TOS/全年齢

 冬の日の夢


「――今日も寒いな」
「この分だと、今夜は冷え込むだろうな」
「もし俺が風邪ひいたら、アンタは何してくれるんだ?」
「無論、看病するに決まっているだろう」
「ん、いや、そうじゃなくてさ…んっと……」
「…何が望みなのだ」
「……抱き締めてくれる…とか」
「良いだろう」
「えっ! ホントか?」
「ああ、約束する」
「んじゃ、指切りげんまん――」

「……ん」
 あれは、夢だったのか……?
 ついさっき指を結んだかのような感触がまだ指に残っている。
 思い返せば昔、そんなようなことを約束しようと指切りをした事がある。父さん――クラトスと。
 でもそれ以来……俺が風邪をひく事は無く、とうとう彼との別れの時を迎えてしまった。
 その日から二年が経とうしている。
 離れた遠い星の父への想いを未だ引きずったままで。

 やがて今年も、寒い季節が訪れようとしていた。
 吐き出された息は白くなり、宙を漂って消える。
 俺はただ、ぼーっとその場で消える白い息を見ていた。
 この季節は毎年、家の中や外に置かれたもみの木に装飾品が付けられ、非日常的な彩りに溢れている。
 赤いリボンや色んな色に光るライト……これを見ると、冬なんだなと思う。
 ふと手の甲を見ると、そこには白い雪。今夜は冷えそうだ。
「あ、時間……。ヤバい、遅れる!」
 今日はコレットの家でパーティが開かれる日。
 大きな鶏肉に豪華なケーキ、赤い服を纏った旅の仲間達が俺を待ってくれているだろう。
 ――父さん、行ってきます。
 そう心の中で大好きな彼に呟いてから、俺は走り出した。
 急がないと、きっと笑われるに違いないから。
「…っくしゅ!」
 くしゃみが出た。久々に風邪……ひいたかな?
『俺が風邪ひいたら、その時は父さんが面倒見てくれよ?』
『ああ、必ず、な』
 約束はちゃんと守れよな、クラトス。
 俺、いつでも待ってるから。ずっと、待ち続けるから――。
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