恋のきっかけ
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「今日はここ、かな」
ここは眞魔国にある1つの領地にある町中に、1人の男性が立っていた。
彼は赤茶色の髪の毛、オレンジの瞳を持ち、スラッとしている青年だった。
名前はロイル・ディオネ。
創主を封印し、眞魔国を造った初代魔王である眞王の直系の子孫にあたる。
半年ほど前から大シマロン領のシヴェル島主だったが、ディオネから出た双子がいるという事で眞魔国に永住してきたのだ。
「っと、こっちに行くと、商店街…?」
片手に地図を持ちながら町を見ていた。
彼はまだ眞魔国の事を詳しく知らない為、勉強の最中でもある。
夜は雨の時は家で歴史などの勉強をしているが、このように天気が良い日は外へ出て町に住んでいる魔族の者達を見ながら散策しているのだ。
「(エインさんやエレナさん達にも迷惑はかけられないし、自分で学べる事は学びたいしな…)」
大シマロンから移住してきたディオネの一族は、双子と2人の叔父叔母の好意からアスタルテ領に住まわせてもらっている。
グウェンダルやギュンター達は、現時点で領主のいない土地を任せようとも考えており十貴特別貴族でも話し合いをしているぐらいなのだ。
「お、あんな所に本屋見っけ」
ロイルは町の中に本屋を見つけると興味がわいたの、真っ直ぐ向かって入って行った。
中に入るととても多くの本が置いてあり、もっと興味が出てくる。
「すごいな~。血盟城とはいかないけど、ここも中々…」
1人本の多さに喜び、気になった本はパラパラとめくっている時だった。
「きゃあ…!あ、ちょっ!?」
ドサドサ、バサ
「?」
突然少し離れた場所で本を落とす音と、女の人の驚いた声が聞こえてきた。
「なんだ?」
不思議に思ったロイルはその所へ近づき様子を見ると、案の定多くの本を落としオロオロしている女の人がいた。
「どうしよう…っ」
「……ハァ」
今にも泣きそうな彼女を見たロイルは小さくため息をつきながら彼女に近づき本を拾い始める。
「え?」
「拾うの手伝う」
「え、人知らずの方にそんな事…!」
彼女は本を拾うのを手伝うロイルに驚いたが、ロイルは気にせずに手だけを動かしていく。
「お前もさっさと拾えよ。店主が見てる」
「え!?あ、す、すみません!」
ロイルに言われ先を見ると、確かに店主がジッと見ていたのに気づき、すぐに散らばった本を拾い始める。
「ん?この本って…」
ロイルは手を止め2冊の本を見る。
「…あ、その本、面白いですよ」
「は?」
驚いて彼女を見る。
「右のは眞王陛下の史実で、どうしてこの眞魔国が出来たのはが書かれた本です。左のは眞魔国に育っている植物の本ですね」
本の表紙を見ただけで、その内容が分かった彼女にロイルはへぇ~っと少し驚く。
「この本、読んだんだ」
「はい!本が好きで…」
「ふ~ん。じゃ、こっち買おうかな」
そう言って取ったのは左の書物、眞魔国に育っている植物の本を。
ようやく全ての本を拾い終わった後に選んだ書物を購入してから店を出て行った。
「あの、」
「ん?」
先ほどまで一緒にいた彼女はロイルの腕を掴んでいた。
「手伝ってくださってありがとうございました!お礼にお茶でも奢らせてください!」
「いや、別にいいから」
「でもそれじゃ、私の気がおさまんなくて…!」
真剣な顔をしているのに、どこか泣きそうな顔をしている彼女を見たロイルはクッと小さく笑いだす。
「え?」
突然笑われた彼女は驚く。
「い、いや…っ 悪いな」
「??」
ロイルにとってよほど彼女が面白かったのか、手で口を隠しながら笑っていた。
ようやく落ち着いたらしく、ポンッと彼女の頭に手を置く。
「じゃ、お言葉に甘えるか」
「! はい!」
彼女は嬉しそう大きく頷き1軒のお店へと赴いた。
「自己紹介がまだでしたね。私はアタナ・ネイラと申します」
「…魔族、だよな?」
「あ、分かります?」
「名前で」
魔族は人間と違い姓が先に来るという事はエイン達からも教えてもらっており、半年もこの国で暮らしていればすぐに分かるようにもなってきていた。
「俺はロイル・ディオネだ」
彼の名前を聞いたネイラは少し驚いた顔で見上げる。
「…ディオネって、眞王陛下の直系子孫っていう…?」
「あ」
ロイルはやべっと今思い出し、少し焦ったのは以前にエインに言われた事があったのだ。
『アスタルテ領内だったら“ディオネ”の姓を名乗っても“すごーい”って言われるだけで終わるかもしれないけど、他の領地内では言わない方がいいかもね』
