TOS/Promise -約束- プチリメイク版
【Story 3】
夢を見た。俺は剣を2本持って、戦っていた。
コレットとジーニアスに似てる人と一緒に戦っていた。
けど、敵が強くて負けそうになった時、助けてくれたのはクラトスと言っていいほど良く似ている人物だった。
リフィル先生もいたような気がする。
これは――『夢』……?
◆ ◆ ◆
「ロイド、どうしたのだ?」
「……ん。あ、ボータさん」
こっそり忍び込んだ事務室のベンチで居眠りしてたんだった。
この人――ボータさんは学校の事務をしている。
大半はユアン先生の手伝い係らしい。
そういえば、夢でもボータさんが出てきた。
敵……として――。
「さっきから何か考え込んでいるようだが」
「あ、特に何でもないんだ。んじゃ俺、授業に戻らなきゃ」
その場から逃げるようにして、俺は教室に引き返した。
変な夢も見たし、あまり長居したくない気分だった。
「今日はこの辺で……あ、ロイド君。遅かったな」
「ゼロス先生」
「はいよ、これ数学の宿題のプリント。すっごい点数だなぁ♡」
「あ、ありがとう……」
教室に戻るなり、5点のプリントを渡されるなんて……。
俺、今日ツイてないなぁ。
◆ ◆ ◆
授業が終わって、一人で帰宅する途中。
ふと小さい頃にケーキを食べて幸せに包まれた事を思い出して久々にケーキが食べたくなった俺は、帰り道とは逆方向のケーキショップに立ち寄る事にした。
『パティスリークルシス』の看板をくぐって店内に入った瞬間――目が丸眼鏡のように丸くなった。
「……いらっしゃい」
「ぐええっ!?」
何という事か。
場違いな所でクラトスと遭遇してしまった……!
青緑色のシャツに、紺色のエプロン姿だ。
異様だ。俺はクラトスに訊ねた。
「あんた――何してんだ?」
「この通り、ここで働いている」
「……苺のケーキ2つ。それと用事も1つ」
「良いだろう。ユアン、後の接客は頼んだぞ」
「まったく、お前は人使いが荒いな――お、ロイドか」
「ユアン先生まで!」
思わぬ再会の連続に驚きながらも、ケーキの入った箱を受け取り、クラトスを表に呼び出した。
「今日、あんたが来られない理由が分かったよ」
「……こんな私がケーキを作っている事を、お前は奇妙に思うか?」
「いや、全然。むしろカッコいいと思うぜ」
「カッコいい……?」
「ケーキは甘くて美味しくて、食べると幸せな気分になるよな。だから、あんたはケーキで食べた人を幸せにしてるはずだ。そんなのカッコいいしかないよ」
箱の中の苺のケーキを手づかみして、がつっと食べてみせた。
甘さも丁度良いし、苺と生クリームがスポンジと合っていて、とにかく美味しい。
「ほらな、美味い!!」
「……そうか」
「明日もここに来ていい?」
「……待っているぞ」
早速家に帰って、親父にも苺のケーキを振る舞った。
「お〜、うめぇなぁ! 誰がこのケーキ作ったんでぃ?」
「クラトスっていう人だよ」
「クラトス――」
名前を聞いた瞬間、親父の顔から笑顔が消えた。
どうしてだ?
「何か知ってるのか?」
「昔、テレビで――いや、俺の気のせいだ」
「ヘンな親父……」
様子のおかしい親父を背に、俺は部屋へ戻った。
宿題も全く手に付かない。
夢の事もあるし、何が何だか分からなくなりそうだ。
春の陽気で、俺も皆もおかしくなっちまったのか……?
もやもやした気持ちのまま、俺は眠りについた。
◆ ◆ ◆
そして、また夢を見た。
コレットに似てる人に紫色の光の羽……? みたいのが生えて、食欲や睡眠欲や感覚を失っていって、最終的には声を失った。
とても辛そうにしてるけどいつも笑ってて――健気で凄く可哀想に思えてきた。
でも何もしてあげられない自分が、とても無力だった。
そして旅の最終地点に着いて、仲間だったはずのクラトスが裏切った。
その時、ボータが助けてくれて……でも苦しかった。
これは何の夢だろう。
登場人物の名前も姿も同じなんて――気味が悪い。
もしかすると……俺達の前世、なのか?
