⸜❤︎⸝Shinnosuke Tsuji
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ひゃみちゃんとお昼を食べようと約束していた日。屋上に続く階段の前で辻ちゃんと奈良坂に出くわす。
「辻くんと奈良坂くんじゃん」
「ぁ?!……ひゃみさんと鈴野さん…か」
なんだか疲れている…?どうしたんだろう大丈夫かな、心配だな、相変わらずかっこいいけれど。どうしたんだろう。
「辻、後輩の女子に追われてんだよ」
「あー…おつかれ辻くん」
「ご愁傷さまです…」
うぅ、周りを確認をする様子の辻ちゃん。相当押せ押せなタイプに好かれたんだな、大変そう……人のこと言えない気もするが。
「お前らさえ良ければ一緒にどうだ?」
お弁当の包みを軽く持ち上げた奈良坂くんの提案に有頂天になりかけながらも、できる限りの平然を装って「私もいいよ!」と答えた。
ひゃみちゃんも了承したことで4人でのお昼ご飯。辻ちゃんと一緒とか夢のよう……。
屋上へ移動して空いているところへ腰を下ろす。4人が向かい合うように各々お弁当を広げ、食べながら会話が弾む。
「辻くん、どんな子に追いかけ回されてるの?」
「一個下の…この前のボーダー入隊試験で受かったC級の子。確か射手だったかな… 鈴野さん、知ってる?」
突然話題が振られてドキッとしつつ、訓練で見かけた新入隊員を思い浮かべる。射手志望の女子は今回少なかったんだよね。高校生だったのは確か……
「……ちょっと派手目でよく喋る声の大きい子?」
「香取みたいだな」
「香取さんとは少し違うけど…。そうだと思う。朝から休み時間毎に訪ねてきてて…」
まさかの正解。実は他の高校生の子があんまり印象無かったから言ってみたんだけど。
ギャルっぽい子だったし、ボーダーならよねやんとか公平くんみたいなタイプが好みだと思ってた。むむむ、ライバル出現かな…。
「そんな目立つ子なんだ?」
「いた中ではって感じかな〜」
「ていうか、楓亜指導したの?」
「私はB級だからサポート!でも合成弾は実演やった!」
「メテオラ?」と飛んできた質問に、メテオラ♪と楽しく返すと、ひゃみちゃんからは
「それやるのあんたしかいないからね」と何回言われたかわからない返しが返ってきた。
まぁその話は置いておいて……覚えていた理由はもうひとつあり、たまたま私がいた列に並んでいたのがその子だった。
確か……
『あ!さっきの大爆発の人ですよね!アタシにも出来ます?』
『出来る出来る!ぜひ射手続けてみてね』
ついに私も後世育成の時代……なんて思ってた。うん思った。
そっかあ辻ちゃんか……見る目は良いけど辻ちゃんを困らせる人は私の敵です。後で顔と名前確認しなきゃ。てか何組だ。後で菊地原くんに2年で辻ちゃんの名前を口にした人がいないか聞いてみよう。むしろよく聞いててって今LINEするべき?怒られそう。
「災難だね。一緒にいる時なら盾になってあげよう」
「ありがとうございますひゃみさん……」
「いい機会だろ。そろそろ慣れたらどうだ」
奈良坂くんの鋭いひと言が辻ちゃんに突き刺さった。物理的に刺さったでしょ今。弧月だよ弧月。言葉の弧月。3人で笑っていたその時、突然ブーンという羽音をたてながら大きな虫が飛んできた。大きな虫は辻ちゃんの顔のそばに近づいた。
「っうわ!」
驚いた瞬間、辻ちゃんが持っていたコーヒー牛乳の紙パックを強く握った。
“シールド”
心の中では確かにそう叫んだ。が、生身の手からシールドが発動するはずもなく、呆気なく飛び出たコーヒー牛乳が私の左肩から胸にかけてを濡らす。本当に一瞬の出来事だった。
「ご、ごめん!」
「シールド…でなかった…」
「生身なんだから当たり前でしょ……それよりも染みになる前に濯いだ方が良さそうね」
慌てている辻ちゃんとシールドが出なくて悲しんでいる鈴野と、冷静な2人。
「ジャージ持ってきてる?」
「……昨日持って帰っちゃった」
スカートはタオルを敷いていたから無事。ブラウスを濯ぐとなると着替えが必要だ。
「千発百中どピンクTシャツなら持ってるんだけど…」
「ボーダー内ならまだしもあんた学校でそれ着るの?」
「悪目立ちするぞ」
奈良坂くんにまで否定された。公平くん今頃くしゃみしてるな。
しかし着るにしても半袖では肌寒いのが事実。
「私の貸してあげたいけど、次体育なのよね」
チラ、と辻ちゃんの方を見るひゃみちゃん。
「辻くん、ジャージ持ってないの?」
「ぁえっ?!持ってる…けど」
困った辻ちゃんが助けを求めるように奈良坂くんを見る。
「もし俺が辻よりも小さいなら考えてやるが、諦めろ。同じ身長だ」
貸してやれ、と辻ちゃんにひと言。わあ。これ、私得な急展開キタコレ?????今日が命日。女神様ひゃみさま。ありがとう世界。
ひとりで勝手に胸をときめかせていたらひゃみちゃんに現実に引き戻される。
「ほら予鈴鳴る。さっさと行くよ。辻くんは下の女子トイレまで届けてね」
「はい…」
広げていた昼食をランチバッグにまとめてひゃみちゃんと先に女子トイレへ向かう。
「ひゃみちゃん、わたししぬかも」
「良かったね楓亜」
ちょっと楽しそうなひゃみちゃんを見ながら私は先程の会話を頭の中で反芻していた。
ジャージ、本当に貸してくれるの……?
