腕輪をはずして少女に託した。
「お願い……これを、離さず着けていて
……そうすれば、必ず
あなたを見つけてくれる……──ボンゴレ、が 」
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生まれた時から母親しかおらず、行く宛のない少女を引き取ったのは、親戚といってもかなり遠縁のはずの“ある”資産家の夫婦であった。
親戚同士の間で引き取り手が見つからず、施設に預けようかという案がでた頃に、うちで養子として面倒を見ると名乗りあげてくれたのが夫妻だった。
二人は、周囲の親戚が口ではださずとも本家のお荷物のような存在であった少女を、自身らの屋敷へ快く迎え入れた。
その夫婦が所有する大層立派な作りの、日本庭園を有した屋敷には夫婦の他に一人息子が住んでいた。
──それが『兄さん』だった。
少女が正式に二人の養子として引き取られた日に、和風の応接間で、夫妻は少女に一人息子を紹介した。
「息子の恭弥だよ。君のお兄さんになる子だから、頼りなさい」
「……」
両親に肩を押されて、前に出てきた“恭弥”は、少女よりも背が高く、少女よりも二つ三つ、歳上に見える。母親似の形のよい頭と黒髪に白い肌、父親似の人を射貫くような鋭い眼が印象的な、端的に、綺麗な顔をした少年だった。
親戚の会合では滅多に顔を見せない少年の顔に、少女は見覚えがあった。
(一度だけ……お話したことがある)
(名前を聞いてもわからなかったけど、顔を見てすぐ思い出した……
記憶に薄かったのは、……あの日が、それどころじゃなかったからだ)