TOS/夏、あの空の下で
【Story 4】
一組の親子は、数日の間で随分と歩み寄った。
だからこそ、胸の内に秘めた思いを今言葉にする時だと思う。
父に遊びに行くか、と誘われて数日後。
ロイドとクラトスは、遊園地へ来ていた。
「父さん! あれ一緒に乗ろうぜー!」
「ジェットコースターか」
* * * *
「いやっほううー!」
「……っ(必死)」
「うわー楽しかった」
「あ……ああ」
父さんは少し疲れていた(酔った)
「あ、俺ソフトクリーム食いたいな」
「そうか」
近くの売店に寄り、ソフトクリームを買った。
「甘くて冷たいな!」
「……口の周りに付いてるぞ(指で取る)」
「もうっ! 恥ずかしいって!///」
そういえば、昔も二人で遊園地へ来た事があった。
『おとうさん、こっちこっち! はやくぅ』
『分かった……』
『わー! ろいど、あれたべたいな』
『あれとは何だ?』
『あいす!!』
『ソフトクリームの事か……』
『おいしーっ』
『……そうか』
『あ……うわぁあん! おとうさんのあいす、おとしちゃったよおお!』
『泣くな……また買ってやるから……』
『……ほんとう?』
『ああ』
『やくそくだよ?』
『よし、約束だ』
あの時の約束を、彼は今も覚えているのだろうか。
早速、この事を話すと。
「覚えてなかったな。遊園地に来た記憶はあったんだけど」
「そうか」
「なぁ、あれ乗ろうぜ」
「コーヒーカップ……」
ロイドの提案でコーヒーカップに乗る事にしたクラトス。だが……
「うわ~!」
「~(ぐるぐる)」
父は、翻弄されていた。
「うわー楽しかったな! ってあれ。どうした?」
「すまんな、少し酔ったみたいだ……」
「ん? 酒飲んだのか?」
「……先程のコーヒーカップで」
「そっか、じゃ休むか」
完全にロイドが舵を取ってしまっている事が、悲しくなってしまった父である。
* * * *
夜になり、辺りの照明が綺麗に彩られてきた頃。
「ロイド」
「なんだよ、そんな改まった顔で……」
「……観覧車にでも、乗らないか?」
「う、うん」
観覧車を見上げると、様々な絵柄に変化して、とても綺麗で。
思わずロイドは見とれてしまう。
「どうかしたのか?」
「あ、いや。綺麗だなーって思ってさ」
そうして観覧車に乗ったロイドとクラトス。
けれど少しの間沈黙が続くが、それを振り切ったのはクラトスだった。
「ロイド、今更この様な事を話しても許してはもらえぬかもしれんが、どうか聞いてくれ……」
「うん」
「……今まで私がロイドに冷たく接してきた理由は、“分からなかった”からだ。親としてどう接して良いのか躊躇ってしまっていた事、本当に済まない。だがお前が歩み寄ろうと努力するその姿を見て、私も打ち明けなければならないとそう思ったのだ。私は……」
「もういい……俺だって謝らなきゃいけない。今まで色々言ってごめん。……もちろん、俺は父さんを許すよ。なんたって俺の大切な父さんだからな!」
純粋過ぎるその言葉に、思わず涙が溢れてきた。
「……とうさ……泣いてるのか?」
「……」
その涙を隠す様にして、クラトスはロイドを抱き締めた。
「……父さん。空見て」
「……星が、綺麗だな」
夜空に光る星と、美しい照明が二人にはとてもロマンチックに見えた。
10分の揺り篭を終えて。
「俺、今日来てよかった」
「私もだ」
「もう帰るのか?」
「ああ。もうすぐ閉園だからな」
「なんか、もっとここにいたいなーって感じ」
「……家に帰らなくて良いのか?」
「いや! それは困る! でさ! 今回も何か買っていこうぜ」
「そうだな」
二人は、園内の売店へ立ち寄った。
「あ、これ良くない?」
「……ふむ」
二人が気に入ったのは、観覧車の絵柄が描かれたホルダー式の時計だった。
「これ、お揃い欲しい!」
「良かろう、色は?」
「同じ銀でいいと思う」
「そうか」
その時計を購入し、遊園地を出て家へ帰宅した。
「じゃ、お休みなさい」
「ああ。お休み」
朝の5時位に、玄関の扉が開く音がした。
「……?」
その音でクラトスはロイドが外出した事を知り、後を追う事にする。
急ぎはしない。あの子の行く場所はただ一つだから。
