TOS/夏、あの空の下で
【Story 1】
……今年もあの季節がやってきた。
「夏か……」
暑い陽射しを浴びながら少年、ロイドはこう呟いた。
しかし、その瞳は憂いをおびていた。
少しして、ロイドは帰宅した。
居間にいる男はロイドの父、クラトスである。
「と、父さ……」
すると、クラトスは冷たくこう言った。
「……何だ、用が有るのなら早く言え」
「……宿題、教えてほしいんだけど」
「……宿題など、友人にでも頼め」
「ご、ごめん……」
「……」
こんなぎこちない関係は本当は嫌なのに。
けれど、改変の術を持たずいつまでもこのままだ。
そもそも、この様な家庭になったのは14年前。
二人にとって大切な女性を事故で亡くしてからだ。
「……ちょっと友達の家に行ってくる」
「……」
バタンと扉が閉まった後。
「……気を付けるのだぞ」
本当は父も陰ながら息子を心配していた。
一方ロイドは、友人のコレットの家で勉強会を開いていた。
「なぁ、これ……何て読むんだ?(虎牙破斬)」
「……こがはざん、だよ。ロイドってもの覚え悪いの?」
隣の少年、ジーニアスは得意気に言った。
「それは言うなって!」
「あははは」
「二人とも、お茶入れてきたよ……ふみゅっ!」
少女はつまづいて転んだ。そしてお茶はロイドのほうへ……
「つめた! いだっ!」
お茶がかかり、更にガラス製のコップが足に直撃した。
「あああ! ロイド、ごめんね(涙)」
「コレットは悪くないよ」
「ロイドの運が悪かったんだよ、謝る事ないって!」
「お前なぁ~!」
こんな感じで勉強会を終えて家に帰宅する。
「……ただいま」
「……」
「……今日の夕飯、何?」
「……そこに置いてある」
台所には、近所のスーパーで買ってきた冷めた惣菜が置いてあった。
「……あ、ありがとな……」
「……」
自分の部屋で一人の食事。少し寂しかった。
その後、ロイドはこっそり家を抜け出して海へ出掛けた。
時刻は真夜中。誰もいない、静か過ぎる海を眺めてロイドはこう呟いた。
「どうしたら、父さんと仲良くなれるのかな……」
歩み寄りたい……けれどその存在は遠くて、届かない。
「……もう遅いし、帰らなきゃ」
バレたらまずい、と思ったロイドは急いで帰宅した。
家に帰ったが、クラトスは起きていなかった。
「ふう……走ったら疲れた。寝よっと」
いつまでこんな事を続ければいいのだろうか。
そして、ロイドは決心した。
『今年の夏こそ、父さんと楽しい思い出を作る』と。
彼が眠る頃には、朝日が昇っていた。
翌日の朝、ロイドは父に話し掛けてみる。
「お、おはよ……」
「……」
こちらに顔も向けず、職場へ向かう為の支度をする父。
「せ、せっかく話し掛けてやったのに無視すんなよ!」
「……煩い」
「……」
「……」
直後、沈黙が続く。しかしその空気を断ち切ったのはロイドだった。
「……時計、8時回ってる」
「……」
そう言うと、クラトスは急いで家を出ていった。
「……行ってくるぞ、ロイド」
宛てた本人には届かない様な声で、そう呟いた。
……無音な部屋が、何だか虚しかった。
「またやっちまった……どうすればいいんだろうな……」
お互い、歩み寄れずにいる事を二人はまだ知らない。
けれどいつか、それを知る時が必ずやってくるのだ。
歩み寄り、絶対的に幸せになれるとは限らないけれども。
【Story 1 海を眺めながら】
……今年もあの季節がやってきた。
「夏か……」
暑い陽射しを浴びながら少年、ロイドはこう呟いた。
しかし、その瞳は憂いをおびていた。
少しして、ロイドは帰宅した。
居間にいる男はロイドの父、クラトスである。
「と、父さ……」
すると、クラトスは冷たくこう言った。
「……何だ、用が有るのなら早く言え」
「……宿題、教えてほしいんだけど」
「……宿題など、友人にでも頼め」
「ご、ごめん……」
「……」
こんなぎこちない関係は本当は嫌なのに。
けれど、改変の術を持たずいつまでもこのままだ。
そもそも、この様な家庭になったのは14年前。
二人にとって大切な女性を事故で亡くしてからだ。
「……ちょっと友達の家に行ってくる」
「……」
バタンと扉が閉まった後。
「……気を付けるのだぞ」
本当は父も陰ながら息子を心配していた。
一方ロイドは、友人のコレットの家で勉強会を開いていた。
「なぁ、これ……何て読むんだ?(虎牙破斬)」
「……こがはざん、だよ。ロイドってもの覚え悪いの?」
隣の少年、ジーニアスは得意気に言った。
「それは言うなって!」
「あははは」
「二人とも、お茶入れてきたよ……ふみゅっ!」
少女はつまづいて転んだ。そしてお茶はロイドのほうへ……
「つめた! いだっ!」
お茶がかかり、更にガラス製のコップが足に直撃した。
「あああ! ロイド、ごめんね(涙)」
「コレットは悪くないよ」
「ロイドの運が悪かったんだよ、謝る事ないって!」
「お前なぁ~!」
こんな感じで勉強会を終えて家に帰宅する。
「……ただいま」
「……」
「……今日の夕飯、何?」
「……そこに置いてある」
台所には、近所のスーパーで買ってきた冷めた惣菜が置いてあった。
「……あ、ありがとな……」
「……」
自分の部屋で一人の食事。少し寂しかった。
その後、ロイドはこっそり家を抜け出して海へ出掛けた。
時刻は真夜中。誰もいない、静か過ぎる海を眺めてロイドはこう呟いた。
「どうしたら、父さんと仲良くなれるのかな……」
歩み寄りたい……けれどその存在は遠くて、届かない。
「……もう遅いし、帰らなきゃ」
バレたらまずい、と思ったロイドは急いで帰宅した。
家に帰ったが、クラトスは起きていなかった。
「ふう……走ったら疲れた。寝よっと」
いつまでこんな事を続ければいいのだろうか。
そして、ロイドは決心した。
『今年の夏こそ、父さんと楽しい思い出を作る』と。
彼が眠る頃には、朝日が昇っていた。
翌日の朝、ロイドは父に話し掛けてみる。
「お、おはよ……」
「……」
こちらに顔も向けず、職場へ向かう為の支度をする父。
「せ、せっかく話し掛けてやったのに無視すんなよ!」
「……煩い」
「……」
「……」
直後、沈黙が続く。しかしその空気を断ち切ったのはロイドだった。
「……時計、8時回ってる」
「……」
そう言うと、クラトスは急いで家を出ていった。
「……行ってくるぞ、ロイド」
宛てた本人には届かない様な声で、そう呟いた。
……無音な部屋が、何だか虚しかった。
「またやっちまった……どうすればいいんだろうな……」
お互い、歩み寄れずにいる事を二人はまだ知らない。
けれどいつか、それを知る時が必ずやってくるのだ。
歩み寄り、絶対的に幸せになれるとは限らないけれども。
【Story 1 海を眺めながら】