スティラルカ夢
アナタの名前を呼んでもいいですかー?嫌ですか。嫌と言ってもスッチーは勝手に呼びますよ~!
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【なにがしたいの】
「ごきげんいかがですかーアユムさん?」
と、珍しく普通に声を掛けてきたのは勿論スティラルカだった。
『……スティラルカ』
一日の終わりにこんなヤツに会うなんて、ついてない。
「やはり!スッチーはアユムさんの運命です。そうは思いませんか?」
わたしは答えてないのに、スティラルカはかまわず話を続ける。
「思いますよね?それなら今ここでアユムさんをスマキにして屋敷まで転がしま……」
このすきに逃げよっと。
「スティラルカ様」
スティラルカの隣で控えていたユエが声を発した。
「あぁなんて美味!!……何ですかユエ?」
「行ってしまわれました」
スティラルカは一瞬唖然として、溜息をついた。
「おやおや、アユムさんは恥かしがりやさんですね~。私困ってしまってメエメエですよ」
「スティラルカ様、それは違います」
スティラルカとユエはアユムの行った道と逆方向に歩き出す。
「私から攻めるのは趣味じゃないんですがねー。ユエ、」
「はいスティラルカ様」
「明日はクラの所に行って来ますねー」
――翌日。
『スティラルカ?』
何でいるのよ何で!!
「またクラとお茶しに来ただけですよ~。ねークラ?」
「はい。アユムさんも一緒にいかがですか?」
クラウスに紅茶を差し出されて、結局一緒することになった。
何だか前にもこんなことがあった気がする。
『ところでスティラルカ、前から気になってたんだけど』
スティラルカの隣りに座りながら聞く。
「はい?」
『それって癖?』
スティラルカのティーカップを持った手を見つめる。
「癖?」
ピーンって。
『小指』
んんっ?とか言いながら、不自然なくらいに自分の小指を見つめるスティラルカ。
「おやおや、かわいらしい癖じゃありませんか?」
自分でかわいらしいとか言わないで!
『知らない』
そして笑顔でじりじり寄って来る。
「コレはですねえ、こうするんですよ」
カップを持っていない方の小指を立てて、わたしの頬にぷにっ、って?!
『違うでしょ?!』
勢いよく立ち上がって気付いた。
『あれ?クラウスは?いない?』
「クラはお手洗いへ行きましたよー」
なんだか怪しい。
『ホントに?』
「はい、嘘です」
さぁこの変態、どうしてやろうか。
『宇宙の彼方まで飛んでってくれない?』
「できますが、それではアユムさんとベトベトできないですからねー、イヤです」
できるんだ?!
『ベトベトってなによ、気持ち悪い』
「相変わらずひどいですねえアユムさんは。飲みますか?」
そう言って差し出されたのは、スティラルカのスラリと長い小指。
『は?何を飲むの』
「ほらほら、ほーら。私の血がだんだん欲しくなりますよー」
ニコニコ。
『血っ?!そんな物っ……えっ?!』
苦しい、動悸が激しい。
「ちょっぴりイタズラさせもらいました」
喉が渇いて、おかしくなりそう。
『っ、イタズラ?』
何だかかなり嫌な予感がする。
「アユムさんの紅茶にほんの少ーし、私の血を
『いれたの?!』
「もちのろんです」
それをわたしは気付かずに飲んだって?
『イヤァアア!?この変態っ!!!』
「褒め言葉として、受け
『とらないで!』
不覚だった。
そうだよね、スティラルカがいるんだから、隅々まで怪しんでおくべきだった。
「どうします?飲みたいですか?」
そういえばスティラルカって吸血鬼だったっけ。
『飲ま、ない』
スティラルカはなにがしたいんだろう。
「頑固ですねえ、眉毛が全部ハゲてしまいますよ?」
『ハゲないっ!!』
スティラルカは音もなく立ち上がる
不意に近付き、後ろから抱き寄せられた。
「可愛いアユムさんをスマキにでもして、お持ち帰りしたいところなんですが」
『やめて、って言うか離してよ』
スティラルカの唇がわたしの首もとに触れ。
『ちょ、何す……』
ねっとりといやらしくスティラルカの舌が這う。
『ヤメ……っ』
右手で口を塞がれてそれ以上なにも言えない。
「痛くしませんから大丈夫ですよ。でも気持ち良すぎて……フフフ」
スティラルカー!?
