TOS/Promise -約束- プチリメイク版
【Story 6】
『もし、俺があんたの事を好きになったらどうする?』
前にそんな事を聞いたけど――今はちゃんと『好き』と言えるようになっている。
だから――もう迷わない。
翌日になって、昨日クラトスに言われた通りに皆に聞いてみた。
「リフィル先生」
「何かしら?」
「昔、俺達と旅をしてた事知ってる?」
「ええ。ユアンさん、ボータさんを含めてほぼ全員いるのだけれど、居ないのはプレセアとミトスとクラトスだけなのよね……」
いや、クラトスも近いところに居るんだけど。
後はマーテルが居ないらしい。
それにしても――どうしてこんなに身近な場所に集まるんだろう。
これも一つの運命なのか?
他の『前世の仲間達』にも聞いてみた。
しいな、ゼロス先生、リーガル先生――。
皆知っていた。一応、それをクラトスに報告した。
「……ミトスとマーテルは、5年前に外国へ渡った」
「マーテルって人も、ケーキとかお菓子の職人だったのか」
「そうだ。ユアンとマーテルとは古い付き合いでな。クルシスも元はマーテルが始めたものだ。だが、店は2年ほどで経営不振に陥り、マーテルは自身の力不足を悔いて海外で技術を学ぶ事にした。そして、私が潰れそうだった店を引き継ぎ、クルシスとして新たにスタートさせたのだ」
「それって……」
「どこかで生きているはずの息子が、思い出を頼りにこの店を訪れるのを願っていたからだ」
その時、俺はやっとクラトスの意図に気付いた。
俺がふらっとクルシスに立ち寄るずっとずっと前から――俺の事を待っていたんだ。
「で、あ、あのさ……話があるんだけど……」
「……私の部屋で聞こう」
「へ!?」
今がチャンスだと思った矢先にクラトスから誘われて、心臓が飛び出そうになった。
本当に――良いのか!?
「長くなるのだろう? 仕事が終わり次第、連絡して公園まで迎えに行く。親父さんには遅くなると予め伝えておくようにな」
「う、うん――そうだな」
◆ ◆ ◆
23時頃にクラトスから連絡があって、初めてクラトスの部屋に立ち入った。
家賃が高そうなマンションの906号室だ。
室内は全体的に白を基調としていて、リビングにある家具はテーブルとイスと本が整えられた戸棚、テレビと電子レンジ、掃除機ぐらい――良く言えばスッキリしていて、悪く言えば質素な部屋。
まるで、殆どの物を捨ててから引っ越してきたような感じだ。
「こっちだ」
イスに座ることなく、奥の部屋に案内される。
あるのは、ベッドと棚とクローゼットだけ。
「床は硬いから、そこに座るといい」
指を差された場所に大人しく座ることにした。
スプリングが軋む音が響いて、急にどきどきしてきた。
このベッドで……クラトスは毎日寝てるんだよな。
「では、お前の話を聞かせてくれ」
「あ、ああ」
ついに勝負の時だ。鼓動がどんどん速くなる。
速すぎて心臓がはち切れそう――。
「俺、クラトスの事……えっと、その……」
好き、と言おうとしたら――急にふっと浮遊感がして、背景が天井に変わった。
クラトスの顔が目の前にあって、顔が燃えそうなくらい熱い。
「……ロイド。夢は見たか?」
「……うん。やっぱり、あんたが――俺の父さんで間違いないんだな」
「……私から名乗るのは惜しいが、事実だ」
「何で家族の事を聞いた時に言ってくれなかったんだよ……。俺、ずっと父さんに捨てられたのかもしれないって思ってたんだぞ」
「本当に……すまなかった。意識が戻った時にはアンナは既に息を引き取っていて、お前は病院から姿を消していて行方が掴めなかったのだ。それに――あの時再会した時点では、確信が持てなかったのだ」
「んー、まぁ、違うロイドだったら大変だもんな」
クラトスもクラトスなりに、『俺』を探そうとしてくれて、こうして再会出来た。
それが――何よりも嬉しい。
「あんた、父さんにしては随分若く見えるんだけど……一体何歳なんだ?」
「39だ」
「若っ!!」
見た目からして、28歳くらいだと思ったんだけど――面白い事もあるもんだな。
「……んで――何で押し倒してんだよ……」
