1-25
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ニフルハイム帝国 魔導研究機関──
男は帝国軍医、そして研究者として働いていた。
ヴァーサタイルなどに負けてたまるか、と闘争心を燃やす。
研究成果が実証されれば自ずと出世、帝国軍事力は圧倒的になる。
だが彼は天才だ。
実用化には至らずとも魔道兵の制作に成功していた。
あの男に主導権を握られてなるものか。
俺にだって研究し続けてきたものがあるのだ。
このままでは無用者とされてしまう。
そうでなくとも奴の配下になるくらいなら死んだ方がマシだ。
比較され、憐れまれ、侮辱され続けてきた屈辱をはらすのだ。
男は古代文明ソルハイムの魔法について調査を続けた。
自ら遺跡に赴くこともあった。幾度かの改良を重ね遂に動物実験は成功した。だが指示を理解出来ず暴走、更には過度のエネルギーに耐えきれず死んでしまった。
これ以上の実験は無意味だ。
早く成果を出さなければ先を越されてしまう。
時間が惜しい。
男は焦っていた。
魔道エネルギーを人体に注入する実験を開始した。
怪しまれぬよう自宅を実験場とし、被験体は金で雇った。浮浪者、娼婦や孤児と数ヶ月によって繰り返された。
ある者は自我崩壊を
ある者は植物人間状態に
ある者は拒絶反応を起こした。
失敗は続いた。
理論上可能な筈だった。
悔しい、何故こうも上手くいかぬのだ。
ならばと臨月を迎えた女探した。
夫も家族も居ない女は恰好の餌食となった。
全身麻酔を射ち、赤子を取り上げた。
失踪した程度で済むだろう、と考え用済みになった女は殺した。
培養液の中、幾本ものチューブに繋がれた赤子の心臓はしっかりと鼓動する。
いつも通りに研究機関から帰宅し、被験体の状態を確認する。魔導との融合がモニターに表示される。
これは男にとって初めての成果となった。
量産してやろう。妊婦が必要だ。狂った笑い声とともに男は夜の街へとくり出した。目的は赤子。新鮮なものがいい...ああ魔導人間の誕生だ。人間は脆く弱いが機械よりも応用が利く。
俺の力で兵器にしてあげよう。素晴らしい!焦点の合わない目で男は繰り返す。
ヴァーサタイルの悔しそうな顔や、イドラ皇帝からの賞賛される自身を想像しながら嗤う。
─────────────
しかし赤子は思うように成長しない。
何年経っても赤子のままだったが、魔導との融合は完璧だった。
実験は失敗の連続であった。
男は怒り狂った。
ヴァーサタイルは魔導兵を造り上げていた。
もうお終いだ。研究レポートを千切り、失敗作を踏み潰した。血が飛び散る、骨が折れる音がする。
失敗作は沢山あった。腐臭がする、吐き気がする、嗚呼でもこれが本来の自分なのかもしれない、とても楽しい。このまま殺してしまおう、全部、壊してしまえ。
試験カプセルにヒビが入る、男の血が赤子に散った。
狂った男は火を放った。男は最期まで笑っていた。
炎の中で燃えることもなく、赤子は生きていた。
«古の歌を宿した卵»
ドラゴンは麒麟と対話する。
«何故だ?我等は滅びたのでは無かったのか?»
«矮小な人間どもの考える事など解らぬ»
«この娘が我らの贄となったのだろう»
«無垢な魂が憑り代となったということか»
«それ故、我等は実体を保てないのだろう。赤子は無力だ»
«このままでは我らも死する»
«可能性があるならば聖石の元へ»
赤子は光に包まれ消えた。
男は帝国軍医、そして研究者として働いていた。
ヴァーサタイルなどに負けてたまるか、と闘争心を燃やす。
研究成果が実証されれば自ずと出世、帝国軍事力は圧倒的になる。
だが彼は天才だ。
実用化には至らずとも魔道兵の制作に成功していた。
あの男に主導権を握られてなるものか。
俺にだって研究し続けてきたものがあるのだ。
このままでは無用者とされてしまう。
そうでなくとも奴の配下になるくらいなら死んだ方がマシだ。
比較され、憐れまれ、侮辱され続けてきた屈辱をはらすのだ。
男は古代文明ソルハイムの魔法について調査を続けた。
自ら遺跡に赴くこともあった。幾度かの改良を重ね遂に動物実験は成功した。だが指示を理解出来ず暴走、更には過度のエネルギーに耐えきれず死んでしまった。
これ以上の実験は無意味だ。
早く成果を出さなければ先を越されてしまう。
時間が惜しい。
男は焦っていた。
魔道エネルギーを人体に注入する実験を開始した。
怪しまれぬよう自宅を実験場とし、被験体は金で雇った。浮浪者、娼婦や孤児と数ヶ月によって繰り返された。
ある者は自我崩壊を
ある者は植物人間状態に
ある者は拒絶反応を起こした。
失敗は続いた。
理論上可能な筈だった。
悔しい、何故こうも上手くいかぬのだ。
ならばと臨月を迎えた女探した。
夫も家族も居ない女は恰好の餌食となった。
全身麻酔を射ち、赤子を取り上げた。
失踪した程度で済むだろう、と考え用済みになった女は殺した。
培養液の中、幾本ものチューブに繋がれた赤子の心臓はしっかりと鼓動する。
いつも通りに研究機関から帰宅し、被験体の状態を確認する。魔導との融合がモニターに表示される。
これは男にとって初めての成果となった。
量産してやろう。妊婦が必要だ。狂った笑い声とともに男は夜の街へとくり出した。目的は赤子。新鮮なものがいい...ああ魔導人間の誕生だ。人間は脆く弱いが機械よりも応用が利く。
俺の力で兵器にしてあげよう。素晴らしい!焦点の合わない目で男は繰り返す。
ヴァーサタイルの悔しそうな顔や、イドラ皇帝からの賞賛される自身を想像しながら嗤う。
─────────────
しかし赤子は思うように成長しない。
何年経っても赤子のままだったが、魔導との融合は完璧だった。
実験は失敗の連続であった。
男は怒り狂った。
ヴァーサタイルは魔導兵を造り上げていた。
もうお終いだ。研究レポートを千切り、失敗作を踏み潰した。血が飛び散る、骨が折れる音がする。
失敗作は沢山あった。腐臭がする、吐き気がする、嗚呼でもこれが本来の自分なのかもしれない、とても楽しい。このまま殺してしまおう、全部、壊してしまえ。
試験カプセルにヒビが入る、男の血が赤子に散った。
狂った男は火を放った。男は最期まで笑っていた。
炎の中で燃えることもなく、赤子は生きていた。
«古の歌を宿した卵»
ドラゴンは麒麟と対話する。
«何故だ?我等は滅びたのでは無かったのか?»
«矮小な人間どもの考える事など解らぬ»
«この娘が我らの贄となったのだろう»
«無垢な魂が憑り代となったということか»
«それ故、我等は実体を保てないのだろう。赤子は無力だ»
«このままでは我らも死する»
«可能性があるならば聖石の元へ»
赤子は光に包まれ消えた。
1/26ページ