ヴェンツェル夢
夢小説設定をしておけ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【偽りの感情】
わたしは一人でぼうっと湖にいた。
自分の考えが分からなくて。
「オマエは帰りたいのか?」
急に真後ろから声が聞こえて驚いた。
『……!!』
それもあるけど、ヴェンツェルがわたしにそんなことを聞いたことに、余計に驚いた。
『さぁ?自分でも分かんないの』
「変な奴だな。ここに居ても良いぞ、面白かったら顎で使ってやる」
ヴェンツェルは妖しく笑う。
『ごめん……ね、それは出来ない』
「何故だ?」
何故って?
『わたしはあんたが好きだからよ』
「それがどうした」
告白をしたのに平然としたままのヴェンツェル。
『わたしの"好き″はね、全部作り物だから』
好きだと想えば自己暗示のように嫌いな人でも好きになってしまう、その逆もまた然り。
そんな歪んだ"好き″だから、あんたにあげたくないのよ。
「ふん、くだらんな」
そう言うといきなり抱き締められた。
「オマエは俺が嫌いか?」
わたしより体温が低くてもあたたかい腕に、強く抱きしめられる。
『嫌いよ、大嫌い』
ヴェンツェルなんて大っ嫌い。
「嘘だな。なら聞くが、オマエは何故泣いている?」
泣いて?
気付かなかった、自分が泣いてるなんて。
「アユム、オマエは俺の物だ。俺から離れる事など許さん」
今、名前っ……
『……っ、』
不器用で、性格が悪くて独占欲が強くて、子供みたいで、でも。
『ヴェンツェル、こんなわたしでごめんね』
でも、ヴェンツェルはすごく優しいね。
わたしもヴェンツェルを強く抱き締めた。
「馬鹿が」
そう言いながらも、わたしを離さないあんたが好き。
これは偽り?
――ガサガサッ。
「ギュアアアァルウウウ――!!」
物音がしたと思ったら、わたしの真後ろから怪物が襲って来た。
わたしは悲鳴をあげることも出来ず、ヴェンツェルにしがみつく。
「チッ。一切を灰燼に還せ、焔よ!――ダルティ・フェス・ベルク!」
ヴェンツェルはくだらなさそうに舌打ちをすると、法術を使う。
ごうごうと炎が怪物を焼きつくし、跡形もなく消えた。
「何を惚けている?馬鹿面だぞ」
くっくっと楽しそうに笑うヴェンツェル。
この人のこんな笑い方を見たの、初めてかもしれない。
『いつもそういう風に笑えばいいのに』
つい本音をもらしてしまった。
「オマエには関係無い」
またそーゆう事言う。
『助けてくれてありがと、ヴェンツェル』
わたしがそう言うと、少しだけ優しく微笑んだ。
「礼を言うなら体で払え」
『ええっ!?』
きっとそれはわたしの勘違い。
こんな極悪非道が優しく微笑むわけがない。
ヴェンツェルは抱きしめていたわたしをそっと離した。
そしてスタスタと森の奥へと歩いて行く。
「何をしている」
『何って』
置いて行かれかけてるんだけど。
「またアレに襲われたいのか?」
妖しく笑うヴェンツェル。
さっきのことがあったから、アレと言われた瞬間ビクッとなった。
『まっ、待ってよヴェンツェルっ!』
脅さなくても素直に来いって言ってくれればいいのに。
ほんと、意地悪だよこの人。
「待たん」
そう言いながらも待ってくれてるし。
『天の邪鬼』
「何か言ったか」
に、睨んでも怖くないんだからねっ!
『何にもっ!』
性格さえ歪んでなかったら、すごくモテるだろうなぁ。
こんなあんただけど、わたしは……
『好きだよヴェンツェル』
これは偽りじゃないと思えるから。
「くだらんな」
いつもみたいに「ふん」って言わなかったから別にいいよ。
『ヴェンツェルが言ってくれないならわたしがいーっぱい言ってやるからね!』
偽りじゃない本当の心からの"好き″を。
「楽しそうだな」
またこーいう展開なんだね。
『むなしいに決まってるでしょ!』
たくさんあんたに贈りたい。
『好きだよ、ヴェンツェル』
偽りじゃないと信じられるこの言葉を。
「アユム」
また名前を呼ぶ。
『何?』
そんな些細なことでもわたしが嬉しいの、分かってる?
「うるさい」
『ひどっ』
《END》目は口ほどに物を言う
2007.2.15(2024.6.26最終修正)
1/13ページ