エインが使っている書斎の机の前にロイルは立っていた。
そしてなぜエインがそう言ったのかが分かった彼は戸惑いながら問いかけようとする。
『それってやっぱり…』
『ディオネは眞王陛下の直系の子孫だからよね』
『エレナさん』
突然エイン以外の声が聞こえ振り返るとエレナが笑いながら書斎に入ってくる。
『アスタルテも眞王陛下との血縁関係って分かっちゃったし、色々と面倒な事もあるんだよね…』
エインは苦笑する。
『あと何年もすれば平気になると思うけど、今はね…』
『今は皆とっても盛り上がってるから無理そうよね』
と双子は呆れるだけだった。
――っと言っていたのだ。
自分達がただの人間ではなく、この眞魔国を作った眞王の子孫だという事を。
「あまり言わないでくれるか?領内では静かに暮らしたいし…」
「…分かりました。色々と大変なんですね、眞王陛下の子孫っていうのも…」
「まあ、俺達はこっちに移住してきたばっかりだからあまり実感は無いけど…。どちらかと言うと血盟城にいるアスタルテの双子様の方だろうな…」
ロイルはまだ眞魔国に来て半年が経ってもアスタルテ領からは出た事がなく領の者達もとても親切にしてくれている。
反対に血盟城にいる双子は多くの者達が暮らしており、そこには他の十貴族もいると聞いているからこそ大変なのかもしれないと思っていた。
その分ロイルは色々と勉強をしていても時間がまだまだかかりそうだと苦笑していると、そんな彼を見てからかネイラは何か思いついたように笑いだす。
「よろしかったら、私が色々と教えましょうか?」
「……は?」
驚いたロイルはネイラを見る。
「だって、1人で勉強するのも大変でしょう?こういう時は一緒に勉強したり、そこに生きてる方に聞いた方が絶対に効率もいいはずですよ。ね!」
そう笑って話すネイラにロイルはニッと笑う。
「…じゃあ、頼もうかな」
「はい!私の事はぜひネイラって呼んで下さい」
「俺もロイルでいいから」
よろしく、と2人は互いに手を出して握手をした。
人間のロイル、魔族のネイラ。
お互いの国の風習など、そしてお互いの事を話していきとても仲良くなっていった。
これが恋のキッカケとも知らずに…。
fin
(2011/07/03)
(re:2020/03/13,2024/07/12)
ここは眞魔国にある1つの領地にある町中に、1人の男性が立っていた。
彼は赤茶色の髪の毛、オレンジの瞳を持ち、スラッとしている青年だった。
名前はロイル・ディオネ。
創主を封印し、眞魔国を造った初代魔王である眞王の直系の子孫にあたる。
半年ほど前から大シマロン領のシヴェル島主だったが、ディオネから出た双子がいるという事で眞魔国に永住してきたのだ。
「っと、こっちに行くと、商店街…?」
片手に地図を持ちながら町を見ていた。
彼はまだ眞魔国の事を詳しく知らない為、勉強の最中でもある。
夜は雨の時は家で歴史などの勉強をしているが、このように天気が良い日は外へ出て町に住んでいる魔族の者達を見ながら散策しているのだ。
「(エインさんやエレナさん達にも迷惑はかけられないし、自分で学べる事は学びたいしな…)」
大シマロンから移住してきたディオネの一族は、双子と2人の叔父叔母の好意からアスタルテ領に住まわせてもらっている。
グウェンダルやギュンター達は、現時点で領主のいない土地を任せようとも考えており十貴特別貴族でも話し合いをしているぐらいなのだ。
「お、あんな所に本屋見っけ」
ロイルは町の中に本屋を見つけると興味がわいたの、真っ直ぐ向かって入って行った。
中に入るととても多くの本が置いてあり、もっと興味が出てくる。
「すごいな~。血盟城とはいかないけど、ここも中々…」
1人本の多さに喜び、気になった本はパラパラとめくっている時だった。
「きゃあ…!あ、ちょっ!?」
ドサドサ、バサ
「?」
突然少し離れた場所で本を落とす音と、女の人の驚いた声が聞こえてきた。
「なんだ?」
不思議に思ったロイルはその所へ近づき様子を見ると、案の定多くの本を落としオロオロしている女の人がいた。
「どうしよう…っ」
「……ハァ」
今にも泣きそうな彼女を見たロイルは小さくため息をつきながら彼女に近づき本を拾い始める。
「え?」
「拾うの手伝う」
「え、人知らずの方にそんな事…!」
彼女は本を拾うのを手伝うロイルに驚いたが、ロイルは気にせずに手だけを動かしていく。
「お前もさっさと拾えよ。店主が見てる」
「え!?あ、す、すみません!」
