TOS/Promise -約束- プチリメイク版
【Story 7】
過去を思い出し、今を忘れる。
せっかく手に入れた幸せを失くす事が、こんなにも辛くて――苦しいなんて。
あれからわずか――4日。
クラトスが交通事故で意識不明になった。
幸い、大きな怪我は無かったみたいだけど、悲しかった。
それで今、病院にいる。
クラトスはずっと目を醒まさない。
このまま死んでしまうのかと思うと、涙が溢れてくる。
俺には『目を醒ましてくれ』と願う事しか出来ない。
整った綺麗な顔に、俺の涙がぽたぽたと落ちる。
それから――奇跡が起きたのか、まぶたがゆっくりと開かれた。
「クラトス、聞こえるか?」
すかさず声をかけると、クラトスはこう答えた。
「……すまないが、少年。名は、何と言うのだ?」
予想だにしない言葉に、全身の血が引いていくのを感じた。
こんな――こんなのって……!
「俺……ロイドだよ! 俺の事忘れちまったのかよっ!」
「……すまない。全く記憶になくてな」
4日前の朝、笑顔で出迎えてくれたのに。
どうして忘れちゃうんだよ……!
「……すまない、泣かせてしまって……」
涙が止まらない……。
「……クラトスは……ぐすっ……悪くないから……」
「私も思い出せるよう努力する。だから泣かないでくれ」
それからしばらく、記憶を失くしたクラトスは俺をあやしてくれた。
辛いのは、クラトスの方なのに……。
落ち着いた頃、俺達の関係や仕事の事などを教えた。
無垢な表情をしている事から、本当に全部忘れてしまっているんだな……と実感した。
話している内に、時計の針は20時を回っていた。
もうすぐ病院の消灯時間だから、帰らなきゃならない。
クラトスと別れるのは惜しいけど、また明日会いにいけばいいか。
「じゃ俺、家に帰らなきゃ。また来るよ」
「……ああ、また色々な事を教えてほしい」
クラトスの家に帰って、色んな事を整理してみる。
同居生活を始めて、とても幸せだった。
事故に遭った。
それで今日、意識が戻ったけど――記憶喪失になっていた。
いつか思い出すと分かってるんだけど……早く思い出してほしいと思ってしまう俺は、なんて酷いヤツなんだろう。
……今はちょっと、クラトスの温もりが恋しい。
明日も学校だ。もう寝ないと。
◆ ◆ ◆
今日も夢を見た。
……クラトスの過去の罪に引導を渡すため、一騎打ちをした。
勝利したのは俺で、負けを認めたクラトスは死ぬ気で封印を解放する。
倒れたクラトスにユアンが自分のマナを分けて、彼は辛うじて生き延びた。
その後、クラトスは自分の愛用の剣をくれた。
さらに怪我を圧してまで最後の旅についてきてくれた。
やっぱり、クラトスは――父さんであり、恋人なんだなという事を思い知った。
◆ ◆ ◆
放課後。
授業が終わった後、寄り道せずに病院へ駆け込んだ。
病室に入ろうとして、俺は手を止めた。
俺の名前を呟いているようだったから、扉をほんの少しだけ開けて中を覗いてみる。
そこには――ロイド、ロイド、と繰り返して、俺と撮った写真を見つめながら、記憶を取り戻そうとしているクラトスの姿があった。
その姿を見ている内に、涙が溢れてきた。
涙を拭って、今来たかのような振りをして病室に入った。
「……クラトス、元気か?」
「ああ」
俺は、思い切って聞いてみた。
「……なんで写真持ってるんだ?」
「……この写真をどんな思いで撮ったかは分からぬが、とても幸せな気持ちになるのだ。……それと、お前の事を思い出せる気がしてな」
「……ごめん」
「何故謝るのだ」
「……クラトスがこんなに頑張ってるのに、俺……何も出来ないなんて情けないよな」
「そんな事は無い。お前の言葉に耳を傾け、お前の仕草を見る事が、今の私の生き甲斐なのだ」
「……ごめん。いや。俺、最近謝ってばかりだな」
「……もう謝るな。ところで、伝えるのが遅くなったが――明日、退院出来るそうだ」
「本当か!? じゃあ、明日は俺が料理振る舞うぜ!」
「楽しみにしておこう」
こうして話してると、記憶があった頃とあまり変わらないけど……気を遣ってくれてるみたいだから、まるで出逢った頃みたいだな。
今日も消灯時間まで一緒にいて、たくさん話した。
明日は楽しみだなぁ。
◆ ◆ ◆
「ロイドにこの事は伝えてあるのか?」
「今更あの子に言える訳がないだろう」
「何だと? お前はどこまでも人でなしだな。一度ならず二度までも息子を置き去りにするような父親を持って、ロイドも可哀想だ」
「……フ。確かに――私は最低な父親だな」
「今ならまだ間に合う。キャンセルしろ」
「実の息子を愛してしまった私に、あの子の前で父親として共に居る資格などない……」
――これが、クラトスが事故に遭う3日前の会話だ。
なんと身勝手な理由だろうか。
生き別れた父親とようやく再会出来たロイドの心情も考えずに――。
流石に今回ばかりは見過ごせん。
何か手を打つべきだろう――。
【Story 7 Memory -記憶- 二人の試練】
過去を思い出し、今を忘れる。
せっかく手に入れた幸せを失くす事が、こんなにも辛くて――苦しいなんて。
あれからわずか――4日。
クラトスが交通事故で意識不明になった。
幸い、大きな怪我は無かったみたいだけど、悲しかった。
それで今、病院にいる。
クラトスはずっと目を醒まさない。
このまま死んでしまうのかと思うと、涙が溢れてくる。
俺には『目を醒ましてくれ』と願う事しか出来ない。
整った綺麗な顔に、俺の涙がぽたぽたと落ちる。
それから――奇跡が起きたのか、まぶたがゆっくりと開かれた。
「クラトス、聞こえるか?」
すかさず声をかけると、クラトスはこう答えた。
「……すまないが、少年。名は、何と言うのだ?」
予想だにしない言葉に、全身の血が引いていくのを感じた。
こんな――こんなのって……!