波の音を聞きながら、ロイドは考えに耽っていた。
「ふうー。なんか俺変わったな……」
仲が悪かった父と色んな所へ出掛けたり、自分の想いを打ち明けたり。ここ一ヶ月、色々な事があった。
「……これで良かったよな、俺達……」
「……まだ何か不満があるのか?」
「いや、むしろ前より……って、いつからいたんだよっ!」
「先程、お前を追い掛けたらここへ来た」
「ストーカーかっ!」
ストーカーと言われ、クラトスは落ち込む。
「あ……冗談だって!」
「分かっている」
「おいおい……」
「ところで、何故お前はここに来ているのだ?」
「なんていうか……波の音を聞くと、気持ちが落ち着くんだよな。だから落ち込んだ時とか迷った時に、気分転換しに来てる」
「それは、私のせいでもあるのだろう?」
「……うん」
クラトスはロイドを抱き寄せた。
「……済まないな。私は親として今まで何をしてきたのだろうな……」
「……“今まで”っていうの止めようぜ?」
「……?」
「今まで今までって、昔を見てても変わんない。だから、俺と父さんは“これから”を見る事にしよう?」
「……ああ、そうだな」
“今まで”を“これから”で塗り替える生き方をしよう、と決意した二人。
日が出てきた頃、灯台近くの時計台を見上げようとして。
「あ、そっか。こっちの時計は……もう6時か。さてと戻ろうぜ、父さん!」
「ああ」
海を離れようとして後ろを振り返ると、蒼く光る物を見つけた。ロイドは近くへ見に行く。
すると、それは蒼く光る小さな玉だった。
「……もらっていくか」
拾い、それを手の甲へ付けると何とくっついてしまった。
しかも、強力に付いてしまって、外れない。
「……! 取れないのかよ!」
なかなか戻ってこないのを心配したクラトスが向かう。
「どうした?」
「これ、ひっついて取れないんだ……」
「どれ……ふむ、取れないな」
「大丈夫かな」
特に気にする事も無く、家へ戻った二人であった。
これから起こる、悪夢の様な日々の原因だとは知らずに……
【Story 4 伝え合う、想いを】
一組の親子は、数日の間で随分と歩み寄った。
だからこそ、胸の内に秘めた思いを今言葉にする時だと思う。
父に遊びに行くか、と誘われて数日後。
ロイドとクラトスは、遊園地へ来ていた。
「父さん! あれ一緒に乗ろうぜー!」
「ジェットコースターか」
* * * *
「いやっほううー!」
「……っ(必死)」
「うわー楽しかった」
「あ……ああ」
父さんは少し疲れていた(酔った)
「あ、俺ソフトクリーム食いたいな」
「そうか」
近くの売店に寄り、ソフトクリームを買った。
「甘くて冷たいな!」
「……口の周りに付いてるぞ(指で取る)」
「もうっ! 恥ずかしいって!///」
そういえば、昔も二人で遊園地へ来た事があった。
『おとうさん、こっちこっち! はやくぅ』
『分かった……』
『わー! ろいど、あれたべたいな』
『あれとは何だ?』
『あいす!!』
『ソフトクリームの事か……』
『おいしーっ』
『……そうか』
『あ……うわぁあん! おとうさんのあいす、おとしちゃったよおお!』
『泣くな……また買ってやるから……』
『……ほんとう?』
『ああ』
『やくそくだよ?』
『よし、約束だ』
あの時の約束を、彼は今も覚えているのだろうか。
早速、この事を話すと。
「覚えてなかったな。遊園地に来た記憶はあったんだけど」
「そうか」
「なぁ、あれ乗ろうぜ」
「コーヒーカップ……」
ロイドの提案でコーヒーカップに乗る事にしたクラトス。だが……
「うわ~!」
「~(ぐるぐる)」
父は、翻弄されていた。
「うわー楽しかったな! ってあれ。どうした?」
「すまんな、少し酔ったみたいだ……」
「ん? 酒飲んだのか?」
「……先程のコーヒーカップで」
「そっか、じゃ休むか」
完全にロイドが舵を取ってしまっている事が、悲しくなってしまった父である。
* * * *
夜になり、辺りの照明が綺麗に彩られてきた頃。
「ロイド」
「なんだよ、そんな改まった顔で……」
「……観覧車にでも、乗らないか?」
「う、うん」
