TOS/全年齢

 温もりに包まれて


 冷たい風が吹く夜、ふたり仲良く同じベッドで眠ろうとした時。
 カチ、カチ、カチ……と一定のリズムを刻む音が、深い夜の静寂を乱している事に、少年は少しウンザリしていた。
「――なぁ、父さん」
「何だ?」
「何で時計の音って、静かな時に限ってよく聞こえるんだ?」
「それは、お前が時計の音を聞き取ろうと集中してしまうからだ」
「…だってよー。他の音って言っても、誰かのうるさいイビキか、遠くから聞こえる魔物の鳴き声くらいしか無いんだもん」
「フ……確かにな」
 反論出来る話題も見つからず。
「…では、こうすればいい」
 すると父は、突然息子の頭を自身の胸に抱き寄せた。
「うわぁ、な、何!」
「…こうすれば」
「え?」
「こうすれば……私の胸の鼓動しか聞こえないだろう?」
「……っ」
 確かにその通りだが、なかなか大胆なその行動に、息子は顔を真っ赤にしている。
「…どうした? 頬が少し赤みがかっている気がするのだが」
「あ、アンタのせいだぞっ…」
 トマトのように染まった顔を埋めたまま、両腕を父の背中へと回す。
「おやすみ、私の愛するロイド…」
「俺も好きだよ、クラトス。じゃあお休み…」
 互いに愛の言葉を囁いてから、ふたりは静かに眼を閉じた。
 また明日、眼が覚めても愛する人が側にいる事を願って。
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