望む友好
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『…いつか、魔族も人間も関係無く、皆が幸せに暮らせる世界を作ってみせる』
新しく出来た血盟城のバルコニーからまだ建設途中の町を見下ろしながら眞王はそう誓った。
『貴方ならきっとできます』
『お前達と一緒にだ』
『『『!』』』
3人はハッとなり眞王を見ると、彼はいつもみたいに笑っていた。
『そうだろ?俺の大賢者、従弟、そして俺の…』
そう言って隣に立っているテイアの手をギュッと握る。
『そうね…』
『ヤダって言うつもりなんかねーよ』
テイアは頷き、ヘリオスは呆れながらも嬉しそうに笑っていた。
そして2人と同じ様に大賢者も微笑む。
『ええ、わたしはどこまでも貴方と共にあります』
翌日、セルセはアリアを眞王廟において血盟城へ戻ると、サラレギーが何か話があるという事で有利の執務室へと赴いた。
「小シマロンは改めて眞魔国との友好を望みます」
「本当に?もちろん歓迎するよ!」
改めて魔族の目の前でそう断言したサラレギーに有利は嬉しそうに笑う。
だが1人、グウェンダルは真剣な表情のままだった。
「それは、眞魔国派同盟に参加したいという事だろうか?」
「小シマロンと眞魔国との間で新たな同盟を結びたい」
「どういう意味だ?」
彼が言っているのはどういう意味なのか不思議に思う。
「大シマロンのランジールは遠からず王位を終われるでしょう。そして次の王が決まるまで、永く国内の混乱は続きます」
「ランジールが他の王位継承者を排除した所為ですね」
大シマロンの『王位継承者』という言葉を聞いた有利はちらっとコンラートを見ると、彼は有利の視線に気づいたらしく優しく微笑む。
「俺は魔族です。眞魔国から離れるつもりはありません」
眞魔国から離れるつもりはないという事は大シマロンの王になるつもりもないと、ある意味断言したような事だった。
それを聞いたサラレギーもぜひそう願うと笑う。
「ウェラー卿に王になられると、わたしも困る。やり難くなりそうだ」
「サラ…?」
有利は不思議そうに首を傾げると、サラレギーはずっと思っていた目的を話し始める。
「いずれ大シマロンと小シマロンを統一し、わたしが王となる」
『!』
有利だけでなくセルセ達も驚く。
「もちろん何年もかかる大仕事になるだろうけれど、すでに準備は進めている。わたしはきっとやり遂げてみせる。
そこで、眞魔国にお願いしたい。わたしがシマロンを統一する間、黙って見ていてほしい」
「それでこちらに何の利がある?」
「シマロンと眞魔国、ひいては人間と魔族の恒久的な平和を約束しよう」
「そんな事がそう簡単に出来るはずが、」
「出来るさ。人間と魔族の二大国家が手を繋げば、」
サラレギーの説明に付け足すようにセルセが話し出す。
「他の国もそれに倣う、か。確かに実現すれば永い間続いた人間と魔族の確執に変化が起こるだろうな」
「……」
セルセの説明を聞きヴォルフラムはそれ以上何も言わなかった。
「ユーリ、君とわたしなら出来るはずだ。世界を本当に平和にする事が」
「サラ…」
「返答には今少し時間を頂きたい」
「ええ、分かりました」
グウェンダルの頼みを聞きいれたサラレギーは椅子から立ち上がる。
「悪い提案ではないと思う。いい返事を期待しているよ、ユーリ」
そう言ってサラレギーとベリエスは部屋から出て行った。
2人が部屋から出て行くと、緊張が解けたのか有利は背もたれに体を預けて驚きが含まれている様な溜め息をついた。
「ビックリした…。サラって、スゴイ事考えてるんだなあ」
「頭の切れる方ですね」
「王として負けてるいるぞユーリ。しっかりしろ、このへなちょこ!」
「へなちょこゆ~な!」
「あれが本心だと思うか?」
グウェンダルは目の前にいるコンラートとセルセにそう聞いた。
「まあ、今までの事を考えたよく分かねーけどさ」
「少なくともシマロン統一を成功させるまで、こちらと手を組みたいのは本当だろう」
「問題はその後だな」
実際にシマロンを統一した後、どういう風にでるのかが分からないとそう思っていた時だった。
「それなら何とかなると思う」
明るく話す有利に全員が驚く。
「ユーリ!?何を根拠に!」
「陛下…?」
「だって、それまでには何年もかかるってサラも言ってただろ?その間、おれはサラともっと色々と話をする!本当に意味で世界が平和になるようにどうすればいいのかを…」
全員が何も言わないでジッと有利を見ている事に彼は少し照れくさい感じがしたのか、顔を少し赤らめながらも話を続けていく。
「あ、いや、もちろん皆にも手伝ってもらわないとダメなんだけど、?」
ピン!
