攫われた勝利

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「チッ」

馬車の上空に針術をそのまま残し、セルセは馬から離れて有利達の所へ乗り移る。

「ユーリ達、大丈夫か?」

セルセ!」

乗り移った彼はすぐに有利だけでなく健やニコラ、エルを見て少しだけホッとする。

だが囮となって馬車から降りた勝利を心配そうに顔を歪める。

「ショーリ…、コンラート達が拾ってくれればいいが…」

心配そうに壊れた扉から外を眺めていると、少し先に血盟城からの兵が来ていた事に気づく。

「ユーリ、ギュンター達が迎えに来てる」

「ホント!?」

「ああ…」

迎えに来ていたギュンター達の所へ辿り着いた彼らは馬車から降り、コンラート達が戻って来るのを待っていた。

そしてしばらくして彼らは無事な姿で戻ってきた。

「え?勝利は一緒じゃないの?」

戻ってきたコンラート達の中に勝利はいなかったのだ。

彼らもまさか勝利が馬車から下りていた事に驚くだけだった。

「陛下、申し訳ありません…」

エルの為にと責任を感じたヒューブは有利に謝る。

謝られた有利は彼の所為じゃないと心配かけないように苦笑する。

「勝手に動いた勝利が悪いんだ。すぐ調子に乗る性格だから…」

「もう一度、戻って探します」

コンラートの言葉にヒューブとニコラはお互い何も言わずにただ頷くと、2人は兵を数人連れて勝利を探しに行ったのだった。

夜になっても勝利を探す事はやめず、骨飛族も空から彼を探していた。

無事に血盟城へ辿り着いたニコラはエルとグレタと共に部屋で遊んでいると、有利は心配しながら部屋中をぐるぐる歩いている。

「落ち着け、ユーリ!」

『う~ん』と言いながら歩いている彼にヴォルフラムは落ち着かせようとする。

「ヴォルの言う通りだぞ、ユーリ。今はコンラート達が戻って来るのを待とう」

「そうね。今は落ち着くしかないわよ」

ヴォルフラムの意見に賛成の双子は苦笑しながら有利を諭す。

「まったく、とっくに着いてもいい頃なのに。勝利のヤツ、何やってんだよ」

するとコンラートとヒューブが血盟城に戻ってきていたらしく、部屋の中へ入ってくる。

有利は嬉しそうに笑って歓迎するが、双子達は側に勝利がいない事に気づいていた為に険しい表情だった。

「…その様子じゃ見つからなかったのか?」

「捜索は続けていますが、まだ…」

言い難そうにヒューブは説明をすると有利は『迷子かよ』と大きく溜め息をつく。

「まさか…」

小さく呟いた健に有利は不思議そうに彼を見る。

「何?村田、まさかって」

「渋谷のお兄さん、もしかして…」

「え?」

先ほどよりも険しい表情になった健に有利は何も言えずに不思議に思うだけだった。

さすがにこの部屋では言えないと思った彼らはニコラ達がいる部屋から出てグウェンダル達がいる部屋へ行く。

「勝利が攫われた!?」

そこで聞いた内容に有利は驚く。

「うん」

「なぜだ?奴らの狙いはエルじゃなかったのか?」

だからこそエルを守る為にすぐに城から出発して血盟城へ赴いたのだ。

なのにエルではなく、なぜ勝利を誘拐したのかが分からなった。

「彼らが求めているのは力を持つ者だ。多分、とても特殊な力」

「その為にエルやショーリを狙ったという事ですか」

「そんな…っ」

健とコンラートの説明を聞いたヒューブは自分の所為かもしれないと責任を感じながら呟く。

「では、ショーリ様はエルの、身代りに…」

「あ、ヒューブ…」

責任を感じている彼に有利は何も言えなかったが、健はすぐに否定した。

「違うよ。誰でも良かったんだ。彼らが求める力を持っていれば誰でもね…」

「そうだよ!エルの所為でも、ヒューブの所為でもない!」

「しかし…」

そうだとしても、と思っていた彼だったが、コンラートは目の前にいるグウェンダルを見る。

「グウェンダル」