この夢と、クラトスへの疑惑で揺れ動いている俺は、一体どうなるのだろう。
◆ ◆ ◆
翌日になって、放課後。
ゼロス先生を誘ってクラトスに会いにいった。
「クラトスー!」
「ロイド……。何だそのイカにもタコにもアホそうな男は」
「ああ、ゼロス先生だよ」
「ど~も~」
すると、クラトスは先生に向かって――パイを投げつけたぁぁあ!!
「だはぁ!! いきなり何すんだ! 俺さまの老若男女を魅了する麗しい顔に泥ならぬクリームを塗りやがって!」
「お前のそのニヤニヤとした顔に苛立ちを覚えてな」
その言葉に、ゼロス先生が年甲斐もなくギャアギャアと噛みついている。
蚊帳の外の俺は、店内を見渡してみた。
目の前のショーケースには色とりどりのケーキやタルトが並び、左側にはマドレーヌやクッキーといった色々な焼き菓子が並んでいる。
右側のイートインスペースの壁棚に、金色の髪の少年と緑色の髪の女性が映った写真が飾られていた。
あれは――誰だろう。
いつの間にか落ち着いたゼロス先生と一緒に、店内でケーキを食べていくことになった。
「このメロンタルト、絶品だな〜〜! ホントにあのおっさんが作ったのか?」
「スタッフの手も借りているが……まぁ、殆どは私が作っている」
「クラトスってスゲェなぁ! どのケーキもハズレなしで美味いもん!」
「フ……」
◆ ◆ ◆
「じゃ、俺さま帰るわ。ロイドくん、数学の宿題ちゃんとやってきてくれると、俺さま嬉しいな♡」
一足先にゼロス先生が帰って、俺とクラトスの二人きりになった。
「なぁ……クラトス」
「何だ」
「もし、俺があんたの事を好きになったらどうする?」
「フ……何故そのような事を聞くのだ。告白か?」
「も……もしも、だよ」
数秒間、沈黙が続いて――急激に恥ずかしくなってきた。
何でこんな事を口にしてしまったんだろう。
言わなければよかったと思った矢先。
「……お前は、思い出していないのだな」
「え?」
「……いや、気にするな」
◆ ◆ ◆
今日は何だか眠れなかった。
『思い出す』って、何を思い出すんだろう?
ああ、もっとクラトスを知りたい。近付きたい。
想いがどんどん加速していく――。
【Story 3 Dream -夢想- 蘇ってく過去】
夢を見た。俺は剣を2本持って、戦っていた。
コレットとジーニアスに似てる人と一緒に戦っていた。
けど、敵が強くて負けそうになった時、助けてくれたのはクラトスと言っていいほど良く似ている人物だった。
リフィル先生もいたような気がする。
これは――『夢』……?
◆ ◆ ◆
「ロイド、どうしたのだ?」
「……ん。あ、ボータさん」
こっそり忍び込んだ事務室のベンチで居眠りしてたんだった。
この人――ボータさんは学校の事務をしている。
大半はユアン先生の手伝い係らしい。
そういえば、夢でもボータさんが出てきた。
敵……として――。
「さっきから何か考え込んでいるようだが」
「あ、特に何でもないんだ。んじゃ俺、授業に戻らなきゃ」
その場から逃げるようにして、俺は教室に引き返した。
変な夢も見たし、あまり長居したくない気分だった。
「今日はこの辺で……あ、ロイド君。遅かったな」
「ゼロス先生」
「はいよ、これ数学の宿題のプリント。すっごい点数だなぁ♡」
「あ、ありがとう……」
教室に戻るなり、5点のプリントを渡されるなんて……。
俺、今日ツイてないなぁ。
◆ ◆ ◆
授業が終わって、一人で帰宅する途中。
ふと小さい頃にケーキを食べて幸せに包まれた事を思い出して久々にケーキが食べたくなった俺は、帰り道とは逆方向のケーキショップに立ち寄る事にした。
『パティスリークルシス』の看板をくぐって店内に入った瞬間――目が丸眼鏡のように丸くなった。
「……いらっしゃい」
「ぐええっ!?」
何という事か。
場違いな所でクラトスと遭遇してしまった……!