うっかり奈良坂とか書いてあったら泣いちゃうけど???
女子トイレについてブラウスを濯ぐ。何とか綺麗に落ちてひと安心。「私ちょっと見てくるね」と言って出ていったひゃみちゃんを待ちつつ固く絞ってシワにならないようにパンッと伸ばす。ハンガー持ってないなぁ……ロッカーの扉に引っ掛けて干すか……。授業中なら人通らないしいいだろう。うん。
干し方に思考を巡らせていれば突然聞こえたひゃみちゃんの声。
「楓亜、はい」
「まってやばい」
にこっと笑いながら手渡される紺色のジャージ。胸には 辻 の刺繍。恐る恐る受け取る。多分手が震えてた。
「ほら早く。そろそろ本当に時間ないよ」
「し、失礼します」
意志を持たないジャージに一声かけて腕を通す。めちゃくちゃいい匂いするどうしよう鼻血でそう……。
「5.6限生きていけない」
「良かったじゃん。ほら行くよ!」
瀕死状態の私の背中を、グイグイ押して送り届けられたのは教室の前。廊下のロッカーにブラウスを干したら予鈴が鳴った。
A組の方を見れば、体育館ばきを手にしたひゃみちゃんが宇佐美ちゃんと並んで体育館の方へ急いで行くのが見えた。後でからかわれるんだろうな。ギリギリまで付き合わせてごめんねの気持ちと、うまく話をつけてくれてありがとうの気持ちを混ぜながら目立たないように教室に入っていく。
ぶかぶかのジャージにしあわせを感じ、授業は半分上の空。
とりあえず鼻血で汚しませんように。ドーパミン分泌過多でこの日の個人戦が絶好調だったのは言うまでもない。
「辻くんと奈良坂くんじゃん」
「ぁ?!……ひゃみさんと鈴野さん…か」
なんだか疲れている…?どうしたんだろう大丈夫かな、心配だな、相変わらずかっこいいけれど。どうしたんだろう。
「辻、後輩の女子に追われてんだよ」
「あー…おつかれ辻くん」
「ご愁傷さまです…」
うぅ、周りを確認をする様子の辻ちゃん。相当押せ押せなタイプに好かれたんだな、大変そう……人のこと言えない気もするが。
「お前らさえ良ければ一緒にどうだ?」
お弁当の包みを軽く持ち上げた奈良坂くんの提案に有頂天になりかけながらも、できる限りの平然を装って「私もいいよ!」と答えた。
ひゃみちゃんも了承したことで4人でのお昼ご飯。辻ちゃんと一緒とか夢のよう……。
屋上へ移動して空いているところへ腰を下ろす。4人が向かい合うように各々お弁当を広げ、食べながら会話が弾む。
「辻くん、どんな子に追いかけ回されてるの?」
「一個下の…この前のボーダー入隊試験で受かったC級の子。確か射手だったかな… 鈴野さん、知ってる?」
突然話題が振られてドキッとしつつ、訓練で見かけた新入隊員を思い浮かべる。射手志望の女子は今回少なかったんだよね。高校生だったのは確か……
「……ちょっと派手目でよく喋る声の大きい子?」
「香取みたいだな」
「香取さんとは少し違うけど…。そうだと思う。朝から休み時間毎に訪ねてきてて…」
まさかの正解。実は他の高校生の子があんまり印象無かったから言ってみたんだけど。
ギャルっぽい子だったし、ボーダーならよねやんとか公平くんみたいなタイプが好みだと思ってた。むむむ、ライバル出現かな…。
「そんな目立つ子なんだ?」
「いた中ではって感じかな〜」
「ていうか、楓亜指導したの?」
「私はB級だからサポート!でも合成弾は実演やった!」
「メテオラ?」と飛んできた質問に、メテオラ♪と楽しく返すと、ひゃみちゃんからは
「それやるのあんたしかいないからね」と何回言われたかわからない返しが返ってきた。
まぁその話は置いておいて……覚えていた理由はもうひとつあり、たまたま私がいた列に並んでいたのがその子だった。
確か……
『あ!さっきの大爆発の人ですよね!アタシにも出来ます?』
『出来る出来る!ぜひ射手続けてみてね』
ついに私も後世育成の時代……なんて思ってた。うん思った。
そっかあ辻ちゃんか……見る目は良いけど辻ちゃんを困らせる人は私の敵です。後で顔と名前確認しなきゃ。てか何組だ。後で菊地原くんに2年で辻ちゃんの名前を口にした人がいないか聞いてみよう。むしろよく聞いててって今LINEするべき?怒られそう。
