突然、勝利が眞魔国へと来てしまった。

有利達は眞王廟へ行き勝利を迎えていく事となったが、今回双子は血盟城に留まっていた。

「でも、何でショーリが来たんだろうな」

「さぁ？眞王陛下が何を考えているのか、…ん？」

「どうした？」

通路から中庭を眺めていと、アリアは兵２人が連れている人物に気がつく。

「あれって…」

「ん？…あ、確かシェリルだったよな。エイルの母親…」

中庭にいたのは以前シヴェル島であったディオネの者であり、そしてエイルの母親でもあり双子の親戚にあたる。

双子はすぐに中庭へ行く。

「シェリル！」

「これは、セルセ様とアリア様」

「お久しぶりです、お２人とも。以前はおばあ様の時はありがとうございました」

シェリルの後ろにいたのは、同じく以前にあったヘラの孫、ユノだった。

「久しぶりだな、ユノ」

「はい」

「？ ところで、隣にいるのは…？」

アリアはユノの隣にいる男に気がつく。

ユノはああ、と笑い彼の事を紹介し始める。

「彼はロイル・ディオネ。エイルの兄です」

「って事は…」

「はい、わたしの息子です」

シェリルはニッコリ笑う。

ロイルと呼ばれた男は、赤茶色の髪にオレンジの瞳の容姿をしていて、ほとんどシェリルやエイルにそっくりなのだ。

「初めまして、ロイルと申します。貴方々が曾お祖母様の…」

「まぁな。俺の名前はセルセ。で、こっちは双子の妹のアリアだ」

アリアは軽く会釈すると、ロイルからシェリルの方を見る。

「エイルに会っていくでしょ？」

「……もし会えるのなら、会いたいですね」

「だと思った。エイルは図書室か？」

「たぶんね、最近はずっと図書館で史実に関する本を読んでるから」

アリアらそう聞いたセルセは近くにいた兵士に声をかける。

「たぶん図書室にエイルがいるから、連れて来てくれないか？」

「はっ」

そう言われた兵はすぐに図書室へと走って行く。

しばらくすると、兵に連れて来られたエイルはシェリルの姿を見つける。

「母様！」

エイルは円満な笑みになり、シェリルの方へ走り抱きつく。

シェリルも嬉しそうにエイルを抱きしめる。

「エイル…っ」

「母様っ、でも、どうして眞魔国に？」

「少し用があって、それで…」

「用？」

不思議に思ったエイルだった。


パコッ


「いた、」

突然頭に痛みを感じる。

後ろを見ると、そこにはロイルが立っていた。

「俺が居る事には全く気づいてないのな、お前」

「…兄様まで来てくださったのですか？」

「当たり前だろ。久しぶりにお前に会えるかもしれないって思ったんだからな」

「兄様！」

エイルはシェリルと同じように嬉しそうな顔になり、ロイルの方へ抱きつく。

ロイルは元気そうなエイルの頭の撫でる。

「元気そうで安心した…」

「はい、兄様も姉様も優しくしてもらっています」

「兄様？姉様？」

エイルには姉はいないはず。

そう思っていたロイルだが、セルセは思い出しようにシェリルに話しかける。

「そうそう、眞魔国で暮らすという事になったからエイルは俺らの弟になったんだよ」

「それは…」

「私達の叔父と叔母に相談したら、私達の父様の養子として受け入れようって事になったのよ…」

双子の説明を聞いたシェリルは納得をした。

「それで貴方々の事を、」

「そういう事」

そうですか、と聞き入れたシェリルは双子に『エイルの事、よろしくお願いします』と頭を下げた。

すると眞王廟から勝利を連れて有利が戻ってきた。

「あれ？双子、何して…あ」

「お久しぶりです、魔王陛下」

シェリルとユノは有利を見ると頭を下げると、有利は嬉しそうに２人に近づく。

「シェリルさん、久しぶり！どうして血盟城に？」

「アリア様とセルセ様に報告がありまして…」

「「報告？」」

初めて聞いた内容に双子は不思議に思う。

「そうなんだ…。…あ、その人は？」

エイルが抱きついているロイルを見ると、双子は説明する。

「エイルの兄のロイルだってよ」

「へぇ、エイルのお兄さん、……お兄さん！？」

まさか兄がいたとは思っていなかった有利は驚き、そして驚かれたロイルもまた苦笑する。

「え？あ、はい…」

「エイル、お兄さんいたんだ」

「はい、父親違いの兄が」

それを聞いた有利やヴォルフラム達は驚く。

ディオネの一族ではエイルだけは魔族との間に出来た子どもと聞いていた。

その為、彼はエイルと違って人間の間に生まれた人間なのだ。

双子以外の者に初めて会った勝利は有利に聞く。

「あの人達は？」

「ああ、まぁ、ちょっと複雑なんだけど、…双子の親戚かな？」

「なんだその曖昧な答えは」

「つまり、双子のお母さんの孫と曾孫って事」

複雑なのか簡単なのか、わからない説明だが何となく理解した勝利は双子達を見る。

「有利、グレタの事、勝利に紹介しなくていいの？」

「あ、そうだった！」

アリアにそう言われ、有利は勝利にグレタの事を紹介する事になった。