観覧車を見上げると、様々な絵柄に変化して、とても綺麗で。
思わずロイドは見とれてしまう。
「どうかしたのか?」
「あ、いや。綺麗だなーって思ってさ」
そうして観覧車に乗ったロイドとクラトス。
けれど少しの間沈黙が続くが、それを振り切ったのはクラトスだった。
「ロイド、今更この様な事を話しても許してはもらえぬかもしれんが、どうか聞いてくれ……」
「うん」
「……今まで私がロイドに冷たく接してきた理由は、“分からなかった”からだ。親としてどう接して良いのか躊躇ってしまっていた事、本当に済まない。だがお前が歩み寄ろうと努力するその姿を見て、私も打ち明けなければならないとそう思ったのだ。私は……」
「もういい……俺だって謝らなきゃいけない。今まで色々言ってごめん。……もちろん、俺は父さんを許すよ。なんたって俺の大切な父さんだからな!」
純粋過ぎるその言葉に、思わず涙が溢れてきた。
「……とうさ……泣いてるのか?」
「……」
その涙を隠す様にして、クラトスはロイドを抱き締めた。
「……父さん。空見て」
「……星が、綺麗だな」
夜空に光る星と、美しい照明が二人にはとてもロマンチックに見えた。
10分の揺り篭を終えて。
「俺、今日来てよかった」
「私もだ」
「もう帰るのか?」
「ああ。もうすぐ閉園だからな」
「なんか、もっとここにいたいなーって感じ」
「……家に帰らなくて良いのか?」
「いや! それは困る! でさ! 今回も何か買っていこうぜ」
「そうだな」
二人は、園内の売店へ立ち寄った。
「あ、これ良くない?」
「……ふむ」
二人が気に入ったのは、観覧車の絵柄が描かれたホルダー式の時計だった。
「これ、お揃い欲しい!」
「良かろう、色は?」
「同じ銀でいいと思う」
「そうか」
その時計を購入し、遊園地を出て家へ帰宅した。
「じゃ、お休みなさい」
「ああ。お休み」
朝の5時位に、玄関の扉が開く音がした。
「……?」
その音でクラトスはロイドが外出した事を知り、後を追う事にする。
急ぎはしない。あの子の行く場所はただ一つだから。
波の音を聞きながら、ロイドは考えに耽っていた。
「ふうー。なんか俺変わったな……」
仲が悪かった父と色んな所へ出掛けたり、自分の想いを打ち明けたり。ここ一ヶ月、色々な事があった。
「……これで良かったよな、俺達……」
「……まだ何か不満があるのか?」
「いや、むしろ前より……って、いつからいたんだよっ!」
「先程、お前を追い掛けたらここへ来た」
「ストーカーかっ!」
ストーカーと言われ、クラトスは落ち込む。
「あ……冗談だって!」
「分かっている」
「おいおい……」
「ところで、何故お前はここに来ているのだ?」
「なんていうか……波の音を聞くと、気持ちが落ち着くんだよな。だから落ち込んだ時とか迷った時に、気分転換しに来てる」
「それは、私のせいでもあるのだろう?」
「……うん」
クラトスはロイドを抱き寄せた。
「……済まないな。私は親として今まで何をしてきたのだろうな……」
「……“今まで”っていうの止めようぜ?」
「……?」
「今まで今までって、昔を見てても変わんない。だから、俺と父さんは“これから”を見る事にしよう?」
「……ああ、そうだな」
“今まで”を“これから”で塗り替える生き方をしよう、と決意した二人。
日が出てきた頃、灯台近くの時計台を見上げようとして。
「あ、そっか。こっちの時計は……もう6時か。さてと戻ろうぜ、父さん!」
「ああ」
海を離れようとして後ろを振り返ると、蒼く光る物を見つけた。ロイドは近くへ見に行く。
すると、それは蒼く光る小さな玉だった。
「……もらっていくか」
拾い、それを手の甲へ付けると何とくっついてしまった。
しかも、強力に付いてしまって、外れない。
「……! 取れないのかよ!」
なかなか戻ってこないのを心配したクラトスが向かう。
「どうした?」
「これ、ひっついて取れないんだ……」
「どれ……ふむ、取れないな」
「大丈夫かな」
特に気にする事も無く、家へ戻った二人であった。
これから起こる、悪夢の様な日々の原因だとは知らずに……
【Story 4 伝え合う、想いを】