シグルド夢
オマエの名を呼ばせてくれるか?
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【約束したのに・・・・】
『来ない』
お城の門前で1時間待っているわたし。
「明日、その……渡したい物があるんだが」
そう言って場所を指定した本人は遅刻。
『シグルドのバカ』
空が青いよ、悲しくなるくらい青い。
「あ、アユムお姉さん。こんにちは」
城から出て来たのは髪をひとまとめにしたアレク。
『こんにちは、またイヴァンの所に行くの?』
うなずくアレク。
「あ、アユムお姉さんはシグルドを待っているの?」
『うん……』
アレクはニッコリと含みのある笑顔で笑うと去って行った。
「じゃあまた」
一体何だったんだろう?
――その頃のシグルド。
どうやら貴族のパーティで忙しかったらしい。
「長引いてしまった」
アユムを待たせているのは解ってはいたものの、ラール家の子息が抜けるわけにもいかなかった。
シグルドが門前に着いた時は、すでにアユムの姿は無かった。
当然と言えば当然だ。
「3時間も待っているわけがない、か」
シグルドはそのまま何処かへ出かけて行った。
『……重っ』
門前で待っててもシグルドは来なかった。
そこに大荷物を抱えたエマが通って。
放っておけるわけがなかった。
『よくこんな重いの一人で』
エマには関心する。
「これくらい大丈夫です。それよりアユムさん、良かったんですか?」
『え?何が?』
「誰か待っていたんですよね?」
『良いの良いの!すっぽかされちゃったし!』
エマが心配そうにわたしを見つめる。
「でも……」
『ほら!早く帰って夕飯の準備しよう!わたしも手伝うから』
空が赤く染まる時間。
バカみたいにボーっとシグルドを待ってても仕方ないし。
かと言ってやる事もないし。
「ありがとうございます。でもアユムさんは休んでいてください」
『え?』
「すごく顔色が悪いですアユムさん」
教会に着くとエマはわたしの手から荷物をひったくって行った。
わたし、そんなに元気ないかなぁ?
「アユムさん?!どうかしましたか!?」
わたしの顔をみたクラウスが飛んで来た。
『別になんにも』
「わかりました、なにも聞きません。でも、アユムさんが辛い時は私を頼って下さい」
クラウスはわたしの頭を優しく撫でた。
「力になりたいんです。だから、そんな寂しそうな顔しないで下さい」
クラウスはいつでもわたしの側にいてくれて、力になってくれる。
『ごめんなさ……っ』
暖かくて優しくて、涙が出て来た。
「泣きたい時は泣いた方がいいですよ」
でも、クラウスじゃ駄目なんだ。
悲しいのは治まらない。
シグルドじゃなきゃ。
「だいぶ落ち着いたようですね」
『うん……ありがとうクラウス』
「いいえ。今日はゆっくり休んでください」
『そうする』
約束したのにシグルドは来なかった。
シグルドが忙しいのはわかってる。
でもわたしはまだ子供だから、そんな些細な事がすごく辛い。
「お夕飯が出来たら呼びに行きますね」
『うん』
辛いし、そう思う自分に腹が立つ。
だけどそれ以上にシグルドは大人で。
わたしの部屋に突然シグルドが現れた。
『ハハッ、何でいるの』
わたしの思ってる事がわかるみたい。
「アユム、約束していたのにすまなかった、謝る」
シグルドは水色の綺麗な花束を持ったままひざまずく。
「許してくれないだろうか」
『許すよ……ちゃんと会いに来てくれてありがとう』
シグルドは笑い、わたしもつられて笑う。
――コンコン。
「アユムさん」
「お夕飯が出来ましたよ」
わたしを呼びに来たクラウスとエマも、わたし達を見て笑顔になった。
みんなが笑って、わたしも笑ってる。
だから、別にいいのかもしれない。
悲しくて寂しかったことも、約束を破られたことも。
全部忘れられるくらい――
「良かったらシグルドも食べて行きませんか?」
「あぁ。では遠慮なくいただこう」
――今が幸せだから。
《END》ただ会いたかった
2007.9.12(2024.6.27最終修正)