シグルド夢
オマエの名を呼ばせてくれるか?
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【St.Valentine】
エリダラーダから地球に戻ってきて、もうすぐ1年。
『ん~』
自宅の窓から見える空は晴れやかだ。
今日は快晴らしい。
『さて、作ろっ』
ちなみに明日はバレンタインデー。
シグルドと一緒に帰って来て迎える、初めてのバレンタイン。
『やっぱり生チョコかな?それともトリュフ?』
とかぶつぶつ言ってると、シグルドがキッチンに入ってきた。
「アユム?なにをしている?」
『わーっ!?なっ、なにもしてないから!!』
不思議そうに首をかしげるシグルド。
『えっと』
わたしが困っていると、お母さんがひょっこり現われてシグルドをどこかへ引きずって行く。
温泉の無料チケットがあるから、良い経験にもなるだろうし一緒に行こうとのことだ。
「しかし、」
去り際、お母さんはわたしに頑張れと言い残して行ってしまった。
『なんというか、複雑』
――温泉。(シグルド)
結局、温泉とやらへ連れてこられてしまった。
ごめんなさいねと謝るアユムの母。
アユムは今、一人になりたいらしい。
「アユムはどこか悪いんだろうか?様子が変だった」
どこか悪い訳ではなく、明日になれば分かると?
なにかあるのか?
考え込んでいるうちに温泉の手順の説明が始まる。
気になるが失礼なことはできない。
温泉に集中しなければ。
結局、生チョコを作ってみた。
『よし完成!』
ラッピングも完璧。
あとは明日シグルドに渡すだけ。
「喜んでくれるかなー」
とか思ってる場合じゃなかった。
片付け片付け。
「今帰った」
お母さんとシグルドが帰ってきたのは夕方だった。
『お帰り~、ってなにその荷物』
シグルドの両手には大量の荷物。
中身は食べ物らしく、キッチンへと運ぶ。
せっかくたくましい人がいるからと、いっぱい買ってきちゃったらしい。
いっぱいにも限度があると思うけど。
――ガチャッ。
「ただいまー」
お兄も帰宅した。
『お帰り~』
「おなか減ったー。晩飯まだ?」
帰ってきてまずそれ?
お母さんに素っ気ない返事をしてお兄は自室に向かう。
『あ、お母さん、今日はありがと。すっごく助かった』
お母さんはニッコリと微笑んだ。
――晃の部屋。(シグルド)
この世界に来て俺はずっと、アユムの兄の部屋で寝泊まりしている。
当然と言えば当然だ。
「初めて銭湯行って来たんだって?」
夕食も入浴も済ませた俺は、アキラの部屋で寝る準備をしていた。
「あぁ」
「どう?感想は」
「なかなか良い物だった。露天風呂という物は特に素晴らしい」
「なるほど~。露天風呂に感動か」
うんうんとうなずいているアキラ。
「アキラ」
「何?」
「明日は何か特別な日なのか?」
「え……」
アキラはしばし固まる。
「あれ?知らない?明日はバレンタインデー。女子が好きな人にチョコを贈る日」
チョコ?は確かコチョのことだったな。
「好きな人にか?」
アキラは説明し始める。
「まぁ義理チョコもあるけど、好きな人にあげるのは本命チョコって言って……」
なるほど。ニッポンの風習は面白い。
「で、分かったか?」
「あぁ。これで理由が理解できた」
アユムが朝、キッチンで挙動不審だったわけが。
「何シグルド。ニヤニヤして気持ち悪いな」
「嬉しいものは仕方ないだろう」
アユムが俺のために作ってくれていたのだと思うと、頬が緩んでしまう。
「まぁ見てろ。明日いっぱいチョコ持って帰ってくるから!」
「どうだかな」
「なにぃ!?」
――翌日。(晃)
学校から帰って来た俺の手にはチョコがひとつもなかった。
「アユム~……」
出迎えてくれたのは同じく制服姿のアユム。
『ほら、可愛い妹がちゃんとチョコあげるから』
嬉しいやら悲しいやら。
「どうせシグルドのついでなんだろー、知ってるんだからなー」
あぁ悲しい。
『そうなんだけどね』
「否定しろよ、おい。かなり悲しいだろ」
俺が惨めだろ。
『あ、シグルドちょうど良かった』
「ぁ……」
なんなんだ、今年のバレンタインは。
ラッピングした箱をシグルドに持って行く。
「なんだ?」
『はい、チョコ』
シグルドのだけは、ちゃんと別に作ったんだ。
「………」
シグルドは無言で、わたしがあげたラッピングを見つめる。
『シグルド?』
「あぁ、すまない。ありがとうアユム」
シグルドは複雑そうな顔をして、お兄の手にあるチョコを見つめた。
「あれ?おそろいだな!」
お兄とラッピングが同じだからか。
『あぁ、えっとね』
うわぁ、本人目の前にして"本命チョコです″なんて恥ずかしい。
『しっ、シグルドのだけは……その、あのっ、特別だからっ!!』
恥ずかしすぎる!
