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モンド城下の街角で薬屋を営む一家。主に薬に使う薬草を取り扱い、騎士団の医療班や西風教会が主な取引先だ。
一人娘のリリアンナは幼い頃から沢山の草花に囲まれて育った。
「アン、おつかいをお願いね」
「はぁい」
愛称は『アン』。親も友達もみんなそう呼んでいる。オレンジがかった粉の瓶を持って鹿狩へ向かう。今日のおつかいは鹿狩にスパイスを届けることと、チーズを買って帰ることだ。
「おとどけものです」
カウンターの下から手と香辛料の瓶だけがひょっこりと飛び出す。
「あらアンちゃん!ありがとうねぇ。モラを落とさないようにね」
店主は覗き込むようにして瓶を受け取り、代わりにアンの小さな手にモラを握らせた。
「このモラでチーズかうようにっていわれたの」
「あらそうなの。チーズね少し待ってねぇ……」
渡されたモラと握りしめていたモラをチーズに替え、家へと歩き出す。ふと、視界の端に見覚えのある姿を捉え、城門をくぐって芝生の方へと歩いていく。
「ダリア…?」
驚かさないように少し離れて声を掛けると淡いピンクの髪の毛がふわりと揺れて振り向いた。
「あぁ、この前の……アン?」
名前を覚えていてくれたことに胸が高鳴る。両手に蒲公英を束にして持っている。
「なにしてるの?」
アンが聞くと、ダリアはモンド城を背にし、手に持っていた蒲公英の束にふーっと息を吹きかける。真っ白になっていた蒲公英は、思い思いに空へと飛び立っていった。
「どう?綺麗でしょ」
「すご〜い!」
目を輝かせて眺めるアンを見て、ダリアは得意気な表情になった。
その後、ふたりは夢中になって蒲公英を集めた。数本まとめて作った綿毛の花束に、2人で思いっきり息を吹き掛けると、まるで辺り一面うろこ雲が浮いているかのように飛び出した綿毛が広がった。
ふたりは飛び跳ねて喜び、いつの間にか昔からの友達のように仲良くなっていた。
不意に、アンの足にカサ、と何かがぶつかった。目を向けるとそれは、おつかいの包みだった。あと1歩大きく踏み出していたら、踏んでしまっていたかもしれない。慌ててそれを拾い上げる。
「いけない!おつかい頼まれてたの、忘れてた」
「もう行くの?」
「うん…また遊んでくれる?」
「もちろん」
アンの顔がぱあっと明るくなる。
「約束、ね!」
自分の小指を半ば無理やりダリアの小指に絡めて指切りげんまんをすると、アンは「またね」と走り出す。
「いっちゃった…」
吹き抜ける風のように走り去っていった方を眺める。ダリアの楽しみが、こうしてひとつ増えたのだった。
一人娘のリリアンナは幼い頃から沢山の草花に囲まれて育った。
「アン、おつかいをお願いね」
「はぁい」
愛称は『アン』。親も友達もみんなそう呼んでいる。オレンジがかった粉の瓶を持って鹿狩へ向かう。今日のおつかいは鹿狩にスパイスを届けることと、チーズを買って帰ることだ。
「おとどけものです」
カウンターの下から手と香辛料の瓶だけがひょっこりと飛び出す。
「あらアンちゃん!ありがとうねぇ。モラを落とさないようにね」
店主は覗き込むようにして瓶を受け取り、代わりにアンの小さな手にモラを握らせた。
「このモラでチーズかうようにっていわれたの」
「あらそうなの。チーズね少し待ってねぇ……」
渡されたモラと握りしめていたモラをチーズに替え、家へと歩き出す。ふと、視界の端に見覚えのある姿を捉え、城門をくぐって芝生の方へと歩いていく。
「ダリア…?」
驚かさないように少し離れて声を掛けると淡いピンクの髪の毛がふわりと揺れて振り向いた。
「あぁ、この前の……アン?」
名前を覚えていてくれたことに胸が高鳴る。両手に蒲公英を束にして持っている。
「なにしてるの?」
アンが聞くと、ダリアはモンド城を背にし、手に持っていた蒲公英の束にふーっと息を吹きかける。真っ白になっていた蒲公英は、思い思いに空へと飛び立っていった。
「どう?綺麗でしょ」
「すご〜い!」
目を輝かせて眺めるアンを見て、ダリアは得意気な表情になった。
その後、ふたりは夢中になって蒲公英を集めた。数本まとめて作った綿毛の花束に、2人で思いっきり息を吹き掛けると、まるで辺り一面うろこ雲が浮いているかのように飛び出した綿毛が広がった。
ふたりは飛び跳ねて喜び、いつの間にか昔からの友達のように仲良くなっていた。
不意に、アンの足にカサ、と何かがぶつかった。目を向けるとそれは、おつかいの包みだった。あと1歩大きく踏み出していたら、踏んでしまっていたかもしれない。慌ててそれを拾い上げる。
「いけない!おつかい頼まれてたの、忘れてた」
「もう行くの?」
「うん…また遊んでくれる?」
「もちろん」
アンの顔がぱあっと明るくなる。
「約束、ね!」
自分の小指を半ば無理やりダリアの小指に絡めて指切りげんまんをすると、アンは「またね」と走り出す。
「いっちゃった…」
吹き抜ける風のように走り去っていった方を眺める。ダリアの楽しみが、こうしてひとつ増えたのだった。
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