御剣
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夕暮れ時、成歩堂法律事務所のドアがノックされる。ドアを開けるとそこに立っていたのは見慣れた、しかしこの場所には不釣り合いなほどの威厳をまとった男がいた。
「成歩堂。少しいいだろうか」
「み、御剣!?」
成歩堂が驚いて声をあげると隣で湯呑みを傾げていた真宵がぱっと顔を輝かせた。
「御剣検事さんが来るなんてめずらしいですね! もしかして弁護の依頼とか?」
「まさか。マヨイちゃん、御剣に限ってそんなことあるわけ……」
成歩堂の言葉を遮るように御剣はまっすぐな視線で彼を見据えた。
「キサマに弁護を頼みたい」
真宵の「えぇぇぇぇえ!?」という絶叫と、成歩堂の「な、なんだってぇ!?」という叫び声が事務所に響き渡る。まさかの言葉に二人は顔を見合わせた。
「……ま、まさか、お前、何かやったのか?」
成歩堂が恐る恐る尋ねると御剣は普段の何倍も険しい顔で睨みつけた。
「そんなわけないだろう! 弁護をお願いしたいのは私自身ではない。……私の部下だ」
御剣は先日発生した殺人事件の状況とその容疑者として逮捕された新人刑事、 夢見瑠子について簡潔に説明した。彼はあくまで冷静に状況と事実のみを述べたがその瞳の奥には部下への深い信頼と強い憤りが宿っているのが見て取れた。
御剣の依頼を受け、成歩堂は早速警察署の留置所へ向かった。面会室のアクリル板越しに憔悴した様子の女性が座っている。
「あの、あなたが成歩堂さん、ですか……?」
瑠子が弱々しい声で尋ねた。その顔は青ざめ、普段の快活さは影を潜めている。
「そうだけど……君が?」
「はい……夢見瑠子です。……刑事です、新人の」
瑠子は、事件当日、現場にいた状況やなぜ自分が容疑者として逮捕されてしまったのかを震える声で語った。彼女の言葉からは、一片の嘘も感じられなかった。もちろん勾玉の反応もない。なにより初対面ではあるが、 瑠子と話して彼女が純粋で真面目であることが感じられた。殺人なんてするような子じゃない、成歩堂はそう確信した。
その後、成歩堂と真宵は彼女の無実を証明するため捜査を進めた。御剣からもたらされた情報は少なかったが、真実を追った。
そして、裁判当日。
開廷の木槌が鳴り響き、法廷に検事が入廷する。担当検事は本来ならば別の人物のはずだった。しかし、そこに立っていたのは御剣であった。
「御剣検事、どうして……」
被告人席の 瑠子が、驚きに声を漏らす。御剣はしばらくの沈黙の後、その深く鋭い瞳をみやびに向け静かに、しかし力強く言い放った。
「 夢見刑事。私がここに立ってるのは真実を明らかにするためだ。それ以外に理由はない」
(御剣のやつ、相変わらず素直じゃないな……)
成歩堂は、御剣の言葉の裏に隠された真意を察した。彼は、 瑠子の無実を信じ、自らが検事として、徹底的に真実を追い詰めることで彼女の潔白を証明しようとしているのだ。それは彼なりの不器用な優しさだった。
裁判が始まった。御剣は通常の裁判以上に証拠の一つ一つを緻密に検証し、証人の証言を厳しく追求した。時には、自身の見解に不利になるような真実も躊躇なく明らかにする。それは、真実を明らかにするためならば、いかなる立場も顧みない、彼の検事としての矜持だった。
そして、最終的に御剣の追求によって、真犯人の矛盾点が次々と暴かれ、 瑠子の冤罪が完全に晴らされた。
裁判が終わり、瑠子は満面の笑みで成歩堂と真宵に礼を述べた。
「成歩堂さん、ありがとうございました!」
「おめでとう! 夢見刑事さん!」
「マヨイちゃんも、ありがとうございます!」
彼女の顔には心からの安堵と喜びに満ちていた。そして、瑠子は御剣へと向き直る。
「夢見刑事……その、すまなかった」
御剣は、微かに視線を伏せ不器用な言葉で謝罪した。しかし、瑠子は首を横に振る。
「いえ、検事という立場はわかっています。……それに、御剣検事になら有罪にされても良いかなって」
その言葉に御剣は眉間に皺を寄せた。
「え、縁起でもないことを言うな……!」
「ふふ、冗談ですよ!」
瑠子は少しいたずらっぽく笑う。
「でも、何で御剣検事が担当したんでしょう? 元々違う方だったのに……」
瑠子の純粋な疑問に、御剣は何も答えようとしない。
「夢見刑事」
成歩堂は御剣の視線をちらりと確認し、小さな笑みを浮かべ証拠品を突きつける。
-くらえ!
