TOS/Promise -約束- プチリメイク版
【Story 8】
なぁ、クラトス。
遠い昔の『約束』覚えてるか……?
今日も夢を見た。
ミトスを倒しに向かった先で、皆が飛ばされた。
ミトスの幻の言葉で負の感情に飲まれそうになってた皆を、俺は必死で励ました。
そして、皆で決意を固めてミトスに挑み――俺達は勝利した。
その後、エターナルソードで世界は――ひとつに統合された。
夢はそこで醒めた。
次で、過去の全てを思い出すんだ。
クラトスとは、一体どうなるのだろう……。
◆ ◆ ◆
起きてすぐに、クラトスを迎えに行った。
……ゼロス先生を連れて。
頭を打ったはずなのにこんなに早く退院出来るのは、不幸中の幸いなのかな。
にしても、命に別状が無くて本当に良かった。
父さんまで俺を置いて旅立ってしまうなんて、考えたくもないからな――。
病院に着いて、病室で身支度をしている最中のクラトスを呼んだ。
「おーい!」
「ロイド……」
「お~い♡」
ゼロスの声をクラトスは無視した。
身支度が済んで、俺とゼロス先生が荷物を持って病院を出た。
クラトスが手配したタクシーに乗って家に帰る途中。
「……ロイドが迎えに来てくれるとはな」
「あったり前だろっ!」
「それと、このイカにもタコにもアホそうな男が、噂のゼロスか?」
「う、うん、まぁ……」
「……2回も全く同じ事言われると……流石に俺さま、腹立ってきちゃうな……」
「ジャッジメント!」
「うぉあっ!!」
「冗談だ。何故か反射的にこの言葉が浮かんだのでな」
「ビビらせた事謝れ!」
「……フ」
ゼロス先生とクラトスのやり取りに懐かしさを覚えながら、いつの間にかタクシーはゼロス先生の家の前に到着した。
庭付きの綺麗な一軒家だ。
「んじゃ、俺さまはここで。『また明日』な、ハニー……と親御さん」
「うん。今日は一緒に来てくれてありがとな、先生」
「次に会う時までにそのへらへらした態度を改めておく事だな」
『へらへら』という言葉に文句を付けてゼロス先生は車から降り、庭で花に水をやる女の子――セレスに「帰ったぜ〜」と一声かけて入っていく。
それを見送りながら、タクシーは再び走り出した。
◆ ◆ ◆
家に帰ってきた俺達は、それぞれ風呂に入って、一緒に飯を食べた。
それでも、やっぱりどこか他人行儀で――寂しくなる。
先にベッドに入っていたクラトスに奥にどいてもらって、少し冷えた体で温もりを堪能する。
見つめ合って「父さん」と呼ぶと、クラトスは「何だ?」と返した。
その顔は――少し赤みがかっていた。
「もしかして……照れてるのか?」
「いや……」
間違いなく照れてる。
記憶は無くても、クラトスはクラトスだな。
というのはさておき――どこまで思い出したんだろう?
「俺の事、どれくらい思い出した?」
「……全く」
「……そっか」
やっぱり、全部を思い出すのは何年もかかるのか……。
でも……立ち止まらないで二人で歩いていけば、ずっと一緒にいられる。
俺、そんな気がするよ。
「なぁ、クラトス。俺達――ずっと一緒だよな?」
「ああ……」
「本当に、一緒だよな?」
どうして、黙るんだ……? 俺に秘密にしてる事があるのか……?