青緑色のシャツに、紺色のエプロン姿だ。
異様だ。俺はクラトスに訊ねた。
「あんた――何してんだ?」
「この通り、ここで働いている」
「……苺のケーキ2つ。それと用事も1つ」
「良いだろう。ユアン、後の接客は頼んだぞ」
「まったく、お前は人使いが荒いな――お、ロイドか」
「ユアン先生まで!」
思わぬ再会の連続に驚きながらも、ケーキの入った箱を受け取り、クラトスを表に呼び出した。
「今日、あんたが来られない理由が分かったよ」
「……こんな私がケーキを作っている事を、お前は奇妙に思うか?」
「いや、全然。むしろカッコいいと思うぜ」
「カッコいい……?」
「ケーキは甘くて美味しくて、食べると幸せな気分になるよな。だから、あんたはケーキで食べた人を幸せにしてるはずだ。そんなのカッコいいしかないよ」
箱の中の苺のケーキを手づかみして、がつっと食べてみせた。
甘さも丁度良いし、苺と生クリームがスポンジと合っていて、とにかく美味しい。
「ほらな、美味い!!」
「……そうか」
「明日もここに来ていい?」
「……待っているぞ」
早速家に帰って、親父にも苺のケーキを振る舞った。
「お〜、うめぇなぁ! 誰がこのケーキ作ったんでぃ?」
「クラトスっていう人だよ」
「クラトス――」
名前を聞いた瞬間、親父の顔から笑顔が消えた。
どうしてだ?
「何か知ってるのか?」
「昔、テレビで――いや、俺の気のせいだ」
「ヘンな親父……」
様子のおかしい親父を背に、俺は部屋へ戻った。
宿題も全く手に付かない。
夢の事もあるし、何が何だか分からなくなりそうだ。
春の陽気で、俺も皆もおかしくなっちまったのか……?
もやもやした気持ちのまま、俺は眠りについた。
◆ ◆ ◆
そして、また夢を見た。
コレットに似てる人に紫色の光の羽……? みたいのが生えて、食欲や睡眠欲や感覚を失っていって、最終的には声を失った。
とても辛そうにしてるけどいつも笑ってて――健気で凄く可哀想に思えてきた。
でも何もしてあげられない自分が、とても無力だった。
そして旅の最終地点に着いて、仲間だったはずのクラトスが裏切った。
その時、ボータが助けてくれて……でも苦しかった。
これは何の夢だろう。
登場人物の名前も姿も同じなんて――気味が悪い。
もしかすると……俺達の前世、なのか?
この夢と、クラトスへの疑惑で揺れ動いている俺は、一体どうなるのだろう。
◆ ◆ ◆
翌日になって、放課後。
ゼロス先生を誘ってクラトスに会いにいった。
「クラトスー!」
「ロイド……。何だそのイカにもタコにもアホそうな男は」
「ああ、ゼロス先生だよ」
「ど~も~」
すると、クラトスは先生に向かって――パイを投げつけたぁぁあ!!
「だはぁ!! いきなり何すんだ! 俺さまの老若男女を魅了する麗しい顔に泥ならぬクリームを塗りやがって!」
「お前のそのニヤニヤとした顔に苛立ちを覚えてな」
その言葉に、ゼロス先生が年甲斐もなくギャアギャアと噛みついている。
蚊帳の外の俺は、店内を見渡してみた。
目の前のショーケースには色とりどりのケーキやタルトが並び、左側にはマドレーヌやクッキーといった色々な焼き菓子が並んでいる。
右側のイートインスペースの壁棚に、金色の髪の少年と緑色の髪の女性が映った写真が飾られていた。
あれは――誰だろう。
いつの間にか落ち着いたゼロス先生と一緒に、店内でケーキを食べていくことになった。
「このメロンタルト、絶品だな〜〜! ホントにあのおっさんが作ったのか?」
「スタッフの手も借りているが……まぁ、殆どは私が作っている」
「クラトスってスゲェなぁ! どのケーキもハズレなしで美味いもん!」
「フ……」
◆ ◆ ◆
「じゃ、俺さま帰るわ。ロイドくん、数学の宿題ちゃんとやってきてくれると、俺さま嬉しいな♡」
一足先にゼロス先生が帰って、俺とクラトスの二人きりになった。
「なぁ……クラトス」
「何だ」
「もし、俺があんたの事を好きになったらどうする?」
「フ……何故そのような事を聞くのだ。告白か?」
「も……もしも、だよ」
数秒間、沈黙が続いて――急激に恥ずかしくなってきた。
何でこんな事を口にしてしまったんだろう。
言わなければよかったと思った矢先。
「……お前は、思い出していないのだな」
「え?」
「……いや、気にするな」
◆ ◆ ◆
今日は何だか眠れなかった。
『思い出す』って、何を思い出すんだろう?
ああ、もっとクラトスを知りたい。近付きたい。
想いがどんどん加速していく――。
【Story 3 Dream -夢想- 蘇ってく過去】