"裁判の控訴審記録"
御剣から預かったもの。事件当日の証拠物件に関する記述がされている。余白には御剣の直筆で荒々しい筆致のメモが書き込まれている。
「この証言、矛盾点はないか? 再度徹底検証。彼女がそこに行動する理由がない」
赤色のペンで小さな付箋に「夢見刑事の無実を確信」と書かれている。
「これは……?」
「今日の裁判の控訴審の記録だよ。……御剣が、この裁判の担当検事を引き受けた理由。それは君の無実を信じていたからだ。誰よりも君が冤罪であることを確信していたからこそ、真実を明らかにするために御剣はこの法廷に立ったんだ。他の誰にも君を裁かせない、守るために、ね」
成歩堂の言葉に、瑠子の瞳が大きく見開かれた。
「検事としての職務を全うする中で君の無実を証明すること。それが、御剣にとって何よりも重要なことだったと思うよ」
瑠子は、御剣の背中を見つめた。彼の不器用な優しさが今、はっきりと理解できた。
「御剣検事……」
みやびの目から、大粒の涙が溢れ落ちた。彼の不器用だが誰よりも真摯な優しさがその一枚の紙から痛いほど伝わってきた。
御剣はそんな瑠子の様子を見て、少しだけ視線を逸らした。彼の耳の先がわずかに赤く染まっている。
「……よーし、そしたらお祝いにパーッとラーメンを食べに行こうよ!」
真宵が元気いっぱいに提案し、三人の笑顔が夕暮れの裁判所の廊下を明るく照らした。
「成歩堂。少しいいだろうか」
「み、御剣!?」
成歩堂が驚いて声をあげると隣で湯呑みを傾げていた真宵がぱっと顔を輝かせた。
「御剣検事さんが来るなんてめずらしいですね! もしかして弁護の依頼とか?」
「まさか。マヨイちゃん、御剣に限ってそんなことあるわけ……」
成歩堂の言葉を遮るように御剣はまっすぐな視線で彼を見据えた。
「キサマに弁護を頼みたい」
真宵の「えぇぇぇぇえ!?」という絶叫と、成歩堂の「な、なんだってぇ!?」という叫び声が事務所に響き渡る。まさかの言葉に二人は顔を見合わせた。
「……ま、まさか、お前、何かやったのか?」
成歩堂が恐る恐る尋ねると御剣は普段の何倍も険しい顔で睨みつけた。
「そんなわけないだろう! 弁護をお願いしたいのは私自身ではない。……私の部下だ」
御剣は先日発生した殺人事件の状況とその容疑者として逮捕された新人刑事、 夢見瑠子について簡潔に説明した。彼はあくまで冷静に状況と事実のみを述べたがその瞳の奥には部下への深い信頼と強い憤りが宿っているのが見て取れた。
御剣の依頼を受け、成歩堂は早速警察署の留置所へ向かった。面会室のアクリル板越しに憔悴した様子の女性が座っている。
「あの、あなたが成歩堂さん、ですか……?」
瑠子が弱々しい声で尋ねた。その顔は青ざめ、普段の快活さは影を潜めている。
「そうだけど……君が?」
「はい……夢見瑠子です。……刑事です、新人の」
瑠子は、事件当日、現場にいた状況やなぜ自分が容疑者として逮捕されてしまったのかを震える声で語った。彼女の言葉からは、一片の嘘も感じられなかった。もちろん勾玉の反応もない。なにより初対面ではあるが、 瑠子と話して彼女が純粋で真面目であることが感じられた。殺人なんてするような子じゃない、成歩堂はそう確信した。
その後、成歩堂と真宵は彼女の無実を証明するため捜査を進めた。御剣からもたらされた情報は少なかったが、真実を追った。
そして、裁判当日。
開廷の木槌が鳴り響き、法廷に検事が入廷する。担当検事は本来ならば別の人物のはずだった。しかし、そこに立っていたのは御剣であった。
