シグルド夢
オマエの名を呼ばせてくれるか?
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【再会はイタズラに】
自分のベッドの上で仰向けになり、目を閉じる。
『はぁ……』
なんで今頃になって見るんだろう?
シグルドの夢。
エリダラーダから帰って来てもう1年が経つ。
『……っう…っく……』
離れてみて、初めて寂しいって思った。
改めてシグルドが愛しいって想えた。
『わたしって馬鹿だなぁ……』
好きな事は分かってたくせに。
気付いていたくせに。
ずっと気付かないフリをしてた。
『シグルド……』
恋に臆病で否定してた。
シグルドとなら、一緒に居るだけで楽しかったのに。
エリダラーダで過ごした日々は、夢だったのかもしれないと思うことがある。
でも、夢なわけがないんだ。
ゴッツイ飾りで大きい立派な剣。
あんなの持って帰って来ちゃったんだから。
『はぁ、泣いちゃってバカみたい』
わたしはそっとタンスから、シーツでぐるぐる巻きになった剣を取り出した。
『重っ』
もしまた会えたら、ちゃんと返そう。
ぐるぐる巻きのシーツを取り去ってみる。
『やっぱりスゴイな』
とかなんとか考えていたら、何故か剣が光り出した。
まるで1年前のわたしみたいに。
もしかしてと思って、タンスを覗く。
『……!!』
空と雲と森と町と城と。
まさしく、懐かしいエリダラーダが見える。
『って!?また落ちるのわたし?!』
真っ逆さまに落ちている気がする。
気のせいじゃない!?
『たっ!助けて~~!!』
わたしの人生はもう終わり!?
気が付くとそこは、懐かしいエリダラーダの部屋で。
初めてここへ来た時みたいに、エマがわたしを心配そうに覗きこんでいた。
『エマ!』
「アユムさんっ!痛いところはありませんか!?気分は大丈夫ですかっ!?」
久々のエマの慌てっぷりに何だかおかしくなって、笑ってしまった。
「笑い事じゃありません!」
『アハハ、大丈夫。どこも痛くないから』
そういえば、わたしと一緒にこっちへ落ちて来たはずの剣がない。
「お久しぶりですアユムさん。気分はいかがですか?」
懐かしい眼鏡の司祭様、クラウスが手に持っていたのはシグルドの剣。
『大丈夫、すっごい元気だから』
「また空から降って来た時は驚きましたよ。はいどうぞ、アユムさんしか受け止めきれなくて……」
すいませんと、クラウスがシグルドの剣を差し出す。
というか、受け止めるってなに?
怖いから聞かないけど。
『あ、ありがとう!』
久々に見る二人の顔。
何だかすごく懐かしくて、涙が出てきた。
『ぅっ……』
「お帰りなさい、アユムさん」
そう言ってクラウスはわたしの頭を撫でる。
「お帰りなさいっ」
エマも一緒に泣き出しちゃった。
『ただっ、いまっ!』
嬉しくて涙が止まらないよ。
感動の再会の後、色んな人と会った。
「ん?アユムか?」
「まぁ、お久しぶりですわ」
まずオッサンとリンちゃんに会った。
『久しぶり。リンちゃん、オッサン』
「オッサンじゃねぇ。オニイサンだ」
それから、変態とメイドにも。
「おやぁ?アユムさんじゃありませんか!何という運命!」
『さよなら』
「いつになってもつれないですねぇ。スッチーのどこがいけないんですか?」
「スティラルカ様、全部です」
ユエのナイスなツッコミは変わってないらしい。
「おっ!アユムじゃねぇか。オマエしばらく見ない間に……」
ヤンキー君こと、イヴァンにも会った。
『なによ』
「太ったな?」
『女の子に向かって、しっ!失礼なっ!』
楽しい会話、懐かしい人たち。
本当にわたし、戻って来れたんだ。
皆相変わらずで、ちょっと安心した。
気付けば、夕焼け空が眩しい時間になっていた。
『ハァ』
お城の近くまで来たけど、いざ会うとなると勇気がいる。
その前に、今お城にいるかどうかも分からないけど。
「そこのオマエ、見ない服装だな?何者だ?」
後ろから聞き慣れた声を掛けられた。
『……っ!』
振り返ると、そこにはやっぱりシグルドがいた。
いつもの服装で、いつもの恐い顔の。
『シグ、ルド……』
「……?まさかアユム、なのか?」
硬い表情が驚きに変わっていく。
『わたしだよ、久しぶりシグルド……元気だった?』
驚きの表情は次第に微笑みに変わって。
「あぁ、オマエも元気そうだな」
『うん、元気……シグ……ずっと寂しかった、ずっと会いたかった』
アハハ、わたしっていつからこんな泣き虫になんたんだろう。
「アユム、俺もだ。帰した事に未練はなかった……だが、寂しかった」
シグルドは優しくわたしを見つめる。
あ、そうだ、剣。
『シグルド、これ』
持って帰った剣をシグルドに渡す。
「大切に持ってくれていたのだな」
懐かしそうに剣を見つめるシグルド。
『うん。えっと、急なんだけど言おうと思ってたことが、』
「なんだ?」
『剣を真っ直ぐ構えて、びしっと立った姿が……ちょっとかっこ良かったなっ、て』
シグルドはフッと笑う。
「オマエにそう言ってもらえて、光栄だ」
シグルドは指でわたしの涙をすくい取ってくれた。
『そう?』
あっ、言いたいことまだあった。
『それからもう一つ。帰って初めて気付いたことなんだけど……わたし、シグルドが好き!』
一瞬ポカンとした表情のシグルド。
でも、みるみるうちに顔が赤くなって。
口に手を当てて俯いてしまった。
「そ、そういう事は……そのっ、お、男から言うもの、だろう?」
『わたしは男も女も、好きならどっちから言ってもいいと思うけど』
って、何恥ずかしい事言ってんのわたし!
