ヴェンツェル夢
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【最後の言葉】
エリダラーダに残って数ヶ月。
『もうアンタなんか知らない!』
わたしはヴェンツェルの家から飛び出した。
理由は簡単。
何度話しかけてもヴェンツェルは、うるさいの一言で片づけるから。
「勝手にしろ」
優しくないし。
それは解ってたけど、わたしにも我慢の限界っていうものがある。
わたしはクラウスの所に向かった。
クラウスにグチを言い続けて数分。
「アハハ、ヴェンツェルは恥ずかしがり屋なんですよ」
『えー嘘だぁ』
クラウスと話していたら楽しい。
こんな風にヴェンツェルとも話せたら良いのに。
絶対無理だけど。
「アユムさん、夕飯いかがですか?今日はカーシャなんですが」
『食べる!』
ついついエマの作る美味しいカーシャにつられて今日は教会に泊まる事になった。
「押してダメなら引いてみるのも手ですよ、アユムさん」
とかクラウスが言ってたからじゃないよ?
来たばかりの頃使ってた懐かしい部屋はそのままで。
いつ戻って来ても良いと言われてるような気がした。
『ふぅ』
――コンコン。
「アユムさん、私です」
『クラウス?』
何故かあやしく笑っているクラウス。
「アユムさん、」
ニヤリと言う効果音がお似合いだ。
「すいません」
ガバッとクラウスがわたしに抱き付く。
『えっ?』
「アユムさん、好きです。ヴェンツェルからあなたを奪ってしまいたい」
その後に小声で付け加える。
「ヴェンツェルが来ています。嫉妬させてみるのも良いと思いますよ」
絶対からかって遊んでるよこの人。
――パリンッ。
窓ガラスを割って入って来たのはヴェンツェルだった。
「クラウス!貴様、アユムに何をしている?」
「何って、見てわかりませんか?」
クラウスの笑顔が黒い。
「そいつは俺のものだ。手を出すな」
「なら手を離さないであげて下さい。あまりにもアユムさんが可哀相ですよ、ヴェンツェル」
2人の視線が怖くてわたしは声も出ない。
「チッ」
眉間にシワを寄せたヴェンツェルはわたしを一瞥して、わたしの手首を掴んだ。
「帰るぞ」
『えっ』
それ以上話さず、すたすたと歩いて行く。
後ろを振り返ったらクラウスが笑って手を振っていた。
『ちょ、痛い!離して!離してよ!』
ヴェンツェルは渋々わたしの手を離す。
眉間にはシワが寄ったままだ。
『何よ、ヴェンツェルが勝手にしろって言ったのに』
そんな顔しないでよ。
まるでわたしが悪いみたいな。
「……今から言う事をよく聞いておけ」
ヴェンツェルはそう言うとわたしの体を引き寄せた。
口元をわたしの耳元へと近づける。
「愛している」
………へ?
『ヴ、ヴェンツェル?!』
思わず突き飛ばしてゆっくりヴェンツェルの顔を見上げると、ヴェンツェルはニヤリと笑った。
「言うのはこれが最初で最後だ」
ヴェンツェルはわたしの頬に触れる。
「アユムを愛している」
言い終わるのが早いか鼻をつままれるのが早いか、よく解らなかった。
う、苦しっ……
『う~、離して~~』
「満足か」
もう、ヴェンツェルはどーしてこう、わたしの心をすぐに奪っていくのかな。
『……うん!』
「なら早く帰って晩飯を作れ」
『へっ?』
ヴェンツェルは眠そうにあくびをする。
寝るのには少し早い、そんな時間帯。
『まだ食べて無かったんだ?』
ヴェンツェルはムッとして押し黙る。
「夕飯を作るのはオマエの係だ、俺は作らん」
『……ハハッ』
意地悪だけど可愛い人。
「何がおかしい」
『アハハ!帰ったらすぐに作るよ、晩ご飯』
ヴェンツェルがちゃんと口に出して言ってくれたから、何だか幸せでいっぱい。
「言いたいことがあるなら、ちゃんと言ったらどうなんだ」
言いたいこと?
『んー、意外に優しいんだなって』
それも今だけなんだろうけどね。
「くだらん」
またそんな言い方。
本当に、ヴェンツェルって天の邪鬼なんだから。
『ヴェンツェル、』
あ、今なら言える気がする。
「何だ」
恥ずかしくて、言えなかったこと。
『愛してる』
いつもは大好きとしか言えなかったけど。
『わたしも言うのは最初で最後だからね!』
「……」
『世界で一番ヴェンツェルを愛してる!』
ヴェンツェルは珍しく驚いたかと思うと、いきなり笑いだした。
「やはりオマエは面白い奴だ、アユム」
《END》最初で最後の愛してる
2007.9.25(2024.6.27最終修正)