TOS/全年齢

 天の川は見えない


 あの別れの日から、既に百年が経った。
 あの頃過ごした森や町は、今は跡も残さずに発展し大きな街となった。
 それを寂しいと実感した時、初めてアンタの気持ちが解るような気がした。まあ、所詮は気のせいなんだろうけど。
 百年という時間の中で、俺は何度アンタに逢いたいと思ったのだろう。
 もう届きはしないと理解している筈なのに。
 何故、手を伸ばしたくなるんだろう。
「……今日は、七夕の日か」
 大きな笹の葉。そこに吊るされた色とりどりの短冊。そう、今日は七夕の日だ。
 「届けばいいな」
 願い事を綴った紙切れを笹の葉に吊るす。
 彦星と織姫みたいに、離れた所にいるアンタと逢えたらいいな、という祈りを込めて。
 届かないと解っていても、俺は願い続ける。
 またいつか逢えると信じてるから。
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