「俺……ロイドだよ! 俺の事忘れちまったのかよっ!」
「……すまない。全く記憶になくてな」
4日前の朝、笑顔で出迎えてくれたのに。
どうして忘れちゃうんだよ……!
「……すまない、泣かせてしまって……」
涙が止まらない……。
「……クラトスは……ぐすっ……悪くないから……」
「私も思い出せるよう努力する。だから泣かないでくれ」
それからしばらく、記憶を失くしたクラトスは俺をあやしてくれた。
辛いのは、クラトスの方なのに……。
落ち着いた頃、俺達の関係や仕事の事などを教えた。
無垢な表情をしている事から、本当に全部忘れてしまっているんだな……と実感した。
話している内に、時計の針は20時を回っていた。
もうすぐ病院の消灯時間だから、帰らなきゃならない。
クラトスと別れるのは惜しいけど、また明日会いにいけばいいか。
「じゃ俺、家に帰らなきゃ。また来るよ」
「……ああ、また色々な事を教えてほしい」
クラトスの家に帰って、色んな事を整理してみる。
同居生活を始めて、とても幸せだった。
事故に遭った。
それで今日、意識が戻ったけど――記憶喪失になっていた。
いつか思い出すと分かってるんだけど……早く思い出してほしいと思ってしまう俺は、なんて酷いヤツなんだろう。
……今はちょっと、クラトスの温もりが恋しい。
明日も学校だ。もう寝ないと。
◆ ◆ ◆
今日も夢を見た。
……クラトスの過去の罪に引導を渡すため、一騎打ちをした。
勝利したのは俺で、負けを認めたクラトスは死ぬ気で封印を解放する。
倒れたクラトスにユアンが自分のマナを分けて、彼は辛うじて生き延びた。
その後、クラトスは自分の愛用の剣をくれた。
さらに怪我を圧してまで最後の旅についてきてくれた。
やっぱり、クラトスは――父さんであり、恋人なんだなという事を思い知った。
◆ ◆ ◆
放課後。
授業が終わった後、寄り道せずに病院へ駆け込んだ。
病室に入ろうとして、俺は手を止めた。
俺の名前を呟いているようだったから、扉をほんの少しだけ開けて中を覗いてみる。
そこには――ロイド、ロイド、と繰り返して、俺と撮った写真を見つめながら、記憶を取り戻そうとしているクラトスの姿があった。
その姿を見ている内に、涙が溢れてきた。
涙を拭って、今来たかのような振りをして病室に入った。
「……クラトス、元気か?」
「ああ」
俺は、思い切って聞いてみた。
「……なんで写真持ってるんだ?」
「……この写真をどんな思いで撮ったかは分からぬが、とても幸せな気持ちになるのだ。……それと、お前の事を思い出せる気がしてな」
「……ごめん」
「何故謝るのだ」
「……クラトスがこんなに頑張ってるのに、俺……何も出来ないなんて情けないよな」
「そんな事は無い。お前の言葉に耳を傾け、お前の仕草を見る事が、今の私の生き甲斐なのだ」
「……ごめん。いや。俺、最近謝ってばかりだな」
「……もう謝るな。ところで、伝えるのが遅くなったが――明日、退院出来るそうだ」
「本当か!? じゃあ、明日は俺が料理振る舞うぜ!」
「楽しみにしておこう」
こうして話してると、記憶があった頃とあまり変わらないけど……気を遣ってくれてるみたいだから、まるで出逢った頃みたいだな。
今日も消灯時間まで一緒にいて、たくさん話した。
明日は楽しみだなぁ。
◆ ◆ ◆
「ロイドにこの事は伝えてあるのか?」
「今更あの子に言える訳がないだろう」
「何だと? お前はどこまでも人でなしだな。一度ならず二度までも息子を置き去りにするような父親を持って、ロイドも可哀想だ」
「……フ。確かに――私は最低な父親だな」
「今ならまだ間に合う。キャンセルしろ」
「実の息子を愛してしまった私に、あの子の前で父親として共に居る資格などない……」
――これが、クラトスが事故に遭う3日前の会話だ。
なんと身勝手な理由だろうか。
生き別れた父親とようやく再会出来たロイドの心情も考えずに――。
流石に今回ばかりは見過ごせん。
何か手を打つべきだろう――。
【Story 7 Memory -記憶- 二人の試練】