「いたっ」
すると気恥ずかしかったセルセは有利の額をでこぴんをしたのだ。
「そんな当たり前の事言うなよな」
「セルセ?」
「言われなくても俺らは協力するんだからさ」
照れくさそうに笑っているセルセにヴォルフラムも同感する。
「当たり前だ。お前は、僕がちゃんと見張っていてやる。
無茶しそうになったら何としてでも止めてやるから、安心しろ」
「ああ!なんと立派な、さすが陛下!このギュンター、どこまでも陛下について行きます!」
「少しは王らしくなってきてはいるという事か」
ヴォルフラムだけでなくギュンターやグウェンダルにも言われ、有利は照れたように笑うだけだった。
話が終わり、有利とコンラートとセルセは廊下を歩いていた。
「? あれは?」
中庭から馬の声が聞こえ、そこを見てみると兵が並んでどこかへ行こうとしていた。
「グウェンダルの命令で城下の警備に就く兵達です」
「それって、またアラゾンが来るかもしれないから?」
彼の問い掛けにセルセが頷きながら説明していく。
「ああ。アラゾンは必ずと言っていい程ユーリを奪いに来るだろうからな。
その為にどんな方法を取るか分からないしさ、十貴特別貴族達にも各領地の警戒に当たらせてるんだよ」
「でも…、あの人も自分の国の為に必死なんだよな」
「陛下、貴方は優しい。困っている人がいれば手を貸さずにはいられないでしょう」
コンラートの話に有利は即答で『うん』と答えると、セルセは呆れながら今までの経験として学んだ事を言う。
「その優しさに色々とつけ込まれるんじゃねーの?」
「うっ」
ズケズケと遠慮なく言う彼に有利は苦笑する。
「ま、そこかユーリの良い所なんだよな」
「ええ、でも忘れないでください。貴方に何かあったら、眞魔国の民達が悲しみます。もちろん俺達もね」
「コンラッド、セルセ、…うん…」
2人の優しさに有利は素直に頷くと、ふとアラゾンとサラレギーの関係を思い出す。
「でも、アラゾンはサラの母親なんだよな?サラはあの人の事どう思ってるんだろ?」
「…なんとも思ってないんじゃないのか?」
「セルセ?」
ボソリという彼に有利は不思議そうに傾げる。
「俺らだって、あの魔球で過去へ行くまでは父様の事を父親だとは思っていなかった」
「あ…」
ディオネの者達に引き離されてから結局会う事が無かった父親、そして家から捨てられてしまった故に会えなくなった母親。
「いくら国の為、家の為とか言われてもすぐに納得は出来ないんだよ…。
少し時間を開けて考えを導き出すか、実際にサラレギー陛下がアラゾンと対談して自分の気持ちを整理しないとな」
「…そう、だね…」
そしてしばらくした後、城下町に法術で作られた獣が襲いかかってきたのだった。
next
(2011/03/22)
(re:2017/05/24,2024/07/11)