「災難だね。一緒にいる時なら盾になってあげよう」
「ありがとうございますひゃみさん……」
「いい機会だろ。そろそろ慣れたらどうだ」
奈良坂くんの鋭いひと言が辻ちゃんに突き刺さった。物理的に刺さったでしょ今。弧月だよ弧月。言葉の弧月。3人で笑っていたその時、突然ブーンという羽音をたてながら大きな虫が飛んできた。大きな虫は辻ちゃんの顔のそばに近づいた。
「っうわ!」
驚いた瞬間、辻ちゃんが持っていたコーヒー牛乳の紙パックを強く握った。
“シールド”
心の中では確かにそう叫んだ。が、生身の手からシールドが発動するはずもなく、呆気なく飛び出たコーヒー牛乳が私の左肩から胸にかけてを濡らす。本当に一瞬の出来事だった。
「ご、ごめん!」
「シールド…でなかった…」
「生身なんだから当たり前でしょ……それよりも染みになる前に濯いだ方が良さそうね」
慌てている辻ちゃんとシールドが出なくて悲しんでいる鈴野と、冷静な2人。
「ジャージ持ってきてる?」
「……昨日持って帰っちゃった」
スカートはタオルを敷いていたから無事。ブラウスを濯ぐとなると着替えが必要だ。
「千発百中どピンクTシャツなら持ってるんだけど…」
「ボーダー内ならまだしもあんた学校でそれ着るの?」
「悪目立ちするぞ」
奈良坂くんにまで否定された。公平くん今頃くしゃみしてるな。
しかし着るにしても半袖では肌寒いのが事実。
「私の貸してあげたいけど、次体育なのよね」
チラ、と辻ちゃんの方を見るひゃみちゃん。
「辻くん、ジャージ持ってないの?」
「ぁえっ?!持ってる…けど」
困った辻ちゃんが助けを求めるように奈良坂くんを見る。
「もし俺が辻よりも小さいなら考えてやるが、諦めろ。同じ身長だ」
貸してやれ、と辻ちゃんにひと言。わあ。これ、私得な急展開キタコレ?????今日が命日。女神様ひゃみさま。ありがとう世界。
ひとりで勝手に胸をときめかせていたらひゃみちゃんに現実に引き戻される。
「ほら予鈴鳴る。さっさと行くよ。辻くんは下の女子トイレまで届けてね」
「はい…」
広げていた昼食をランチバッグにまとめてひゃみちゃんと先に女子トイレへ向かう。
「ひゃみちゃん、わたししぬかも」
「良かったね楓亜」
ちょっと楽しそうなひゃみちゃんを見ながら私は先程の会話を頭の中で反芻していた。
ジャージ、本当に貸してくれるの……?
うっかり奈良坂とか書いてあったら泣いちゃうけど???
女子トイレについてブラウスを濯ぐ。何とか綺麗に落ちてひと安心。「私ちょっと見てくるね」と言って出ていったひゃみちゃんを待ちつつ固く絞ってシワにならないようにパンッと伸ばす。ハンガー持ってないなぁ……ロッカーの扉に引っ掛けて干すか……。授業中なら人通らないしいいだろう。うん。
干し方に思考を巡らせていれば突然聞こえたひゃみちゃんの声。
「楓亜、はい」
「まってやばい」
にこっと笑いながら手渡される紺色のジャージ。胸には 辻 の刺繍。恐る恐る受け取る。多分手が震えてた。
「ほら早く。そろそろ本当に時間ないよ」
「し、失礼します」
意志を持たないジャージに一声かけて腕を通す。めちゃくちゃいい匂いするどうしよう鼻血でそう……。
「5.6限生きていけない」
「良かったじゃん。ほら行くよ!」
瀕死状態の私の背中を、グイグイ押して送り届けられたのは教室の前。廊下のロッカーにブラウスを干したら予鈴が鳴った。
A組の方を見れば、体育館ばきを手にしたひゃみちゃんが宇佐美ちゃんと並んで体育館の方へ急いで行くのが見えた。後でからかわれるんだろうな。ギリギリまで付き合わせてごめんねの気持ちと、うまく話をつけてくれてありがとうの気持ちを混ぜながら目立たないように教室に入っていく。
ぶかぶかのジャージにしあわせを感じ、授業は半分上の空。
とりあえず鼻血で汚しませんように。ドーパミン分泌過多でこの日の個人戦が絶好調だったのは言うまでもない。