「……俺に何か、隠してるだろ?」
クラトスは、さっきから俯いて黙ってしまっている。
「どうして隠すんだよ……そんなに……俺に言えない事なのかよ?」
クラトスは答えない。
「何か言えよ!」
クラトスは――答えない。
「もう父さんなんて知らない! 勝手にしろ!」
そう言い放って、クラトスとは別の部屋で寝る事にした。
そんなに俺に言えない事なのかよ……。
ずっと一緒だって言ってくれたのも、全部嘘だったのかよ……。
玄関に近い部屋の中に立ち入って灯りを付けると、本や古い家電、おもちゃ――色々な物が積み上げられていた。
まるで部屋全体が物置だ。
勝手に物色して、本と本の間に挟まっていたアルバムを手に取って開いてみると、そこには赤ん坊の写真が何枚もあった。
「これって、俺……?」
次々とページをめくっていくと、写真の中のクラトスと女性――母さんと共に、子供はどんどん成長していく。
『あの公園』で遊んでる写真、ケーキを頬張ってる写真。
遊園地で星形の風船を持ってる写真……。
それも、ある時を境に途絶えていた。
めくってもめくっても、空っぽのポケットのページが最後まで続いた――と思いきや、最後のページの最後のポケットに、色褪せた紙が入っていた。それを取り出して広げてみる。
『必ず探し出してみせる』
それを見た瞬間、涙が溢れて止まらなくなった。
捨てられた、なんて一瞬でも思ってしまった自分がバカだった。
手がかりのない中、クラトスは精一杯俺を探していたんだ――。
嗚咽を上げながら泣き続けた俺は、いつの間にか床に寝そべって眠っていた。
◆ ◆ ◆
そして、最後の夢を見た。
その内容は――俺とクラトスとの今生の別れだった。
本当は一緒にデリス・カーラーンに行きたかったけど、俺にはやるべきこと――第二の旅が待っていたから、笑顔で見送った。
でも――別れ際に約束したんだ。
俺達の、運命の約束……。
思い出すのに時間がかかってしまったけれど。
その『約束』は――!
◆ ◆ ◆
朝方、扉を開ける音と『すまないな』と呟く声が耳に入った。
目が醒めて部屋を見ると、そこにはクラトスの姿はなかった。
仕事に行ったのかなと思って久しぶりにケーキ屋に行ったけど……『閉店』と書かれた看板が置いてあって、人の声も食器の音も聞こえなかった。
突然閉店するって事は――海外へ留学しに行った、とか……?
同じ仕事仲間のユアン先生に話を聞きに、学校へ急いだ。
どうしてもクラトスの行方が知りたくて、無我夢中で走った。
とても嫌な予感がしたから……。
ゼロス先生なら何か知っているかもしれないと思って、校庭に居た先生に話しかけた。
「なぁ、ユアン先生ってどこにいる!?」
「ユアンなら、今頃は空港にいるだろうよ」
「何で先生が知ってるんだよ!」
「ま〜、色々事情ってのがあんのよ。来な、ロイド。空港まで飛ばしてやる」
何かを知ってるゼロス先生の車に乗り、急いで空港に向かった。
まぁ、急ぐっていっても……道路は車でいっぱいでかっ飛ばせない。
「……本当は、クラトスのヤツを追ってるんだろ?」
「どうして分かるんだ?」
「お前の顔見りゃ分かるっつーの。しっかし、アイツも馬鹿だなぁ……。一度ならず、二度までも可愛い息子を置いてくなんてよ」
「俺が昨日、あんな事言ったから……」
「いや、随分前から予定してたみたいだぜ。せっかく再会出来た息子――もとい『恋人』に別れを告げたくなかったんじゃねーか?」
「……ゼロス先生って、ふざけてるけど――人の事ちゃんと見てるんだな」
「……うひゃひゃ! そんなに褒めるなって!」
ゼロス先生は照れくさそうに笑い飛ばした。
先生が居なかったら、クラトスを追う事すら出来なかった。
前世もそうだったけど――おちゃらけてても、いざという時に頼りになる存在だよな。
やがて空港に着いて、車を降りた。
「先生、ありがとう!」
「頑張れよ!」
クラトスを追って、空港の中へ全力で駆けていく。
今度は――俺がクラトスを探し出す番だ。
「お前の気持ちを、ありのままぶつけろよーー!!」
混雑している空港の人波をかき分けて探し回る。
1階、レストランエリア――。
そして、出発ロビーでクラトスとユアン先生を見つけた。
出逢った時を思い出す紺色のコートの裾を引っ張って、前に進む足を止める。
「……なんで俺に黙って行っちゃうんだよ! ずっと昔、別れ際に『約束』したじゃないか!」
「約束……」
思い切って、口を開いた。もう、迷わない。
全部……思い出したから――!