「……もう、お前への気持ちを抑えきれないのだ……。ロイド、お前が愛おしくてたまらない……。こんな駄目な父親でも、少しの間で良い……。共に……居させてもらえないか?」
クラトス、顔が赤くなってる。
相当な勇気を振り絞って俺に告白してくれたんだな……。
分かった。俺も自分の気持ちを素直に伝えるよ。
「――俺もクラトスが好き。っていうか、大好きだ。もう俺から離れないでくれよな……」
「……ありがとう」
そして俺達は、そのまま唇を重ねた。
実の父子のする事ではないと分かってるけど……今の俺達には、そんな世間のルールは関係なかった。
◆ ◆ ◆
まぁ、それから『色々』あって――俺はクラトスを連れて一旦家に戻った。
それで――親父に話した。クラトスの事を……。
「……で、おめぇはどうしたいんだ?」
「俺……父さんと一緒に暮らしたい」
「……そうか。行きてぇなら、好きにしろ。俺は引き止めねぇ」
「親父――本当に良いのか?」
「おめぇが――俺の自慢の息子が決めた事だ。それが正しいに決まってるさ」
「でもさ! 会いたくなったら……勝手に会いに来るから!」
「ああ、それなら安心だ」
「親父――14年間、お世話になりました!」
「仲良く暮らせよ!」
涙を堪えて、思い出の詰まった家のドアを閉じた。
新しい日々を始めるために――。
「俺、嬉しいんだ。ずっと父さんと居たいって思ったから……」
「フ……私もだ。14年の空白を、これから埋めていこう……」
◆ ◆ ◆
クラトスの部屋に『帰って』きて。
いつの間にか時間は深夜1時を過ぎていた。
父さんは寝室の棚の一段目の引き出しを開けて、じゃらじゃらと音のする物を取り出した。
「……お前にこれを渡しておこう」
「……ペンダント?」
「……開けてみなさい」
ペンダントを開くと、中にはクラトスと母さんと――多分小さい頃の俺が写っていた。
「こんな大切な物……良いのか?」
「大切な物だからこそ、大切なお前に預かってほしいのだ」
「……ありがとう。俺、一生大切にするよ」
これは、俺達が家族である証明。
絶対に、絶対に大切にするからな……。
「さぁ、今日はもう寝ようか」
「うん、流石に眠いや……」
「……この家にはベッドがこれしかないのだが――一緒に寝るか?」
「寝る寝るー」
先にクラトスのベッドに入り込むと、後からクラトスも入ってくる。
二人じゃ少し窮屈だけど、温かくて心地良い。
ふと、さっきでここでした事を思い出して――恥ずかしさから背を向けてしまった。
すると、頭をくしゃくしゃとやわらかく撫でられて、首元に顔を寄せられた。
温もりと幸せに包まれながら、俺は眠りについた。
◆ ◆ ◆
いつものように、夢を見た。
雪の舞う街で、俺とクラトスは今日のような話をした。
お互い告白をして、凄く幸せだった。
その後、仲間のゼロスに裏切られて……皆、俺を進ませて罠の犠牲になった。
最深部まで来て戦う時に、皆と裏切ったゼロスが戻ってきてくれて、一緒に戦った。
勝利した直後、クラトスが来てこう言った。
『オリジンと契約したければ、この私を倒せ』と。
彼はトレントの森の封印の前で待つと言い残して――夢は、そこで醒めた。
目の前には、『俺の父さん』のクラトスの顔。
「……夢を見ていたのか」
「なんで分かるんだ……?」
「寝言で『皆、死なないでくれ……』と言っていたからだ」
「へへへ……」
今日も、俺は幸せだ。
ずっとこんな幸せが続けばいいと願ってたけど――人生は、それほど甘くはなかったから……。
【Story 6 Moment -瞬間- あなたが好きです】
『もし、俺があんたの事を好きになったらどうする?』
前にそんな事を聞いたけど――今はちゃんと『好き』と言えるようになっている。
だから――もう迷わない。
翌日になって、昨日クラトスに言われた通りに皆に聞いてみた。
「リフィル先生」
「何かしら?」
「昔、俺達と旅をしてた事知ってる?」
「ええ。ユアンさん、ボータさんを含めてほぼ全員いるのだけれど、居ないのはプレセアとミトスとクラトスだけなのよね……」
いや、クラトスも近いところに居るんだけど。
後はマーテルが居ないらしい。
それにしても――どうしてこんなに身近な場所に集まるんだろう。
これも一つの運命なのか?