「御剣検事、どうして……」
被告人席の 瑠子が、驚きに声を漏らす。御剣はしばらくの沈黙の後、その深く鋭い瞳をみやびに向け静かに、しかし力強く言い放った。
「 夢見刑事。私がここに立ってるのは真実を明らかにするためだ。それ以外に理由はない」
(御剣のやつ、相変わらず素直じゃないな……)
成歩堂は、御剣の言葉の裏に隠された真意を察した。彼は、 瑠子の無実を信じ、自らが検事として、徹底的に真実を追い詰めることで彼女の潔白を証明しようとしているのだ。それは彼なりの不器用な優しさだった。
裁判が始まった。御剣は通常の裁判以上に証拠の一つ一つを緻密に検証し、証人の証言を厳しく追求した。時には、自身の見解に不利になるような真実も躊躇なく明らかにする。それは、真実を明らかにするためならば、いかなる立場も顧みない、彼の検事としての矜持だった。
そして、最終的に御剣の追求によって、真犯人の矛盾点が次々と暴かれ、 瑠子の冤罪が完全に晴らされた。
裁判が終わり、瑠子は満面の笑みで成歩堂と真宵に礼を述べた。
「成歩堂さん、ありがとうございました!」
「おめでとう! 夢見刑事さん!」
「マヨイちゃんも、ありがとうございます!」
彼女の顔には心からの安堵と喜びに満ちていた。そして、瑠子は御剣へと向き直る。
「夢見刑事……その、すまなかった」
御剣は、微かに視線を伏せ不器用な言葉で謝罪した。しかし、瑠子は首を横に振る。
「いえ、検事という立場はわかっています。……それに、御剣検事になら有罪にされても良いかなって」
その言葉に御剣は眉間に皺を寄せた。
「え、縁起でもないことを言うな……!」
「ふふ、冗談ですよ!」
瑠子は少しいたずらっぽく笑う。
「でも、何で御剣検事が担当したんでしょう? 元々違う方だったのに……」
瑠子の純粋な疑問に、御剣は何も答えようとしない。
「夢見刑事」
成歩堂は御剣の視線をちらりと確認し、小さな笑みを浮かべ証拠品を突きつける。
-くらえ!
"裁判の控訴審記録"
御剣から預かったもの。事件当日の証拠物件に関する記述がされている。余白には御剣の直筆で荒々しい筆致のメモが書き込まれている。
「この証言、矛盾点はないか? 再度徹底検証。彼女がそこに行動する理由がない」
赤色のペンで小さな付箋に「夢見刑事の無実を確信」と書かれている。
「これは……?」
「今日の裁判の控訴審の記録だよ。……御剣が、この裁判の担当検事を引き受けた理由。それは君の無実を信じていたからだ。誰よりも君が冤罪であることを確信していたからこそ、真実を明らかにするために御剣はこの法廷に立ったんだ。他の誰にも君を裁かせない、守るために、ね」
成歩堂の言葉に、瑠子の瞳が大きく見開かれた。
「検事としての職務を全うする中で君の無実を証明すること。それが、御剣にとって何よりも重要なことだったと思うよ」
瑠子は、御剣の背中を見つめた。彼の不器用な優しさが今、はっきりと理解できた。
「御剣検事……」
みやびの目から、大粒の涙が溢れ落ちた。彼の不器用だが誰よりも真摯な優しさがその一枚の紙から痛いほど伝わってきた。
御剣はそんな瑠子の様子を見て、少しだけ視線を逸らした。彼の耳の先がわずかに赤く染まっている。
「……よーし、そしたらお祝いにパーッとラーメンを食べに行こうよ!」
真宵が元気いっぱいに提案し、三人の笑顔が夕暮れの裁判所の廊下を明るく照らした。
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