「……俺達は、誓い合っただろ? 『来世出逢う時は、ずっと一緒にいよう』って!! 思い出してくれよ……クラトスっ!!」
俺は――心の底から叫んだ。
「……ロイド、ロイド!!」
クラトスは俺の方へ駆けてきて――俺をぎゅっと抱き締めた。
「……たった今思い出したのだ、ロイド……。私は……愚かだったな」
「父さんは悪くない……」
「……すまなかったな。もう一度、過去に成し得なかった事を、二人で……」
「うん……」
俺達は、その場でお互いを抱き締め合った。
キツく、キツく、もう離れたりしないように――。
◆ ◆ ◆
「お前達のせいで、私まで大恥をかいたではないか」
「……ごめん」
「……すまないな」
人前で熱く抱き合ってしまった事と、出国手続きのキャンセルという後始末を押し付けられたユアン先生がイライラしながら訴えかけてくる。
満席になったゼロス先生の車の中は賑やかだ。
「いや~ど~よ☆ やっぱ、俺さまって愛のキューピッドだろ~?」
「……いい加減、その態度を改めたらどうなのだ。しかし、ロイドを運んでくれた事には感謝する。……不本意ながらな」
「まったく、素直じゃねーの」
「だが、素晴らしい親子愛が見られて実に萌えだったぞ……うごぉっ!!」
ユアン先生の頭に、ごーんと大きな音が響いた。
◆ ◆ ◆
また、いつもと変わらない生活が始まる。
「……起きなさい、ロイド」
「……う~ん……あと5分……」
「起きないと三者面談を行うわよ……」
「そ、それは勘弁っ」
◆ ◆ ◆
後日談をざっと。
あれから三ヶ月が経って、クラトスはクルシスを新装開店する事にしたらしい。
ミトスとマーテルさんが帰国してきた事と、俺が手伝う事になったからだ。
名前は『クルシス』から『シンフォニア』に改名された。
絶対こっちのほうが似合ってるよな!
超余談。
TOAはクリアした。スッゲェ面白かったぜ!
あと、九九のかけ算も完璧にマスターしたんだぞ!
これも――父さんのお陰だな!
◆ ◆ ◆
――そして今、俺達は思い出のあの場所にいる。
出逢ったあの頃と同じ、満開の桜景色だ。
「あれから、色々あったよなぁ……」
「ああ」
「もしあの時、桜の下で出逢わなかったら……今の俺達は無かったんだよな」
「……そうだな。だが――」
「だが?」
「それでも、私達は出逢う運命にあったのだと、私は思う」
「へへっ、そうだな!」
好きな人と、ずっと一緒にいられる。
俺にとって、こんなに幸せな事はない。
今度こそ、幸せな道を一緒に歩くんだ。
そうだよな、クラトス――。
【Story 8 Promise -約束- 果たされた約束】
なぁ、クラトス。
遠い昔の『約束』覚えてるか……?
今日も夢を見た。
ミトスを倒しに向かった先で、皆が飛ばされた。
ミトスの幻の言葉で負の感情に飲まれそうになってた皆を、俺は必死で励ました。
そして、皆で決意を固めてミトスに挑み――俺達は勝利した。
その後、エターナルソードで世界は――ひとつに統合された。
夢はそこで醒めた。
次で、過去の全てを思い出すんだ。
クラトスとは、一体どうなるのだろう……。
◆ ◆ ◆
起きてすぐに、クラトスを迎えに行った。
……ゼロス先生を連れて。
頭を打ったはずなのにこんなに早く退院出来るのは、不幸中の幸いなのかな。
にしても、命に別状が無くて本当に良かった。
父さんまで俺を置いて旅立ってしまうなんて、考えたくもないからな――。
病院に着いて、病室で身支度をしている最中のクラトスを呼んだ。
「おーい!」
「ロイド……」
「お~い♡」
ゼロスの声をクラトスは無視した。
身支度が済んで、俺とゼロス先生が荷物を持って病院を出た。
クラトスが手配したタクシーに乗って家に帰る途中。
「……ロイドが迎えに来てくれるとはな」
「あったり前だろっ!」
「それと、このイカにもタコにもアホそうな男が、噂のゼロスか?」
「う、うん、まぁ……」
「……2回も全く同じ事言われると……流石に俺さま、腹立ってきちゃうな……」
「ジャッジメント!」
「うぉあっ!!」
「冗談だ。何故か反射的にこの言葉が浮かんだのでな」
「ビビらせた事謝れ!」
「……フ」
ゼロス先生とクラトスのやり取りに懐かしさを覚えながら、いつの間にかタクシーはゼロス先生の家の前に到着した。
庭付きの綺麗な一軒家だ。
「んじゃ、俺さまはここで。『また明日』な、ハニー……と親御さん」
「うん。今日は一緒に来てくれてありがとな、先生」
「次に会う時までにそのへらへらした態度を改めておく事だな」
『へらへら』という言葉に文句を付けてゼロス先生は車から降り、庭で花に水をやる女の子――セレスに「帰ったぜ〜」と一声かけて入っていく。
それを見送りながら、タクシーは再び走り出した。
◆ ◆ ◆
家に帰ってきた俺達は、それぞれ風呂に入って、一緒に飯を食べた。
それでも、やっぱりどこか他人行儀で――寂しくなる。
先にベッドに入っていたクラトスに奥にどいてもらって、少し冷えた体で温もりを堪能する。
見つめ合って「父さん」と呼ぶと、クラトスは「何だ?」と返した。
その顔は――少し赤みがかっていた。
「もしかして……照れてるのか?」
「いや……」
間違いなく照れてる。
記憶は無くても、クラトスはクラトスだな。
というのはさておき――どこまで思い出したんだろう?