他の『前世の仲間達』にも聞いてみた。
しいな、ゼロス先生、リーガル先生――。
皆知っていた。一応、それをクラトスに報告した。
「……ミトスとマーテルは、5年前に外国へ渡った」
「マーテルって人も、ケーキとかお菓子の職人だったのか」
「そうだ。ユアンとマーテルとは古い付き合いでな。クルシスも元はマーテルが始めたものだ。だが、店は2年ほどで経営不振に陥り、マーテルは自身の力不足を悔いて海外で技術を学ぶ事にした。そして、私が潰れそうだった店を引き継ぎ、クルシスとして新たにスタートさせたのだ」
「それって……」
「どこかで生きているはずの息子が、思い出を頼りにこの店を訪れるのを願っていたからだ」
その時、俺はやっとクラトスの意図に気付いた。
俺がふらっとクルシスに立ち寄るずっとずっと前から――俺の事を待っていたんだ。
「で、あ、あのさ……話があるんだけど……」
「……私の部屋で聞こう」
「へ!?」
今がチャンスだと思った矢先にクラトスから誘われて、心臓が飛び出そうになった。
本当に――良いのか!?
「長くなるのだろう? 仕事が終わり次第、連絡して公園まで迎えに行く。親父さんには遅くなると予め伝えておくようにな」
「う、うん――そうだな」
◆ ◆ ◆
23時頃にクラトスから連絡があって、初めてクラトスの部屋に立ち入った。
家賃が高そうなマンションの906号室だ。
室内は全体的に白を基調としていて、リビングにある家具はテーブルとイスと本が整えられた戸棚、テレビと電子レンジ、掃除機ぐらい――良く言えばスッキリしていて、悪く言えば質素な部屋。
まるで、殆どの物を捨ててから引っ越してきたような感じだ。
「こっちだ」
イスに座ることなく、奥の部屋に案内される。
あるのは、ベッドと棚とクローゼットだけ。
「床は硬いから、そこに座るといい」
指を差された場所に大人しく座ることにした。
スプリングが軋む音が響いて、急にどきどきしてきた。
このベッドで……クラトスは毎日寝てるんだよな。
「では、お前の話を聞かせてくれ」
「あ、ああ」
ついに勝負の時だ。鼓動がどんどん速くなる。
速すぎて心臓がはち切れそう――。
「俺、クラトスの事……えっと、その……」
好き、と言おうとしたら――急にふっと浮遊感がして、背景が天井に変わった。
クラトスの顔が目の前にあって、顔が燃えそうなくらい熱い。
「……ロイド。夢は見たか?」
「……うん。やっぱり、あんたが――俺の父さんで間違いないんだな」
「……私から名乗るのは惜しいが、事実だ」
「何で家族の事を聞いた時に言ってくれなかったんだよ……。俺、ずっと父さんに捨てられたのかもしれないって思ってたんだぞ」
「本当に……すまなかった。意識が戻った時にはアンナは既に息を引き取っていて、お前は病院から姿を消していて行方が掴めなかったのだ。それに――あの時再会した時点では、確信が持てなかったのだ」
「んー、まぁ、違うロイドだったら大変だもんな」
クラトスもクラトスなりに、『俺』を探そうとしてくれて、こうして再会出来た。
それが――何よりも嬉しい。
「あんた、父さんにしては随分若く見えるんだけど……一体何歳なんだ?」
「39だ」
「若っ!!」
見た目からして、28歳くらいだと思ったんだけど――面白い事もあるもんだな。
「……んで――何で押し倒してんだよ……」
「……もう、お前への気持ちを抑えきれないのだ……。ロイド、お前が愛おしくてたまらない……。こんな駄目な父親でも、少しの間で良い……。共に……居させてもらえないか?」