「ご、ゴホン。その……俺もアユムが好きだ、愛している」
『~~っ』
そんな直球で愛してるなんて言わなくても。
ふわっといきなり抱き締められて、余計に涙が出てきた。
「アユムは泣き虫になったな」
『ううっ、シグルドのせいなんだからっ』
わたしがどうしてまた、エリダラーダへ来られたのかはわからない。
「ハハッ、すまない」
偶然か、運命か。
「アユム……」
はたまた神様のイタズラか。
『何?』
シグルドはひざまずいてわたしの手を取る。
「――太陽と月が輝くかぎり、アユムに忠実であることをおごそかに宣誓する」
『え?』
そして手に優しいキスをした。
「騎士はスエアを違える事は無い。誓句だ……忠誠と愛を告げる誓いの言葉」
シグルドにまた会えて一緒にいられるなら、何だって良かったのに。
「アユム、愛している」
『私も、愛してる』
幸せすぎてちょっと怖いな。
立ち上がったシグルドは反射的に言った。
「アユム、結婚しよう」
『うん。って、ぇええぇっ!?』
エリダラーダに戻って来たばっかりなのに、け、結婚っ?!
「嫌か?」
『嫌じゃないけど』
シグルドと一緒にいたのは、今日をいれても9日だけだし。
いきなり結婚って早すぎない!?
「やはり早い、か?」
『うん……』
「そうか、では婚約にしよう。それならかまわないだろう?」
『えっ?!』
コンニャクじゃなくて婚約!?
「それも嫌なのか?」
寂しそうに見つめてくるシグルド。
『嫌じゃない、けど』
「なら決まりだ。明日にでも婚約しよう」
『えっ明日?』
「あぁ。本当は今日でも良かったんだが、今日はもう遅い」
夕陽は落ちて、夜の闇がせまって来ている。
「教会まで送って行こう。クラウスには話しておく必要があるしな」
『えっと、ありがとう?』
「お帰りなさい、アユムさん」
すぐにクラウスが出迎えてくれた。
『ただいま』
「クラウス、話がある。明日、アユムと婚約しようと思っている」
「は、いっ?」
めずらしくクラウスの眼鏡がズレタのは、見なかったことにしておこう。
『えっと、そういうわけで』
「そうですか、おめでとうございます」
ニッコリと、それはもう恐ろしいぐらいの満面の笑みでクラウスはそう言った。
「まだ片付けが終わっていないので失礼しますね。おやすみなさいアユムさん」
『う、うん。おやすみクラウス?』
一体何だったんだろう。
「明日の12時に迎えに来る。ではな」
『分かった。おやすみ、シグルド』
「あぁ、おやすみ」
そんなこんなで、エリダラーダへ帰って来た日はつつがなく終わりを迎えた。
《END》再会できるとは夢にも思わなかった
一方その頃、眼鏡の素敵な司祭様はというと。
「アユムさんが、婚約……」
相当なショックの為に、放心状態になっていた。
「婚約……婚約?……婚やく……ぶつぶつぶつ」
そこにエマが登場する。
「あ、クラウス様!今黒の……クラウス様?」
「ぶつぶつぶつぶつ」
「あの?」
「はっ!!コンニャク!!」
「コンニャク?」
クラウスはそう叫ぶと裏庭の方へ走り去った。
「コンニャクだったんですね。私の聞き違いで安心しました」
司祭様は間違っていた。
――バシッ!
ナイスな音を出して、誰かがクラウスの頭を叩いた。
「なに訳の分からんことをぶつぶつ言っている?」
クラウスの頭を叩いたのは、ラスボスの割に体が弱い鬼畜美形の銀髪露出狂。
「痛っ!アナタですかヴェンツェル、今すぐここから立ち去りなさい!」
「フン、イヴの娘が帰って来た様だな。しかも明日この国屈指の騎士と婚約をするらしいじゃないか」
「何故アナタが知っているんです?」
「さぁ?何故だろうな」
「きっとストーカー行為をしていたに決まっ
「一切を灰燼に還せ!焔よ!――ダルティ・フェス・ベルク!!」
「跳ね返せ、スペクルム!!……ふう、私には当たりませんよ"ベンちゃん″」
「黙っていろ。それからその気持ちの悪い呼び方はヤメロ」
「お断りしますよ、ベンちゃん」
「クラウス、オマエもあの変態と一緒の様だな」
――ポム。
「お呼びですね?フフ。紫の幸せ、スッチーが来ましたよ~」
「こんでいい!~っ触るな!紫の悪魔の間違いだろう!」
「ベンちゃん、ベェンちゃぁん、ベェ~ンちゅぁーん」
「今すぐ死ね!即刻灰になれ!塵となって消えろ!」
《END》司祭様はご乱心
2007.8.20(2024.6.27最終修正)