「俺の事、どれくらい思い出した?」
「……全く」
「……そっか」
やっぱり、全部を思い出すのは何年もかかるのか……。
でも……立ち止まらないで二人で歩いていけば、ずっと一緒にいられる。
俺、そんな気がするよ。
「なぁ、クラトス。俺達――ずっと一緒だよな?」
「ああ……」
「本当に、一緒だよな?」
どうして、黙るんだ……? 俺に秘密にしてる事があるのか……?
「……俺に何か、隠してるだろ?」
クラトスは、さっきから俯いて黙ってしまっている。
「どうして隠すんだよ……そんなに……俺に言えない事なのかよ?」
クラトスは答えない。
「何か言えよ!」
クラトスは――答えない。
「もう父さんなんて知らない! 勝手にしろ!」
そう言い放って、クラトスとは別の部屋で寝る事にした。
そんなに俺に言えない事なのかよ……。
ずっと一緒だって言ってくれたのも、全部嘘だったのかよ……。
玄関に近い部屋の中に立ち入って灯りを付けると、本や古い家電、おもちゃ――色々な物が積み上げられていた。
まるで部屋全体が物置だ。
勝手に物色して、本と本の間に挟まっていたアルバムを手に取って開いてみると、そこには赤ん坊の写真が何枚もあった。
「これって、俺……?」
次々とページをめくっていくと、写真の中のクラトスと女性――母さんと共に、子供はどんどん成長していく。
『あの公園』で遊んでる写真、ケーキを頬張ってる写真。
遊園地で星形の風船を持ってる写真……。
それも、ある時を境に途絶えていた。
めくってもめくっても、空っぽのポケットのページが最後まで続いた――と思いきや、最後のページの最後のポケットに、色褪せた紙が入っていた。それを取り出して広げてみる。
『必ず探し出してみせる』
それを見た瞬間、涙が溢れて止まらなくなった。
捨てられた、なんて一瞬でも思ってしまった自分がバカだった。
手がかりのない中、クラトスは精一杯俺を探していたんだ――。
嗚咽を上げながら泣き続けた俺は、いつの間にか床に寝そべって眠っていた。
◆ ◆ ◆
そして、最後の夢を見た。
その内容は――俺とクラトスとの今生の別れだった。
本当は一緒にデリス・カーラーンに行きたかったけど、俺にはやるべきこと――第二の旅が待っていたから、笑顔で見送った。
でも――別れ際に約束したんだ。
俺達の、運命の約束……。
思い出すのに時間がかかってしまったけれど。
その『約束』は――!
◆ ◆ ◆
朝方、扉を開ける音と『すまないな』と呟く声が耳に入った。
目が醒めて部屋を見ると、そこにはクラトスの姿はなかった。
仕事に行ったのかなと思って久しぶりにケーキ屋に行ったけど……『閉店』と書かれた看板が置いてあって、人の声も食器の音も聞こえなかった。
突然閉店するって事は――海外へ留学しに行った、とか……?