ロイルに言われ先を見ると、確かに店主がジッと見ていたのに気づき、すぐに散らばった本を拾い始める。
「ん?この本って…」
ロイルは手を止め2冊の本を見る。
「…あ、その本、面白いですよ」
「は?」
驚いて彼女を見る。
「右のは眞王陛下の史実で、どうしてこの眞魔国が出来たのはが書かれた本です。左のは眞魔国に育っている植物の本ですね」
本の表紙を見ただけで、その内容が分かった彼女にロイルはへぇ~っと少し驚く。
「この本、読んだんだ」
「はい!本が好きで…」
「ふ~ん。じゃ、こっち買おうかな」
そう言って取ったのは左の書物、眞魔国に育っている植物の本を。
ようやく全ての本を拾い終わった後に選んだ書物を購入してから店を出て行った。
「あの、」
「ん?」
先ほどまで一緒にいた彼女はロイルの腕を掴んでいた。
「手伝ってくださってありがとうございました!お礼にお茶でも奢らせてください!」
「いや、別にいいから」
「でもそれじゃ、私の気がおさまんなくて…!」
真剣な顔をしているのに、どこか泣きそうな顔をしている彼女を見たロイルはクッと小さく笑いだす。
「え?」
突然笑われた彼女は驚く。
「い、いや…っ 悪いな」
「??」
ロイルにとってよほど彼女が面白かったのか、手で口を隠しながら笑っていた。
ようやく落ち着いたらしく、ポンッと彼女の頭に手を置く。
「じゃ、お言葉に甘えるか」
「! はい!」
彼女は嬉しそう大きく頷き1軒のお店へと赴いた。
「自己紹介がまだでしたね。私はアタナ・ネイラと申します」
「…魔族、だよな?」
「あ、分かります?」
「名前で」
魔族は人間と違い姓が先に来るという事はエイン達からも教えてもらっており、半年もこの国で暮らしていればすぐに分かるようにもなってきていた。
「俺はロイル・ディオネだ」
彼の名前を聞いたネイラは少し驚いた顔で見上げる。
「…ディオネって、眞王陛下の直系子孫っていう…?」
「あ」
ロイルはやべっと今思い出し、少し焦ったのは以前にエインに言われた事があったのだ。
『アスタルテ領内だったら“ディオネ”の姓を名乗っても“すごーい”って言われるだけで終わるかもしれないけど、他の領地内では言わない方がいいかもね』
エインが使っている書斎の机の前にロイルは立っていた。
そしてなぜエインがそう言ったのかが分かった彼は戸惑いながら問いかけようとする。
『それってやっぱり…』
『ディオネは眞王陛下の直系の子孫だからよね』
『エレナさん』
突然エイン以外の声が聞こえ振り返るとエレナが笑いながら書斎に入ってくる。
『アスタルテも眞王陛下との血縁関係って分かっちゃったし、色々と面倒な事もあるんだよね…』
エインは苦笑する。
『あと何年もすれば平気になると思うけど、今はね…』
『今は皆とっても盛り上がってるから無理そうよね』
と双子は呆れるだけだった。
――っと言っていたのだ。
自分達がただの人間ではなく、この眞魔国を作った眞王の子孫だという事を。
「あまり言わないでくれるか?領内では静かに暮らしたいし…」
「…分かりました。色々と大変なんですね、眞王陛下の子孫っていうのも…」
「まあ、俺達はこっちに移住してきたばっかりだからあまり実感は無いけど…。どちらかと言うと血盟城にいるアスタルテの双子様の方だろうな…」
ロイルはまだ眞魔国に来て半年が経ってもアスタルテ領からは出た事がなく領の者達もとても親切にしてくれている。
反対に血盟城にいる双子は多くの者達が暮らしており、そこには他の十貴族もいると聞いているからこそ大変なのかもしれないと思っていた。
その分ロイルは色々と勉強をしていても時間がまだまだかかりそうだと苦笑していると、そんな彼を見てからかネイラは何か思いついたように笑いだす。
「よろしかったら、私が色々と教えましょうか?」
「……は?」
驚いたロイルはネイラを見る。
「だって、1人で勉強するのも大変でしょう?こういう時は一緒に勉強したり、そこに生きてる方に聞いた方が絶対に効率もいいはずですよ。ね!」
そう笑って話すネイラにロイルはニッと笑う。
「…じゃあ、頼もうかな」
「はい!私の事はぜひネイラって呼んで下さい」
「俺もロイルでいいから」
よろしく、と2人は互いに手を出して握手をした。
人間のロイル、魔族のネイラ。
お互いの国の風習など、そしてお互いの事を話していきとても仲良くなっていった。
これが恋のキッカケとも知らずに…。
fin
(2011/07/03)
(re:2020/03/13,2024/07/12)