最後に見たのはスティラルカの悪人顔。
それからなにか言ってたような。
「アユムさん、私を選んだら帰してなんかあげませんよー?」
そこからは完全に記憶がない。
目が覚めたら自室にいて、クラウスが横にいた。
『あれ、わたし?』
「貧血で倒れられたんです、大丈夫ですか?」
心配そうにわたしを覗き込むクラウス。
『うん、平気』
スティラルカは罪悪感ってものを感じないのかな。
「そうでした、アユムさん宛てに手紙が来ていたんです、はいどうぞ」
手渡された封筒は紫色。
紫……色……?
「裏に名前が書いてあるみたいなんですが、どうにも読めなくて。読めますか?」
裏返すとそこには、
"アユムさんのスティラルカより″
の文字が片仮名と平仮名で書いてある。しかも達筆。
『スティラルカからの手紙みたい』
開けたくないんだけど。
「じゃあ私はそろそろ失礼します」
『わかった、ありがとうクラウス』
クラウスを見送ってから、しばらく不気味な色の封筒をただ見つめてた。
『はぁ』
ずっと見てるだけじゃ仕方ないから、意を決して開けてみる。
そーっと。
『えっと?』
中に入っている便箋も日本語で書いてあった。
そしてやっぱり達筆。
スティラルカって一体何者なんだろう。
"私の大切なアユムさんへ。
今日は一緒にお茶できて、天にも昇るような気分でした。
また一緒にどこへでも行きましょう、強制ですから安心して下さいねー。
なんなら家にお嫁に来てくれて構いませんよ、一緒にスマキで空を飛び、舞いましょう!
それからご馳走さまでした、アユムさんはすごく美味で、もうスッチーメロメロのトロントロンです。
初めて会った時からですけどねえ。
私の愛するアユムさんへ、スッチーより。″
『なにコレ』
突っ込みたいところが山ほどあるんだけど、そんなに怒る気にもなれなくて。
ついにわたしの思考回路までおかしくなってきたのかな?
いやいや、それはないよ、ちょっとスティラルカが気になってるだけだから。
ましてや恋愛感情なんか……
『はー……』
重症だ、わたし。
『スティラルカのバカ』
噂をすれば何とやら。
ボソッと言い終わるのと同時に、部屋になにかが入って来た。
「はい、あなたの愛するスッチーですよ~♪」
ちっちゃい何か、スティラルカ型で手の平サイズのチビ人形が歩いてくる。
「はい、あなたの愛するスッチーですよ~♪はい、あなたの愛するスッチーですよ~♪はい、あなたの愛するスッチーですよ~♪は……」
エンドレスに流れる、録音されたらしきスティラルカの声。
『どこからここまで来たの?!もう、いい加減にしてよ!!』
こんな物を作る暇があるならその性格を直しなさいよ?!
「はい、あなたの愛するスッチーですよ~♪」
わたしはそのうるさい物を掴みあげた。
「……愛していますよ、アユムさん」
『?!?!』
今、違うセリフが聞こえたんだけど?!
しかもそれっきり何も言わなくなった、と思ったら。
「んふふふ~んふふふふ~んふふふふふ~」
気味悪く笑い出した。
それに驚いたわたしは悲鳴をあげた。
『イィヤァァアアアアアアァッ!?』
わたしの悲鳴に気付いたクラウスが駆け付け、チビ人形は破壊された。
本当になにがしたいのかわからないけど、そんなに悪い人じゃないのはわかってるから憎めない。
すごくうざいけど。
わたしってスティラルカのこと、結構好きなのかも?
スティラルカ型チビ人形の残骸を見て、笑いが漏れた。
《END》だんだん私をすきにな~る☆
2008.9.12(2024.6.28加筆修正)
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