「あ……」
わたしは慌てて自室に逃げ込んだ。
シグルドはなにか言おうとしてたみたいだけど、そんなの聞くどころじゃない。
このほてった頭と顔を何とかしなきゃ。
――晃の部屋。(シグルド)
アユムに逃げられてしまった。
「顔、真っ赤だぞ?」
アキラが俺の顔をのぞき込む。
「そ、そうか?」
アキラの部屋へ入ってから気付いた。
「アキラ、チョコはどうした?」
「へっ?!俺はその……」
なるほど、やはりもらえなかったのだな。
「収穫はなしか」
「一応2個はもらったんだ!!」
そう言いながら俺に見せたチョコの包みは、俺がもらった物と同じだった。
「母さんとアユムにだけど」
「ハッ、ハハハハッ」
「わ、笑うなー!!」
溜息をつきながらチョコを取り出すアキラ。
俺も続いてアユムからもらったチョコを取り出す。
「なぁ、なんかシグルドのチョコでかくないか?」
「気のせいだろう」
気のせいではないな。
明らかにアキラのチョコはひとまわり小さい。
「気のせいってなぁ」
「愛だろう」
「ガーン。アユム~お兄ちゃんへの愛はどこへ行ったんだ~?」
アキラにとって、今年のバレンタインデーはついてないらしい。
――コンコン。
「アユム、入ってもかまわないか?」
聞いておきながらドアを開けるシグルド。
『は!?シグルド!?』
びっくりした、シグルドがわたしの了な無しにズカズカ部屋に上がるなんて。
「す、すまない」
慌ててシグルドはドアを閉める。
『……っ!!』
そういえば、わたし着替え中だったんだ。
大急ぎで着替えてドアを開けると、左手で顔を押えたシグルドがいた。
『シグ~?』
「本当にすまなかった。許してくれ」
シグルドはいつまでもうなだれている。
なんだか、からかいたくなっちゃった。
『じゃあ、キスしてくれたら許す』
と、目を閉じてみる。勿論冗談で。
だから目を開けた時、シグルドのドアップが目に入って驚いた。
『シっ……んっ?!』
時すでに遅し、とはまさにこのこと。
「キスのときは目を閉じるものだろう?」
『~~冗談だったんだけど!』
なんでわたしはこう、やられてばかりなのか。
「ああ。許してはくれるか?」
『許すもなにも最初から怒ってないよ。さっきは言ってみただけだし』
シグルドは急にクックッと笑い出す。
「いや、本当に悪かった。冗談とはわかっていたんだ、だがついアユムが可愛いくてな」
そんなぁ。
『逆にからかわれた』
シグルドはまだ笑っている。
『で、何かわたしに用があって来たんでしょ?』
「あぁ、忘れていた。チョコが美味だったと言いたくてな」
わざわざそれだけのために?
「それから、ホワイトデーだったか?その日は期待していてくれ」
はぁ、なんというか。
やっぱりシグルドには負けるなぁ。
『うん、期待しとく』
まぁ嬉しかったから今日はお兄と違って、ついてたっていうことで。
うん、今日は良い日だ。
《END》チョコレート2つ
Q. How many chocolates did you receive on St.Valentine Day?
「なんだこの宿題"バレンタインにいくつのチョコをもらったか″だって?その質問を俺にするな!!」
『お兄は家族からしかもらってないもんね』
「言うなー!!」
『シグルドに偉そうなこと言っちゃってさ』
「何でアユムが知ってるんだよ!?」
『さぁ?風の噂』
「絶対シグルドだろ!」
『アハハ』
A. I'm chocolates receive of two from mother and sister.
「お兄ちゃんが本命じゃないなんて、俺は悲しい!」
リクエストありがとうございました!
2008.2.14 (2024.6.28最終修正)
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