ヴェンツェル夢
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【Meany~初めての冬~】
『うぅ、寒い』
もうそこまで冬が迫ってきてるみたい。
「フン、薄着で来るからだ」
木の上からわたしを見下ろすヴェンツェル。
『ヴェンツェル』
いないと思ったらこんな所にいた。
『何やってるの?』
「座っている」
……えっと。
そーいう事を聞いたんじゃないのになぁ。
『まだ帰らないの?』
「帰りたければ一人で帰ればいいだろう?」
やっぱりヴェンツェルは冷たい。
『ヴェンツェルが帰らないなら、わたしも帰らない』
冷たくされても、わたしはしつこく付きまとうから安心して。
「……勝手にしろ」
わたしは木の幹にもたれて座り、目の前を流れる川を見つめる。
『ハァ……』
この川で今までに色んな事があった。
リスルゥが魚を捕ろうとしておっこちたり。
スティラルカに突き落とされたり。
そーいえばリスルゥと水の掛け合いもしたっけ。
その時ヴェンツェルが川の側にいて、わたしが腕を引っ張ったら……
「おい、何を考えている?」
『何って、ヴェンツェルが川に落ちた時のこと』
「オマエが俺の腕を引いたのだから、当然の結果だろう」
そうだけど。
『う、ゴメン』
何だかんだ言っても、ヴェンツェルってちゃんとわたしのこと、気にかけてくれてるんだよね。
――ヒヤッ。
手に何かが触れた。
『……?』
手には残る水あと。
『あ、雪……』
どうりで寒い訳だ。
――トスッ。
ヴェンツェルはわたしの隣に着地した。
「変わらんな」
一定に流れ続ける水、同じ景色、澄んだ空気。
『うん』
「アユムがだ」
えっ、わたし?
ふわりと、ヴェンツェルのマントに包まれる。
『ヴェンツェル?』
すごく暖かいけど、これじゃあヴェンツェルが風邪ひいちゃう。
『寒いでしょ?』
わたしはそう言ってマントの半分をヴェンツェルにかける。
「俺は寒くない」
意地っ張りなんだから。
『わたしが寒いから一緒に、ね?』
「やはりオマエは変なやつだな」
わたしの手首を引いてヴェンツェルは歩き出す。
「帰るぞ」
雪が降り出す中、わたしのすぐ隣には愛しい人。
『初雪だね』
「それがなんだ?」
『ヴェンツェルと初めて見る、初雪』
おかげで今日が特別な日になった。
「……くだらん」
『くだらなくなんかっ
「こんなモノなど、一緒にいれば何度でも見れるだろう」
真顔で言うヴェンツェルに、わたしは笑ってしまった。
「なんだ?」
遠回しでわかりにくいけど。
隣にいても良いって言ってくれたも同然だから。
『ありがとう』
わたしは嬉しくて、ついギュッと抱き締めた。
「ひっつくな」
ヴェンツェルの顔が赤かったのは見なかったことにしておくから。
『ね、』
わたしは手首を掴んでいたヴェンツェルの手を解いて、握り直した。
『手、繋いでて』
ずっと離さないで。
「アユム」
この川のように流れゆき、戻らない時間の中で。
悲しみはたくさんあるけど。
『何?』
エリダラーダに残るって言ったことは、後悔してないから。
「俺のことだけ考えていろ」
ヴェンツェルと一緒に生きていくことを、後悔なんてしてないから。
『じゃぁヴェンツェルも、わたしのことだけ考えてくれる?』
でも、たまには口に出して言ってよね。
「駆け引きか、悪くない。のってやるぞ?」
わたしも言うから。
『ヴェンツェル、大好き』
わたしが好きだって。
「……嫌いじゃない」
もうホント、意地悪なんだから。
《END》来年も再来年も何度でも
2007.8.13(2024.6.27最終修正)