ヴェンツェル夢
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【ジャンケン】
「なんだそれは」
ヴェンツェルが指差したのは、わたしが買って来たスナック菓子。
ポテチに似た何か。
でもひと味違うんだよ。
『ポテチっぽいものだよ。爆発味』
「ほう、新しい味か」
興味あり気にポテチ(?)を持ち上げるヴェンツェル。
『あげないよ』
「ならばジャンケンといこう。俺が勝ったらそいつをもらう」
この前ヴェンツェルにも教えたんだよね、ジャンケン。
『じゃあわたしが勝ったら、わたしの言うことを聞くってどう?』
ヴェンツェルは顔をしかめる。
『ひとつだけでいいから』
「……いいだろう。さぁ、始めろ」
勝敗はすぐに決まる。
『最初はグー、ジャンケン、ポンっ』
わたしはパー。
ヴェンツェルはグー。
「チッ」
ヤッター!
『わたしの勝ち!』
「待て、誰が1本勝負だと言った?3本勝った方が勝ちだ」
この性悪!
『そんなのずるいよ!』
「最初に1本勝負だと言わないオマエが悪い」
「出さなければアユム、オマエの負けだ。最初はグー、ジャンケンポン」
棒読みのヴェンツェルはグー。
わたしはチョキ。
……負けた。
次で勝敗が決まる!
『最初はグー、ジャンケン、ポン!』
わたしはまたチョキ。
ヴェンツェルはパー。
『ヤッター!!ヴェンツェルに勝っ
「待て、3本勝負というのは3回勝った方が勝ちだろう?」
意味不明な理由を付けて、ジャンケンが再開された。
「最初はグー、ジャンケンポン」
ヴェンツェルはチョキ。
慌てて出したわたしはパー。
「次で俺が勝てば、アユムの負けだ」
ひ、卑怯者ぉおっ!
『ま、負けるもんか!』
「面白い、次で終わりだ」
最終戦。
『「最初はグー、ジャンケン、ポン!」』
わたしはパー。
ヴェンツェルもパー。
『あいこでショっ』
ヴェンツェルはチョキ。
わたしもチョキ。
『ショっ』
わたしはチョキ。
ヴェンツェルはパー。
『ヤッター!!勝った!わたしの勝ちっ!』
これでヴェンツェルに言うことを聞いてもらえる!
「チッ。用件は何だ?」
『えっと』
あ、考えてなかった。
と言うか、ありすぎてどれにしようか迷う。
「さっさと言え」
負けたからヴェンツェルの機嫌が悪い。
『えっと、その……』
「何だ」
言うのは恥ずかしいけど、これしかいいのがないから。
『これからも、わたしとずっと一緒にいて?』
「フン、たやすいことだ。そんなことで良いのか?」
逆に聞き返された。
『じゃあもうひとつ言っていい?』
「アユムの願いくらい、叶えてやらんこともない」
不適な笑顔で笑うヴェンツェルは、わたしが何を言おうとしてるのか分かってるみたい。
『ずっと、わたしを嫌いにならないでね』
「当然だ。何の為にリリトグラムを使わなかったか、わからんからな」
嬉しいのか悲しいのかよく分からない答え。
でも、喜んでいいんだよね?
だって、世界最強の魔法"リリトグラム″を、ヴェンツェルはあんなに欲しがっていたのに。
わたしのために使わなかったんだから。
『ありがとう、ヴェンツェル』
だけどやっぱり優しくはなくて。
「礼を言われることなどしていない。俺はいつでもオマエを元の世界へ帰せるんだぞ?」
すごく意地悪。
でも口先だけだって分かってるから。
『わかってるよ、それでも……』
この世界にわたしがいることを許してくれた。
ヴェンツェルの側に居る事を許してくれてた。
だから、ありがとう。
『まぁ、いっか。一緒に食べよ!』
「?」
訳が分からないというような顔のヴェンツェル。
『気が変わったの。半分ヴェンツェルにあげる』
実は最初から一緒に食べるつもりで買ってきたんだけど。
勝負した後じゃ、口が裂けても言えないよ。
「もらえる物はもらっておく」
『じゃあ開けるね』
――桜咲く春の季節に、ヴェンツェルと食べるのは新発売のお菓子。
ジャンケン勝負で得た物は、甘い言葉と甘い約束。
天気は快晴、心は晴れ。
――あぁ美しすぎる黄金郷。
お父さん、お母さん、それからお兄ちゃん。
エリダラーダのわたしは、今日もすっごく元気だよ!
《END》帰してなどやるものか
2007.11.17(2024.6.28最終修正)