ヴェンツェル夢
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【紫の変態のせい】
駄目だ、ダメだめ。
昨日から妙に、頭の中がヴェンツェルでいっぱいなんだけど。
『これもアレもそれも全部紫の変態のせい!!』
わたしが声を荒げると、法術の本を読んでいたヴェンツェルが顔を上げた。
「あいつがどうした」
まさか、スティラルカのせいで今まで以上にヴェンツェルを意識してる、なんて言えない。
『え~っと、スティラルカのせいで頭が痛い、のかな』
まぁ嘘は言ってないし。
「くだらん」
いつも通りの返事で良かった。
何故だ?とか聞かれてたら答えられなかったもん。
『じゃあ買い物行って来るね』
ヴェンツェルはわたしをチラッと見ると、くだらなそうにまた本に目を戻した。
ちなみにあの本は、初心者向けの法術の本だ。
わたしに教える為に、ヴェンツェルが読んでくれてる。
わたしはエリダラーダの字が読めないから。
だったら、クラウスに教えてもらう方が早いんじゃないかって思うけど、ヴェンツェルがそれを許さない。
『愛されてるかも』
とかニヤけてたのを、後ろにいた猫型リスルゥに聞かれてたのは知らなかった。
町の広場は今日もにぎやかだ。
「いらっしゃ~い!」
「安いよ安いよー!」
「新鮮な生野菜はいらんかねぇ~」
わたしの気分は上々だった。
あの紫マントを着た変態と、緑ヘルメットみたいな頭のメイドを見付けるまでは。
「おやぁ!アユムさんではありませんか!」
わたしは勿論逃げた。
あいつが全ての元凶だから。
昨日だってわたしになにを言ったと思う?!
「どうです?調子は」
『調子?普通だけど』
珍しく普通の事を聞いてきたと思ったら。
「違いますよー、ベンちゃんとはどうですか?」
『は?』
「もう、あ~んな事やこ~んな事、そ~んな事や色んな事、しちゃったんですかー?」
『ハァっ?!してない!断じてしてないっ!』
突然変なことを言い出して。
「とか言って~、キスくらいはしたんでしょう?」
このこの~と、肘でつついてくる。
『うっ……』
「そうですかそうですか、まだ手は出してないんですねー♪アユムさんが大切にされていて何よりです」
恥ずかしい事ばっかり言われて。
「ベンちゃんに飽きたらいつでもスッチーに言って下さいねっ!スマキにしてかっさらって行きますよー」
『いや、それ死ぬって』
あれからヴェンツェルを変に意識しちゃうんだから。
『スティラルカのせいなんだからっ!!』
「はい、呼ばれて飛び出ました~ぁ♪スッチーですよー」
どこから回り込んだのか、何故かわたしの目の前にはスティラルカ。
『呼んでないし、さよなら』
――ガシッ。
「せっかくですから一緒にお買い物しましょうねーアユムさん?」
腕を離して腕を。
『絶対にイヤ!それに"デフォルトは優しいスッチー″じゃなかったの!?』
「あはは、そーでした、すっかり忘れていましたよー」
忘れないでよ。
スティラルカは結局、わたしの買い物に付いてまわってる状態。
ユエは別の所で買い物。
『ねぇ、何で付いて来るの?』
「ベンちゃんとあんな事やこんな事はもうすませ
『わぁ!!ヤメテ!こんな公衆の面前で言わないで!』
デリカシーがない。
「半分冗談ですよー」
半分ってなによ半分って!
「少し嫉妬させてみようかと思いましてねー」
『嫉妬?』
スティラルカが指差す先には見慣れた黒い猫。
『って、リスルゥ!?』
「にゃっ?!」
リスルゥは大慌てで逃げて行った。
「ベンちゃんも心配性ですね~、まぁこれで今夜あたりに何かあるでしょう」
『何か?!』
何かってナニ!?
「おや、ユエが来たようですねー、それじゃあアユムさん、今夜は楽しんで下さいねー」
ニッコリ笑うとどこかへさっさと消えて行った。
憂鬱な気分のまま買い物を終え、帰宅。
『ただいまー』
ニヤリ。
『ヴェンツェル?!』
薄笑いのまま近付いて来るヴェンツェル。
「なるほどな」
『へ?』
わたしから買い物袋を取り上げると、机に置いてくれた。
「あの変態のせいで、アユムは俺の事が頭から離れないわけか。ハッ、あの変態もたまには役に立つ」
『~~あ、アンタねぇ!リスルゥに後つけさせたでしょ!』
「悪いか」
言いながら寄って来ないでってば。
『ヴ、ヴヴヴヴェンツェル?』
ヴェンツェルは優しくわたしの頬をなでた。
後ろは壁で逃げ場はない。
――チュ。
『へ……』
「今はこれくらいにしておいてやる」
キスされたのは、額。
まさかおでこに、なんて考えてなかったから気が抜けた。
『え、"今は″って?』
ヴェンツェルは満足気に椅子へ座り、本を読み出す。
答えてくれる気は無いわけね。
『ハァ、ご飯作ろっと』
調理し始めるわたしの後ろ姿を見て、ヴェンツェルが
「夜が楽しみだ」
と言ったのは気のせい、だよね?
《END》スッチーのお陰ですね~!
2007.10.2(2024.6.27加筆修正)