同じ仕事仲間のユアン先生に話を聞きに、学校へ急いだ。
どうしてもクラトスの行方が知りたくて、無我夢中で走った。
とても嫌な予感がしたから……。
ゼロス先生なら何か知っているかもしれないと思って、校庭に居た先生に話しかけた。
「なぁ、ユアン先生ってどこにいる!?」
「ユアンなら、今頃は空港にいるだろうよ」
「何で先生が知ってるんだよ!」
「ま〜、色々事情ってのがあんのよ。来な、ロイド。空港まで飛ばしてやる」
何かを知ってるゼロス先生の車に乗り、急いで空港に向かった。
まぁ、急ぐっていっても……道路は車でいっぱいでかっ飛ばせない。
「……本当は、クラトスのヤツを追ってるんだろ?」
「どうして分かるんだ?」
「お前の顔見りゃ分かるっつーの。しっかし、アイツも馬鹿だなぁ……。一度ならず、二度までも可愛い息子を置いてくなんてよ」
「俺が昨日、あんな事言ったから……」
「いや、随分前から予定してたみたいだぜ。せっかく再会出来た息子――もとい『恋人』に別れを告げたくなかったんじゃねーか?」
「……ゼロス先生って、ふざけてるけど――人の事ちゃんと見てるんだな」
「……うひゃひゃ! そんなに褒めるなって!」
ゼロス先生は照れくさそうに笑い飛ばした。
先生が居なかったら、クラトスを追う事すら出来なかった。
前世もそうだったけど――おちゃらけてても、いざという時に頼りになる存在だよな。
やがて空港に着いて、車を降りた。
「先生、ありがとう!」
「頑張れよ!」
クラトスを追って、空港の中へ全力で駆けていく。
今度は――俺がクラトスを探し出す番だ。
「お前の気持ちを、ありのままぶつけろよーー!!」
混雑している空港の人波をかき分けて探し回る。
1階、レストランエリア――。
そして、出発ロビーでクラトスとユアン先生を見つけた。
出逢った時を思い出す紺色のコートの裾を引っ張って、前に進む足を止める。
「……なんで俺に黙って行っちゃうんだよ! ずっと昔、別れ際に『約束』したじゃないか!」
「約束……」
思い切って、口を開いた。もう、迷わない。
全部……思い出したから――!
「……俺達は、誓い合っただろ? 『来世出逢う時は、ずっと一緒にいよう』って!! 思い出してくれよ……クラトスっ!!」
俺は――心の底から叫んだ。
「……ロイド、ロイド!!」
クラトスは俺の方へ駆けてきて――俺をぎゅっと抱き締めた。
「……たった今思い出したのだ、ロイド……。私は……愚かだったな」
「父さんは悪くない……」
「……すまなかったな。もう一度、過去に成し得なかった事を、二人で……」
「うん……」
俺達は、その場でお互いを抱き締め合った。
キツく、キツく、もう離れたりしないように――。
◆ ◆ ◆
「お前達のせいで、私まで大恥をかいたではないか」
「……ごめん」
「……すまないな」
人前で熱く抱き合ってしまった事と、出国手続きのキャンセルという後始末を押し付けられたユアン先生がイライラしながら訴えかけてくる。
満席になったゼロス先生の車の中は賑やかだ。
「いや~ど~よ☆ やっぱ、俺さまって愛のキューピッドだろ~?」
「……いい加減、その態度を改めたらどうなのだ。しかし、ロイドを運んでくれた事には感謝する。……不本意ながらな」
「まったく、素直じゃねーの」
「だが、素晴らしい親子愛が見られて実に萌えだったぞ……うごぉっ!!」
ユアン先生の頭に、ごーんと大きな音が響いた。
◆ ◆ ◆
また、いつもと変わらない生活が始まる。
「……起きなさい、ロイド」
「……う~ん……あと5分……」
「起きないと三者面談を行うわよ……」
「そ、それは勘弁っ」
◆ ◆ ◆
後日談をざっと。
あれから三ヶ月が経って、クラトスはクルシスを新装開店する事にしたらしい。
ミトスとマーテルさんが帰国してきた事と、俺が手伝う事になったからだ。
名前は『クルシス』から『シンフォニア』に改名された。
絶対こっちのほうが似合ってるよな!
超余談。
TOAはクリアした。スッゲェ面白かったぜ!
あと、九九のかけ算も完璧にマスターしたんだぞ!
これも――父さんのお陰だな!
◆ ◆ ◆
――そして今、俺達は思い出のあの場所にいる。
出逢ったあの頃と同じ、満開の桜景色だ。
「あれから、色々あったよなぁ……」
「ああ」
「もしあの時、桜の下で出逢わなかったら……今の俺達は無かったんだよな」
「……そうだな。だが――」
「だが?」
「それでも、私達は出逢う運命にあったのだと、私は思う」
「へへっ、そうだな!」
好きな人と、ずっと一緒にいられる。
俺にとって、こんなに幸せな事はない。
今度こそ、幸せな道を一緒に歩くんだ。
そうだよな、クラトス――。
【Story 8 Promise -約束- 果たされた約束】