クラトス、顔が赤くなってる。
相当な勇気を振り絞って俺に告白してくれたんだな……。
分かった。俺も自分の気持ちを素直に伝えるよ。
「――俺もクラトスが好き。っていうか、大好きだ。もう俺から離れないでくれよな……」
「……ありがとう」
そして俺達は、そのまま唇を重ねた。
実の父子のする事ではないと分かってるけど……今の俺達には、そんな世間のルールは関係なかった。
◆ ◆ ◆
まぁ、それから『色々』あって――俺はクラトスを連れて一旦家に戻った。
それで――親父に話した。クラトスの事を……。
「……で、おめぇはどうしたいんだ?」
「俺……父さんと一緒に暮らしたい」
「……そうか。行きてぇなら、好きにしろ。俺は引き止めねぇ」
「親父――本当に良いのか?」
「おめぇが――俺の自慢の息子が決めた事だ。それが正しいに決まってるさ」
「でもさ! 会いたくなったら……勝手に会いに来るから!」
「ああ、それなら安心だ」
「親父――14年間、お世話になりました!」
「仲良く暮らせよ!」
涙を堪えて、思い出の詰まった家のドアを閉じた。
新しい日々を始めるために――。
「俺、嬉しいんだ。ずっと父さんと居たいって思ったから……」
「フ……私もだ。14年の空白を、これから埋めていこう……」
◆ ◆ ◆
クラトスの部屋に『帰って』きて。
いつの間にか時間は深夜1時を過ぎていた。
父さんは寝室の棚の一段目の引き出しを開けて、じゃらじゃらと音のする物を取り出した。
「……お前にこれを渡しておこう」
「……ペンダント?」
「……開けてみなさい」
ペンダントを開くと、中にはクラトスと母さんと――多分小さい頃の俺が写っていた。
「こんな大切な物……良いのか?」
「大切な物だからこそ、大切なお前に預かってほしいのだ」
「……ありがとう。俺、一生大切にするよ」
これは、俺達が家族である証明。
絶対に、絶対に大切にするからな……。
「さぁ、今日はもう寝ようか」
「うん、流石に眠いや……」
「……この家にはベッドがこれしかないのだが――一緒に寝るか?」
「寝る寝るー」
先にクラトスのベッドに入り込むと、後からクラトスも入ってくる。
二人じゃ少し窮屈だけど、温かくて心地良い。
ふと、さっきでここでした事を思い出して――恥ずかしさから背を向けてしまった。
すると、頭をくしゃくしゃとやわらかく撫でられて、首元に顔を寄せられた。
温もりと幸せに包まれながら、俺は眠りについた。
◆ ◆ ◆
いつものように、夢を見た。
雪の舞う街で、俺とクラトスは今日のような話をした。
お互い告白をして、凄く幸せだった。
その後、仲間のゼロスに裏切られて……皆、俺を進ませて罠の犠牲になった。
最深部まで来て戦う時に、皆と裏切ったゼロスが戻ってきてくれて、一緒に戦った。
勝利した直後、クラトスが来てこう言った。
『オリジンと契約したければ、この私を倒せ』と。
彼はトレントの森の封印の前で待つと言い残して――夢は、そこで醒めた。
目の前には、『俺の父さん』のクラトスの顔。
「……夢を見ていたのか」
「なんで分かるんだ……?」
「寝言で『皆、死なないでくれ……』と言っていたからだ」
「へへへ……」
今日も、俺は幸せだ。
ずっとこんな幸せが続けばいいと願ってたけど――人生は、それほど甘くはなかったから……。
【Story 6 Moment -瞬間- あなたが好きです】