コンラートが何を言いたいか理解していたのか、グウェンダルはそれ以上何も聞かずに何をしたか説明する。

「港は全て封鎖した」

「海に出るには国境を超える他無いでしょう。向かうとすれば、スヴェレラ方面かと…」

「骨飛族達にも兵達にも捜索をさせている。逃がしはしない」

すると有利は机をおもいっきり叩く。

「おれも行く!おれも、勝利を追う!」

「え?」

アリアは目を見開いて驚き、ヴォルフラムもギュンターも驚くだけだった。

「ユーリ!」

「それは危険です!」

グウェンダルだけは驚いてはいなかったが、行くと言い出した有利を睨む。

「何度言えば分かる。王たる者、そう易々と動く者ではない。冷静になれ」

「兄弟だぞ!攫われたのはおれの兄貴なんだ!冷静になんか、なれないよ!」

「……」

「有利…」

珍しく感情を表している有利にコンラートもアリアも心配そうに彼を見るだけだった。

「もし、勝利の身に何かあったら…、おれ…っ」

先ほどより言葉も表情も哀しさがいっぱいになっている有利。

そんな彼に全員何も言えなかった。

「村田、アリア、後はよろしくな」

「ああ、渋谷も気をつけて」

「分かってるけど…、怪我しないようにね」

勝利を探しに行く事になった有利は馬に乗りながら、血盟城で留守番となったアリアと健を見下ろしていた。

「出発!」

こうして彼らは勝利を探す為に血盟城から出発したのだった。

朝になってしばらくすると、ダカスコスが白鳩便から届いた内容をテラスの様な場所で待っている健とアリアの元に報告しに来たのだ。

「白鳩便によりますと、警戒の兵が賊の馬車を発見、追跡。…賊は…馬車に乗ったまま崖から転落、その後の事はまだ…」

「分かった。ありがとう」

「は!」

軽く一礼をした彼はその場から去って行く。

そして健はテーブルに広げていた地図の崖の部分に×印を書き入れる。

「ここから、君はどう動くかな…」

「健?」

側に置いてあったガラスとなったクマハチの置物を地図のある場所へコトンと置く。

「…僕なら、こうかな?」

「‘何がお前ならこうなのだ?’」

「「!」」

健とアリアだけでなく、別の第三者の声が聞こえてくる。

2人は声の方を見てみた先にはテーブルの上に小さいサイズの眞王が立っていた。

「陛下…」

また目の前にいる眞王にアリアは苦笑するだけだった。

「‘まったく、喰えない男だ。いい加減話したらどうなんだ?’」

「ああ、また出て来ちゃったんだ。ホント、何にでも首を突っ込みたがるんだから」

健もアリアと同じ様に呆れながら苦笑していたが、眞王はそんな2人に気にせずに話を続けていく。

「‘俺にはここで起きている事を知る権利がある’」

「でももう死んでるじゃない」

「‘死んでなお、国を思う俺の気持ちが分からんのか。そもそも、この国を造ったのは俺なのだ。俺にはこの国を見守る義務があ、’」


ガタン


「‘あ’」

眞王が話している途中、健は近くにあった箱を彼の上に被せて閉じ込めたのだ。

「あら」

「‘こら、何をするっ’」

さすがの眞王も驚きながら箱の中で話している。

「しばらく、そこで静かにしててくれないか?」



ガタガタ、ガタ!



大人しくしてと言われても言う事を聞かない眞王は箱の中で暴れる。

「‘おい、こいつを退けろ!おい!アリアも助けろ!おいっ’」

自分の名前を呼ばれたアリアは苦笑いをしながら健を見る。

「……健、いいの?」

「いいの、いいの」

全く悪気が無い彼に何も言えなくなる。

「…君が造ったか…」

「健?」

すると健はどこか懐かしそうに呟き始めた。

「そうだよね…、君とこの国を造ったんだ。4000年前、大賢者という男が眞王という男を信じて、創主と戦って…。…もう、隠してはおけないようだね」

そうどこか決心をした健だった。
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